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(51)~FINAL CHALLENGE~ 山﨑洋之「みんなで一つの勝利によろこべるようなチーム作りが大事」

ラグビー 2019.11.21

 「真価が問われる代」。武井日向主将(商4=国学院栃木)は今年の最上級生についてこう語る。苛烈極まる対抗戦、そして連覇の懸かる大学選手権へ。激戦のさなか、4年生一人一人に今シーズンに懸ける思いについてうかがった。

 

第19回は山﨑洋之(法4=筑紫)のインタビューをお送りします。(この取材は10月31日に行われたものです)

 

――明大進学の理由を聞かせてください。

 「兄の影響です。兄が同志社に行って、自分も同志社から声がかかっていました。周りからは僕も行くだろうと思われていたらしいです。でも今までは兄の敷いたレールを歩いていただけで、中学に行っても高校に行っても山﨑翔太の弟としての山﨑洋之がいました。兄がいないところでどれだけできるのかを試したかったというのが大きかったです。敷かれたレールを歩くのではなく、自分が新しく築いてみたくて明大に決めました」

 

――バックスリーをこなしますがどこのポジションがやりやすいですか。

 「センターはやれる人数が限られていたので、高校ではフルバックをやっていました。大学に入ってウイングになりました。センターは怖いなと思ったりすることもありました。でもいろいろやっていたら『どこのポジションがいい』っていうのは無くなってしまって、試合に出ることができればどこでもいいというかこだわりがなくなってしまいました」

 

――山村知也(営4=報徳学園)選手と比較されることが多いと思います。ご自身ではどうお考えですか。

 「気にするべきだとは思いますが、あまり気にしないです。人に関心がないのかな(笑)。例えば、『山﨑は声は出るけど足遅いなあ。山村は足も速いしトライも取るよな』って言われても、『知也足速いですもんね~』で終わってしまいます。プライドが無いわけではないのですが、僕の意見もあれば他の人の意見もありますし何とも思わないです」

 

――BKリーダーとして心掛けていることはありますか。

 「大輔(射場・政経4=常翔学園)のように落ち着いて的確なことを言うスキルは持ち合わせていないですし、知也みたいにみんなをうまくまとめあげるスキルは持っていません。でもそういった人たちの発言にリアクションをしたり、“声”を出したりすることが僕に任されているところだと思います。いいムードでの練習は質、内容も変わってくるので、自分ができる最高のムードを作り上げる、モチベーションをあげることを意識しています」

 

――後輩はどんな存在ですか。

 「同じポジションの石川(貴大・政経3=報徳学園)とかがいいプレーをしたら『うわまじか、やばいな』って思うのが普通だと思うのですが、純粋にうれしくて『ナイス!』って言います。いいライバルですけど、その前にまずは味方なので、お互いが勝ちたい気持ちがあるのが大事だと思います」

 

――今までで印象に残っている試合を教えてください。

 「3試合あります。まずは1年生の時の春の明早戦で、最後まで張り合った試合でした。時間が無いときに最後トライを取って、勝利を決定づけた試合だったので今でも印象に残っています。あとは去年の優勝した天理戦と、おととしの優勝できなかった帝京戦です。おととしは地獄をみました。竹山晃暉(パナソニックワイルドナイツ)を抜いたんですけど、タッチラインを踏んでいて。『もし僕があのときタッチラインを踏んでいなかったらトライできたかもしれない。トライはできなかったとしてもゴール前だったのでゲインはできたし、明治が継続して攻撃していたら勝てた試合だった』という思いが未だにあります。喪失感が大きく、勝ちへのどん欲さが増した試合でした。去年は日本一の光景を見ることができて雪辱を晴らせましたし、欲しかったものがやっと手に入ったので何度も喜びました」

 

――去年は22年ぶりの優勝、そして今年は連覇が掛かっています。気持ちの違いはありますか。

 「連覇よりも今の代で日本一、優勝だけを考えています。追われる立場であることは認識していますが、だからといって踏ん反り返ることもないです。確実に1位になるくらいの強さが欲しいです。サブスローガンのハングリーの部分でチャレンジャーの気持ちを持って、ただ日本一になりたいです。連覇への重圧はありません」

 

――武井主将はどんな方ですか。

 「去年の大学選手権準決勝・早稲田戦で自陣でノックオンをしてしまい『うわ~やってしまった』とへこんでいるときに、『大丈夫。俺が取り返すから、取り返そう』と言ってくれました。そのときに本当に救われて、『こいつならついていきたいな』と思いました。すごく落ち着きがあって余裕をもたせてくれる存在です。うまく言葉には表せないですけど、彼がいるといないとではチームの安定感が違って精神的支柱です」

 

――後輩に残す言葉はありますか。

 「ラグビーもチームも好きになることです。強制みたいにはしたくないですけど(笑)。先輩、後輩、同期のみんなで一つの勝利によろこべるようなチーム作りが大事だと思います。やっぱりチームが勝つことが一番楽しいので、他の人の勝ち、うれしいことを嬉しいと思えるように同期や後輩・仲間を大切にしてほしいです」

 

――明大ラグビー部、また同期とはどんな存在ですか。

 「先輩、後輩、同期との思い出が詰まった場所なので、大好きな場所であり、誇りです。同期とは一番そばにいたので、いざこざとか楽しいときとか全てを共有してきました。4年間一緒なのは同期しかいないですし、惇朗(辻・政経4=常翔学園)とか賢太(松岡・商4=京都成章)が率先して前に出てくれて、それを見ながらみんなで笑うみたいな。仲いいですね(笑)」

 

――自分を言葉で表すなら何でしょうか。

 「あまり縛られたくないですし思ったままに動きたいので自由です。責任はもちろん果たしますが、決められた形って面白くないと思います。リザーブだったら自分のプレーがいつのまにか流れを変えていたりもしますし、流れをぐちゃぐちゃにできるからこそ面白みもあります。何者にもとらわれない、縛られない、自分の思うがままにしている部分が多いです」

 

――山﨑選手にとって“真価”とは何ですか。

 「自分の嫌な場面・苦手な場面でのアクション、言動です。嫌な状況に当たったときにすることにこそ真の価値が表れると思います」

 

――ありがとうございました。

 

[中村奈々]

 

◆山﨑 洋之(やまさき・ひろゆき)法4、筑紫高、175センチ・82キロ

入学当初は関西勢のいじりに圧倒されていたが、「こんなことで怒ったら駄目だな(笑)」と余裕ができ、ちょっとだけ心が広くなったそう。山村選手とは息の合ったノリツッコミをみせてくれた。


次回は井本優吾学生スタッフリーダーのインタビューをお送りします。


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