(20)自分らしく活きるため
バターを熱したフライパンに落とす。辺りにバターの香りが漂うと同時にご飯を入れ手早くいためる。適当に混ざったら皿に移す。こっちはOK。ここからが本番だ。
エプロンのひもを締め直して、先ほどのフライパンに溶いておいた卵を流し込む。なるべく薄くなるように大きく、大きく広げる。慎重にしかし一瞬で。端が乾いてきたら、先ほどのバターライスを卵の上へ。ライスを卵で巻いて、最後の難関である緊張の一瞬。皿をフライパンにかぶせるように持ち、フライパンごとひっくり返す。――果たしてオムライスは皿の中心に収まった。
長い間わたしにとって、オムライスはあこがれだった。わたしの家ではオムライスはなかなか食卓に上がらない。一つ作るのにフライパン一つを使ってしまうため、5人家族には非効率な品物になってしまうのだ。しかし作ってみれば、何のことはない簡単なもの。こんなにお手軽にオムライスが味わえるなんて、料理というのは意外に面白いもののようだ。
挑戦回数を重ねれば重ねるほど、オムライスを作るのは勢いが大切だと思えてくる。手順の中で集中が途切れてしまうと、結果はたいてい失敗。どこか不格好なオムライスが出来上がる。
人生、勢いが大事とはこんなところにも、とうなずいていると、その言葉を実践している人のことを思い出した。インターンでお世話になっている企業で働いている女性。インターン初日に開かれた懇親会という名の女子会で、韓国から日本への留学を決めた時のエピソードを語ってくれた。
もともとアメリカへの留学を希望していたその女性は、さまざまな理由により留学先を変更することになった。そこで選んだのが日本。近いからという理由にも驚くが、ここからがすごい。日本への留学を扱う会社に電話したところ、申し込みは翌日まででそれ以降は次の年と言われる。そこで「今から行きます」と即答。荷物をまとめ、住んでいたプサンから会社のあるソウルまでバスで5時間揺られた。
この時の行動があるから今自分はこの会社にいる、と話を締めたその女性は何事も勢いが大事と笑った。わたしもこうなりたいと思うような魅力のある人に会ったのは、久々だった。
オムライスと魅力のある人。何の関係もないように見えるが、この二つはわたしにとって短期目標と長期目標に当たる。この「目標を持つ」というのもインターンで学習し、実行しつつあることの一つだ。インターン先の会社では目標を立てることが社訓の一つにまでなっている。人生に関わるような長期目標から現在やるべきことの短期目標につなげる。普段生活していると忘れてしまいがちな、どういう人生を送りたいのかというテーマも、日々の生活を送る中で、一歩ずつ近づいていける。あくまで自分らしく活きていきたいというテーマにおいて、オムライスが中心というわけではない。オムライスが作れるようになることは私にとっては、一つの目標達成であり、なりたい自分に近づく一歩なのだ。
今回のオムライス作りを振り返る。ご飯を少なめにしたのは、いい判断。形がきれいに上がった。半熟加減もなかなか良かった。しかしあろうことかバターライスに味付けを忘れた。次は塩コショウを忘れずに。
オムライスは料理としてはしょせん初級レベル。それすらまともに作れないわたしは、理想の足元にも及ばない。しかし千里の道も一歩から。自分らしく活きていくための一歩として、今日もわたしはオムライスに挑む。
第21回は西村元英が担当します。
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