(23)見せた紫紺の意地 首位で後期へ/関東大学1部リーグ戦前期総括

2022.07.31

 7月30日、関東大学1部リーグ戦(以下、リーグ戦)は延期日程の1試合を消化し、前期の全日程を終えた。明大は8勝1分2敗で勝ち点25を獲得。2位につける東国大とは勝ち点差4の首位で後期へ臨むこととなった。

 

 衝撃的な幕開けだった。4月3日、神奈川県立保土ヶ谷サッカー場。2年ぶりの戴冠を目指す明大のリーグ戦は、昨年度の2部王者・東国大との一戦から幕を開けた。激しい雨の中始まった試合は、次序盤から東国大ペースに。31分にPK(ペナルティキック)を与え先制を許すと、直後にもミドルシュートを被弾し、前半だけで2失点。後半にもさらに2失点を喫し、0―4でホイッスル。まさかの大敗で2017年以来の黒星スタートとなった。

 

 それでも焦りはなかった。新型コロナウイルスによる活動停止の影響もあり、新チームが始動したのは3月に入ってから。「プレシーズンというのは普通6週間くらい必要なところを4週間で東京都トーナメントやリーグ開幕戦を迎えているので、焦らずに一つずつ積み上げることが大切だと思う」(栗田大輔監督)。大敗を悲観することなく、中3日で迎えた第2節順大戦では、リーグ戦初スタメンとなった井上のゴールを守り抜き1―0で完封勝利。その後も第5節東洋大戦まで4試合連続で完封勝利を収め、見事にチームを立て直した。第6節早大戦で引き分け、第9節法大戦では敗れたものの、連敗は0。栗田監督が目指す「連続で勝ち点を落とさないチーム」を体現し、優勝した2020年と同じ勝点25を獲得し前期を終えた。

 

(写真:全日本大学選抜での岡)

 他を寄せ付けない強さの裏にあるのは、強固な守備陣だ。前期での失点は8。第2節以降の10試合に限ればわずかに4と〝いい守備からいい攻撃〟を体現している。その立役者となったのが岡だ。昨年度までは高いポテンシャルを見せながらもケガでの離脱が続き、スタメンを確固たるものにできていなかったが、今季はここまでチームで唯一全11試合にフル出場。鉄壁の守備だけでなく、正確なフィードや186センチの高さでセットプレーのターゲットになるなど、攻撃面でも大きく貢献している。特に第4節桐横大戦ではセットプレーから先制ゴールを記録し、守備面では開幕戦で昨年度の王者・流経大相手に7―0という衝撃的なスコアでその破壊力を見せつけた相手攻撃陣を完封した。同学年の村上や井上、後輩の鷲見、上林らと守備陣を構築する中で、積極的に周囲に声をかけるなどリーダーシップの面でも成長。6月には全日本大学選抜にも選ばれ、全韓国大学選抜戦にもスタメン出場するなど、今や名実ともに大学サッカー界屈指のCBへと上り詰めた。

(写真:チームを救う活躍を見せた田中禅)

 

 また、選手が入れ替わっても高いチーム力を維持する明大らしさも見られた。第9節法大戦では、それまで全試合に出場し、チームトップの3ゴールを記録していた太田が相手選手と交錯し負傷交代。肘の靭帯を断裂し、約3ヶ月の離脱を強いられた。太田の他にも、開幕戦でスタメン出場を果たしたルーキー・真鍋が前十字靭帯を損傷し長期離脱。昨年度の全日本大学選手権で躍動し、ラストイヤーを前に覚醒したかと思われたFW赤井裕貴(政経4=帝京)もケガで出場なしなど、攻撃陣で離脱者が相次いだ。そんな中、チームを救う活躍を見せたのが田中禅だ。日本クラブユース選手権得点王の看板を引き下げ、大きな期待とともに紫紺の仲間入りを果たした点取り屋は、大学の舞台では苦戦。昨年度は公式戦3試合の出場にとどまり、今年度も第7節駒大戦までは太田の影に隠れ、1試合のみの出場と悔しい時間を過ごしていた。それでも太田のケガにより公式戦初スタメンの機会を得た第8節国士大戦では、PKで大学初ゴールを記録。第10節流経大戦では試合終了間際にスーパーボレーでチームを勝利に導くと続く第11節筑波大戦でも先制点を奪取するなど、持ち前の体躯と得点感覚で窮地のチームをけん引した。練習から全員がトップチーム入りを目指し、試合を想定した対人練習を多く取り入れる明大。ケガのリスクが高いというデメリットもあるが、代役となる選手も高い実力を持ち、誰が出てもチーム力が落ちない姿を体現している。

 

 勝負の後期のカギは、更なる個の進化だ。今年度は明大が軸とする4―4―2だけではなく、3バックや4―3―3などさまざまなシステムに挑戦している。システムを自在に変え常に相手を圧倒する戦い方には、基盤となる個の力と連携が求められる。ケガで離脱中の選手たちが復帰を果たす中で、トップチームへの競争が更なる個の進化を促進するだろう。2年ぶりの王座へ。後期の戦いは、8月6日、流経大との一戦から幕を開ける。

[土屋秋喜]

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