(3)「慢心せず最後まで」片倉康瑛 新体制インタビュー
3年連続で日本一を争っている明大。ウイニングカルチャーが根付きつつある今、新スローガン〝One by One〟の下、目標とするジュニア選手権、対抗戦、大学選手権の3冠達成なるか。勝負の秋を占う挑戦の春、箸本龍雅主将(商4=東福岡)率いる新体制が始動する。本連載では新幹部の今シーズンに懸ける意気込みを全8回にわたって紹介します。
第3回は片倉康瑛(法4=明大中野)のインタビューをお送りします。(この取材は3月12日に行われたものです)
※3月30日、関東ラグビー協会より「関東大学春季大会・オールスターゲームの中止決定」が発表されました。一部取材内容と齟齬(そご)がありますが、ご了承ください。
――副将に選ばれた心境はいかがですか。
「正直副将のようなキャラクターではないのですが、選ばれたからにはしっかり責任を果たしたいです。チームがパニックのときでも、自分は冷静に分析して的確なことを伝える、雰囲気を変えられるような存在になりたいです。なりたいというよりならなければいけないと思っていますが、チームのことをしっかり考えて全体を見ていこうと思います」
――昨シーズンを振り返ってみるといかがですか。
「ラインアウトのところは2年生のころよりもマークされている気がしました。その中でどうやっていくかを考えて、すごく成長できたとは思います。ただボールキャリー、タックル、ブレークダウンのところはまだまだ下のレベルだと感じています。隣に龍雅という良いお手本がいるので、しっかりそれを超えられるように今年は頑張っていきたいです」
――2年連続で大学選手権決勝のピッチに立った身として、チームに還元していきたいことはありますか。
「準備とメンタル、慢心のところです。昨年の大学選手権決勝もすごく準備はしましたが、結果的に早稲田の方が準備量は上回っていました。昨年は対抗戦で早大も慶大も帝京大も大差をつけて優勝したこともあり、周りから圧倒的と言われていました。(武井)日向さん(令2商卒・現リコーブラックラムズ)はずっと『何も成し遂げていない』と言ってはいましたが、その中に少し慢心があったのかなと思います。対抗戦を優勝して大学選手権決勝まで進むという、いい文化を継承させてもらっているので、今年はもちろん対抗戦も全勝優勝を狙います。去年負けているからといったメンタルの弱さや勝っているからといって調子に乗らずに一から積み上げて、最後までいきたいです」
――FWの一列目の穴はどうやって埋めますか。
「ラインアウトはリフト、僕とか龍雅、哲大(繁松・政経4=札幌山の手)が残っているので、スローのタイミングが合えばという感じです。日向さんや(松岡)賢太さん(令2商卒・現神戸製鋼コベルコスティラーズ)と合わせていた2人がいなくなってしまったので、一日一日やって合わせていくしかないです。スクラムの部分は少し不安ではありますけど、フッカーの三好優作(文4=松山聖稜)を始め、フロントローがよく分かっていると思うので、春はいろいろチャレンジしたいです。うまくいかないときでも受け身にならずに、どんどんチャレンジして自分たちのスクラムを見つけていきたいです」
――後輩の中で期待している選手はいますか。
「臼田(湧人・情コミ3=国学院久我山)もラインアウトをすごく考えるようになってきました。2年生の吉沢(拓海・政経2=熊谷工)、1年生からも何人か大きい選手が入ってきたので、そういう選手たちに僕の教えられるラインアウトは全部教えようと思っています。それで抜かされたら歯がゆいですけど、共に成長できたらなと思います」
――今年1年間の個人的な目標を教えてください。
「一番はトップリーグで通用する選手になることです。2月のオフにトップリーグの練習に参加させてもらいましたが、自分の力が全然通用しませんでした。体の強さやブレークダウンのスキル、ボールキャリーのスピードなど、まだまだ改善できるところはたくさんあります。トップリーグに入った時に、すぐに試合に出られるような選手になりたいです」
――「1年次の方が闘争心があった」ようにおっしゃっていましたが、それはどういうことですか。
「今はAチームで出られていますが、1年生のころが一番頑張っていたと思います。やはり試合に出られなかったので『試合に出たい。絶対俺の方がいい』みたいにずっと思っていて、努力し続けていました。去年1年間、特に夏合宿のときとかは慢心してしまっていて、筑波大戦の出来も悪かったです。自分から成長したいという気持ちに波がありました。しかし先日トップリーグの練習に参加したことで『今の(状態)で満足していても駄目だな』と感じることができたので、言葉では言い表せないですけど、頑張り続けたいという一心です」
――FWとして意識していくことは何ですか。
「滝沢FWコーチが‶タフ・ワンステップ〟という課題を出してくださいました。常にタフにやり続ける、自分の殻から飛び出そうという意味があります。フィットネスをやるとき、最後のあと1秒を耐えられない人がいて、でもそれは気持ちの部分で変えられると思いますし、今まで(メンバーに)入れていなかった人がそこでこだわり、ワンステップ踏み込んで、しっかり入れる選手になるという意味合いがあります」
――武井組から受け継ぎたいところはありますか。
「私生活の部分です。『スキのないチームを作ろう』といって、本当に意識がけできていました。トイレのスリッパが毎回そろっていたり、廊下に余計なものがなくてきれいだったりしたので、そこはしっかり受け継ぎたいです。ラグビーの面だと練習もすごくいい雰囲気だったのですが、少し波があるように感じました。そういうときこそ、リーダーとしてもっとチームを引っ張っていけるように努めたいです。去年のチームも質の高い練習をしていたので、今年はより一層いい練習をしていきたいです。また去年はリーダーズグループがあまりうまく活用できていなかったので、今年はリーダーズグループの仲もしっかり深めていこうと思います」
――ありがとうございました。
[中村奈々]
◆片倉 康瑛(かたくら・やすあき)法4、明大中野高、190センチ・101キロ
春休みに楽しかったことは学年飲み。「藤(諒雅・商4=常翔学園)がパンツ一丁で変な芸をしていてみんな反応に困りました(笑)」。プライベートでも代の仲の良さが伝わってきた
次回は山沢京平(政経4=深谷)のインタビューをお送りします。お楽しみに!
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