(2)森保一監督特別講義コメント②/サッカーW杯特集号特別企画

2026.06.11

 4月17日駿河台キャンパスにて、森保一サッカー日本代表監督の特別講義が開催。この講義では、現在の日本代表についてジャーナリストの小澤一郎さんと評論家の二宮清純さんからの鋭い質問に答え、終始にぎやかな雰囲気で行われました。本記事では森保監督から語られたW杯への思いなど特別講義の模様を掲載する。

——W杯初戦のオランダについてはいかがですか。

小澤 「当然ながら個々の能力が高く、プレミアリーグのトップレベルでやっている選手がほとんどですが、初戦にオランダなのである程度ピークはここに持っていくのかなと我々は想像しているのですが、コンディショニング含めて、今ピーキングの考えは監督としてお持ちですか」

森保監督 「ピーキングの考えでいうと、間違いなくここ(オランダ代表)だと思っています。でも、これはオランダではなくてもここ(初戦)だと感じています。なぜなら、他国の勝ち方を見ていると右肩上がり、大会で試合を重ねるごとに調子を上げていくところは見受けられるので、グループリーグは本気でやっていない世界のトップオブトップの国々があるように感じていてそのチームですら初戦に持ってきているなと思います。W杯では、気を抜けば強豪国でも勝てなくなってしまうことも起きますからね。我々で言いますと、どこにピーキングというよりも一戦一戦、本当に目の前のところから勝利を目指して戦うことをやった上で、1戦目、2戦目、3戦目があって決勝トーナメントがあるのでしっかりと全試合でピークを持っていきたいなと思います」

小澤 「高さのあるオランダに対してセットプレーでの守備をコーチ陣中心につくっていると思いますが、守備の仕方の大枠としてはどのようにお考えですか。マンマーキングするのか、今はゾーンとマンマークのミックスなど色々あると思うのですが、大枠はどういうものでしょうか」

森保監督 「(守備の)大枠はこれまでやってきたことの延長線上で相手に対策をされたとしても対応できるだけ個々の責任を持って。相手のキーとなるポジションの選手や能力のある選手たちを自由にプレーさせないようにしてきましたので、その考え方でいきたいなと思っています。なぜ日本が国際大会でより勝てるようになってきたのかというと、高さとフィジカルの部分で負けなくなったところもすごく大きいと思います。二大会前のロシアW杯でやられたのは、最後相手の放り込みから192㎝ぐらいの選手たちが出てきて、ゴール前に押し込まれたり、過去の2006年やアジアの戦いでもフィジカルと高さで押し込まれて最後勝てなかったという歴史の中で、イングランドの時にも話をしましたが、フィジカルでボールの奪い合いのところで負けなくなってきたこと、大きいだけではなく相手がパワープレーでゴール前にボールを放り込んできても勝てるだけ日本の選手が出てきて、これをやったら勝てるということがわかってきて抑えられるようになってきた。その上で、日本の力を発揮できるようになったのが勝てる要因だと思うので、自信を持って相手のストロングポイントを消しながら、高さで最後を押し込んできても集中力を持ってしっかり耐えていきたいなと思っています。直近のイングランド戦も最後攻め込まれて、まさに2mぐらいの選手が2人、ターゲットが最後入ってきてもヘディングされたりしましたけど、絶対的に高さで勝てなくてもマークしている間に相手に対しての責任を日本のDFがしっかりと持って自由にやらせないということで相手が狙ったプレーをできなくて失点を防げるなと思いますね。セカンドボールやこぼれ球をどっちが握るのかが得点につながってくるので、より早く日本がこぼれ球を拾ってリスク回避することを徹底してやっていきたいなと思っています。2011年のなでしこのW杯は、すごく我々にとって大きなイメージになると思っています。ヨーロッパやアメリカと対戦した時に平均身長やフィジカルの部分で考えると、完全に相手に上回られているのでヘディングで相手に触られることが多かったですが、自由にされないようにマークをしっかりするのと日本人選手が予測を持ってボールを拾ってピンチを返していくということが大きなヒントになると思っていますので、なでしこのサッカーもイメージしながら最後のピンチになった時には乗り越えていきたいなと思っています」

——二戦目のチュニジアについてはいかがですか。

二ノ宮 「FIFAランキングは当てにならないとはいえ、日本は18位なんですよ。森保さんの試合を拝見させていただいて、勝ち筋が見えてきたように思うんですよ。例えば前回大会、スペインに勝った時、リードされて追い込まれてからカードを切って逆襲すると、ブラジル戦でも2点取られてから3点を取って、勝数が増えてきたなという印象を受けるんですね。そうなると必然的にオランダやチュニジア、スウェーデンに対する戦い方というのは基本的なラインは一緒であっても若干変えてくると思うのですが、このチュニジアに対してどういうお考えですか」

森保監督 「チュニジアに対しては二宮さんがおっしゃってくださったことをプレーで表現できるので、もちろん勝負はやってみないとわからないですが我々に勝機はあると思っています。攻撃で言えばカウンターの速攻、できれば相手を押し込んでパスを回して、最後チャンスをつくって決め切る力もありますし、守備ではより相手のゴールに近いところでボールを奪って攻撃につなぐことや、相手に流れがある時はしっかり縮んでブロックをつくって守ることもできるので両方とも攻撃につなげられるようになったと感じています。選手たちも3月のイギリス遠征で、スコットランドの時に相手は割と引いて守って攻撃のチャンスを奪うというチームだったのですが、そこは選手とも共有していてその中でなかなか点は取れなかったですが、ボールを保持しながら相手にカウンターのチャンスを与えずに我々はチャンスをつくっていきで最後決め切れたことで形として自信が持てました。オランダ戦では我々がよりボールを保持して試合を進めたいという理想がありますが、おそらく相手の選手のクオリティからしても守備の時間が長くなるかなと思っています。その時にはしっかり守備を固めながら、でも守備だけで終わらず必ずいい守備からいい攻撃につなげるということをみんなで描きながら、崩れないように戦っていくことができると思っています」

——プレーオフでW杯出場をつかみ取ったスウェーデンについてはいかがですか。

小澤 「ちょうど(W杯ヨーロッパ予選プレーオフ)準決勝・ウクライナ戦がバレンシアだったので現地で見てきたのですが、スウェーデンは予選で最下位で、(プレーオフへ)ネーションズリーグ枠で進んで監督も変わって引いて守ってカウンターに徹底するしかないという戦い方を徹底してくるので逆に怖いなと思ったんですね。ウクライナ戦でもポーランド戦でも、やっぱりツートップ気味のカウンターがさく裂していましたし、イサク(リバプールFC)もケガから戻ってきますから。そういうのでやっぱり侮れない強い相手だと認識されていますか」

森保監督 「めちゃくちゃ強い相手だなと思っています。プレーオフでスウェーデンが出てきてすごいなと思うし、どんなチームが出てきても死の組とだと思うくらい、力としては拮抗したグループだと思っています。スウェーデンにおいては、予選関係なくメンタル面でアドバンテージを彼らが持っているなというのは注意しなければいけないです。力があるというのは予選から感じていて、小澤さんが言われた通り、チームとしての戦いはもうはっきりしている中で個々のタレントはヨーロッパでも世界中のトップの力を持った選手がいるので決して侮れないですし、すでにワールドカップを決めていたチームと違ってギリギリまで予選を戦ってきたことでチームが固まったままワールドカップを迎えるというのは本当に怖いなと思います」

学生 「2018年から日本代表監督をしてこられて、多くのインタビューやメディア対応をされてきたと思います。そのようなメディアに対してどのようなお考えをお持ちでしょうか」

森保監督 「リスペクトしています。時には敵になることがあるというのが表面上では起こっているかもしれないですが、見方は何通りもあった方がサッカーをより楽しく見ていただけると思いますし、よりサッカーの輪が広がってくれると思うので、メディアのみなさんには時には厳しい発言もありますが、日本のサッカーの発展を一緒につくっていける方々かなと思っています。今、ここにおられる方が色々なSNSをして個人がメディアになっているような時代だとは思いますが、いろいろな媒体の中でサッカーを発信してくださっている方々がいるからこそ日本のサッカー文化がより広がっていけると思っていますので、私自身も非公開のトレーニングをしたり制限なく全て話せるということはないですが、トレーニングは見せられる限りできるだけ多く見ていただいて私自身の受け答えの中で戦術的なことも含めていろいろなことをできるだけ多く話していけるようにと思っているので、(メディアは)仲間だと思っています」

学生 「最近の日本代表では三苫薫選手(ブライトン)や伊東純也選手(ヘンク)など大学サッカー出身の選手も多く増えてきましたが、大学サッカーのレベルや地位というのを監督自身はどう捉えていますか。また、森保監督自身は高校卒業後直接プロに挑戦しましたが、今の大学サッカーの環境が整っていた場合、大学サッカーに挑戦したい思いはありますか」

森保監督 「一つの疑念があるのですが、なんで長友が出ないんですか笑明大出身じゃないですか。最近は招集してないですが、明大出身の代表選手いっぱいいると思うのでそっちの名前を全部並べてほしかったなと笑。こうやって冗談を言っていると何を聞かれたのかわかんなくなったりするのですが。大学サッカーは日本のサッカー発展のためにとても重要なありがたい存在だと思っています。世界で見るとアメリカは大学のスポーツが強い、プロよりもすごい良いようなところがあるので、ちょっと例外かもしれないですが、大抵は学校のスポーツでトップアスリートをつくるのではなくて、クラブ組織からトップに向かっていくことが多く見られると思っている中でこれは日本の特徴であり、そして日本の誇れる育成システムだと思っています。例えば、18から22歳とすると、すでにJリーグのクラブチームに入って。プロとしてキャリアを積んでいく人がいます。ですが、ユースまでプロを目指していたがプロにはなれなかった人、もっと学びたかったという人も含めて大学という存在があるので、そこでもう一度勉強しながらプロに向けて力をつけていこうということで、受け皿と言っていいのかわかりませんが他の選択肢がある中でまたもう1回チャレンジができるのはおそらく日本しかない。日本が世界に誇れるシステムだと思いますので、大学があるというのは本当にありがたいと思っています。最近では、明大からJリーグにもとても多く選手を排出していると思いますし、大学の舞台に、教育の場からまたプロを目指せるのは素晴らしいと思っています。大学に入ってプロとしては諦めかけたが、もう1回やっていこうと学びながら、また新たな環境でいろいろな先生や仲間と出会いながら、人間力をつけてプロに行って、そこでまた厳しい環境の中で生き抜いていく力を培えるというのは素晴らしいと思っています。私自身は高卒で当時のマツダという会社に入社して、そこでサッカーを続けさせていただきましたが、大学に行っても勉強についていけないだろうなという思いがありましたし、みなさんには会ってほしくはないですがずっとサッカーしかししてなくて選択肢を持てなかったというところが正直なところです笑今もし行けるとしたら、高校を卒業する時にプロでやれると思ったら、おそらくプロの世界に飛び込もうかなと思います。、ですが、自分がそのままプロになれないと判断したり学びたいと考えた時には大学にお世話になって、またプロを目指したいという気持ちになると思います。人生で後悔はあんまりないのですが、勉強はしとけばよかったなと思います。サッカーを削ってまでということはないですが、学校で与えられた課題と向き合って、いろんなことをインプットさせていただけることが絶対人生に生きると思いますので、そういった意味では大学でも学びながら、また人として豊かに、プロを目指すことを考えると思います」

学生 「森保監督は現役時代ボランチ。普段から欧州サッカー含めたくさんみていて、世界中にたくさんいいプレイヤーがいると思うのですが、どの選手とダブルボランチを組みたいのかお聞きしたいです」森保監督 「鎌田大地。なぜなら私自身は守備的な選手だったので、鎌田がすごく守守備得意なんですが、攻撃でボールを受けた時の落ち着きや攻撃の部分でみんながよりどころにしてくれて、ボールの集まるポジションをやってくれているので、選手と組んで攻撃の良さを生かしてあげながら、自分の守備の良さを出していけるかなと思いました」