(17)“ありがとう”の気持ちを込めて

1999.01.01
(17)“ありがとう”の気持ちを込めて
 第17回の担当は間野彩佳です。

 幼いころからずっと、スポーツが大好きだった。オリンピックやワールドカップが開催されれば眠るのも忘れてテレビにかじり付いていたし、夏休みは高校野球、週末は大好きなサッカー観戦で声を枯らす。そんな私の姿を見て、周囲はよくあきれ、時には苦笑さえ漏らしていた。それでも、目の前で繰り広げられるプレーの一つ一つに一喜一憂し、会場に訪れたたくさんの人と一体となったように感じられるあの時間は、言葉にはできないほど幸せなものだった。

 こんなにもスポーツに引かれるのは、きっとそれが、自分にはできないことだったからなのだろう。運動神経に恵まれなかったわたしにとって、スポーツは“する”ものではなく“見る”ものだった。手に汗握るような試合、真剣なまなざしで競技に挑む選手たち、見る者の心を奪い、一つにさせるプレーの数々……。それは、わたしには手の届かない世界だった。

 だからこそ、その世界で一生懸命に戦う選手たちがまぶしくて、そして強烈にあこがれた。

 そんなわたしが明大スポーツ新聞部に入部して2年半。決して長い時間ではないが、その間いろいろなスポーツに触れた。中には、今まで耳にしたことも目にしたこともないような競技もあった。
けれど、どんな競技でも“変わらないこと”がある。それは、選手たちのひた向きさ。ほかのことをすべてなげうってでも、その道を極めようとする姿だ。「優勝する」、「1番になる」。言葉にしてしまえばたった一言のその夢を叶えるために彼らがしていることは、“努力”というたった一言で言い尽くせるものではない。

 「そんなこと当たり前じゃないか」と思う人もいるかもしれない。いいプレーをする、頂点に立つためには、それ相応の努力は必要だろう、と。わたしもそう思っていた。だが、想像していた世界と実際に見た現実は、全く違うものだった。彼らが日々立ち向かっている壁は想像以上に高く、彼らが歩む道は想像以上に険しく、そして目指すもののために想像以上の時間と労力を傾けている。まさに青天のへきれきだった。だが、わたしが取材を通じて知ったことはきっと、彼らの“努力”のたった一部分。現実をたたき付けられ、少し怖くなった。わたしは、彼らの紡ぐ言葉や姿を誰かに伝えていくことが本当にできるのだろうか、と。

 袋小路に迷い込んでしまったわたしを導いてくれたのは、ある選手からもらった一言だった。その言葉は、今もわたしを支えてくれている大切な、大切な宝物だ。

 同時に、その言葉をもらった時、この胸に芽生えた思いがある。それは、多くの人に彼らのことを知ってもらいたいと思う気持ち。以前は、どんなに周囲からあきれられても、自分が楽しければそれでいいと思っていた。だが今は、スポーツが持つ楽しさや感動をたくさんの人に知ってもらいたい、そして好きになってもらいたいと、心から思う。その気持ちを1人でも多くの“誰か”に伝えていくこと。それはもしかしたら、今まで幸せを与えてくれたスポーツに対してわたしができる、唯一の恩返しなのかもしれない。

 だからわたしは、わたしができる精一杯の力で伝え続けていこうと思う。つたない言葉や文章ではあるけれど、そこに込めた思いが、少しでも誰かの心に届くことを願って。

[間野彩佳]

第18回は河合直樹が担当します。