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影の司令塔・山﨑洋之「僕の声はみんなにとっての準備」 

ラグビー 2019.11.28

 大学屈指の両翼だ。今年度、ウイングのスタメンを張るのは山﨑洋之(法4=筑紫)と山村知也(営4=報徳学園)の最上級生コンビ。山﨑は体幹の強さを生かしたステップが魅力で、対抗戦でも首位タイの9トライを挙げている。山村はトライへの嗅覚に優れたいだてん。ともに50㍍6秒0の快足で、チームを何度も勝利に導いてきた。4年生になった今年度は、山﨑がBKリーダー、山村が副将を務め、チームをけん引している。下級生の頃から紫紺のジャージーをまとい、戦ってきた2人。その胸の内には日本一の喜びとともに苦い経験も。そろって戦う明早戦は最初で最後。一番の笑顔で終われるように、頂に向けハイスピードで猛進する。


自身と自信 


 6歳で始めたラグビー。大学は同志社大に進んだ兄・翔太さんが敷いたレールではなく「自分が新しく築きたい」と明大の門をたたいた。下級生の頃から紫紺を身にまとい活躍した一方、心の奥底では常に恐怖と闘っていた。「俺の所に来るな」。ラグビー選手の中では決して大きくない175㌢という体格。そんな山﨑に高校とは桁違いの激しさとスピードで相手が迫り来る。2年次秋の筑波大戦後には「波があり安定感に欠けたことが原因」。Aチームのメンバー落ちを経験した。

 そんな中「良いときも悪いときも同じメンタリティで挑むことが大事」。田中監督の言葉が背中を押した。その後は調子の波をなくすために練習前のルーティンを開始。今日までずっと続けてきた。すると心の余裕から次第に安定したプレーができるように。相手に突き刺す低いタックルは努力のたまもの。恐怖心に打ち勝ち、チームに流れを呼ぶ切り込み隊長へと成長を遂げた。「もう大丈夫」。その顔には確かな自信がみなぎっていた。


思いの転換


 予期はしていた。「すまん。リザーブに回ってもらう」。昨年度の対抗戦・慶大戦を前に掛けられた田中監督の言葉が頭から離れなかった。開幕から4試合連続スタメン出場を果たした山﨑。「九つ取ったしトライ王を狙える」。そんな絶好調の矢先、髙橋汰地選手(平31政経卒・現トヨタ自動車ヴェルブリッツ)の復帰によりスタメンの座を失った。「どうして自分よりも、帰ってきたばかりの汰地さんなのかな」。やりきれない思いが募った。

 それでも、長年の経験と信頼がある4年生の背中を見て「チームが勝つならリザーブでもいいかな」。自然とチームを第一に考えるように。大学選手権決勝ではスタメンに返り咲き同点トライを奪取。22年ぶりの大学王者に一役買った。「僕の声はみんなにとっての準備」。グラウンドでは誰よりも大きな声を響かせる。その姿はまさに影の司令塔。チームへの情報提供だけでなく、思いも言葉に乗せて。「もう1回あの光景が見たい」。今日もグラウンドには彼の声がこだまする。


【中村奈々】


◆山﨑 洋之(やまさき・ひろゆき)体幹の強さが光るラン。動物で例えるならウナギ。


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