(36)「期待に応えられるように自分の持っている力を出したい」神鳥裕之監督 就任インタビュー③

ラグビー
2021.07.06

 新たな時代を築けるか。6月1日より明大ラグビー部監督に神鳥裕之(平9営卒)氏が就任。今回は神鳥監督に監督としての意気込みを伺った。全3回でお送りします。(この取材は6月13日に行われたものです)

 

――日常生活、ラグビーをしている時、それぞれチームはどのような雰囲気ですか。

 「日常生活は4年生を中心にしっかりと正しい生活にしなければならないという意識の高さを感じます。ただ学生なので間違いもしますし、この一週間の間で遅刻もありました。それをどのように再発しないようにするのかという話し合いを学生が日々、主体的にやってくれています。そういった面での学生の意識の高さを感じます。練習しているときは、彼らも自分が好きなことをやっているので自分の思いをすべて出してやろうという意識を感じます。ただ厳しい言い方をすれば、朝6時半から練習が始まるのでやりたくても眠い顔で出てきたり、準備やスイッチが入るのにまだ少し時間がかかったり、そういった部分に難しさを感じている選手もいると思っています。まだまだ観察している途中です」

 

――神鳥監督が大学時代現役だった時とのギャップはありますか。

 「今の選手の方が断然意識が高いです。練習時間も僕らの時と違いますし、学校に行って授業もしっかり受けて、文武両道を両立するという大学の方針が、我々の頃と比べればしっかりとした形になっています。自分が学生の頃は明治大学に入学したというよりも明治大学ラグビー部に入部したという感覚で活動していたので、圧倒的にラグビーだけやっていた時間が長かったです」

 

――正式に監督に就任して約一週間がたちますが、予想通りだったことがあれば教えてください。

 「予想通りなのは学生たちの熱心さ、一生懸命さ、学生スポーツの中で1番になりたくて明治大学に入部してきた選手たちの強い思い、熱意は肌で感じます。トレーニングを見ていても発言一つを取ってもそうです。普段それが行動に結びつかないところはありますが、思いは一週間ほど一緒に行動してみて、いい意味で予想通りだったと思いました」

 

――逆に予想外だったことはありますか。

 「予想外だったことは、(寮の)食事がおいしいことです。僕らの時とは全く違います。やはり体が資本の選手たちなので、選手たちに提供するごはん、栄養は大事だと認識しています。そこに選手たちが興味を引くようにしてくれているのは味もそうですし、びっくりしました。学生寮で出すレベルじゃないと思うぐらいおいしいです。あとは93人という人数は情報として知っていましたが、そのメンバーたちを前にミーティングをするという圧は予想を超える感情がありました。トップリーグではできるだけコンパクトに自分が伝えたいメッセージを伝えるために工夫はしてきました。40人いる組織の中でもできるだけ細かくしたり、時間を短くしたり、メッセージをコンパクトにする努力をしてきましたが、ここでは当然、日中学校に行かなければならないし、朝から練習もあるし、なかなかミーティングをする時間を一週間の中で設定できなかったです。一週間でここと決めて話すと内容の情報量も多く、90人が一気に聞くことになるので、部屋に入った時の90人の圧をとても感じます。このメンバーたちにどれだけのメッセージを残せるか今考えているところです。監督は伝えなければならないので、1対90になると伝わるメッセージの言霊というのは薄くなると思うので、ここが1番の真面目な話の予想外だと感じたところです」

 

――選手と接する上で意識していることはありますか。

 「よく言われますが、とにかくシンプルに言葉を伝える事です。目に付くことや気になることはたくさんありますが、その都度伝えていても選手たちの印象に残しづらいと思います。自分がこうしたいと思うことをできるだけシンプルにして伝えることを心がけています。ファーストミーティングで、学生たちに伝えた時に『僕はOFFを大事にする人間です』と伝えました。その意図は、まずラグビーというのはボール1個に、フィールド上に敵味方合わせて30人で80分間戦うゲームです。分析の世界で、ボールが純粋に動いている時間を計ると大体30分から40分と言われています。例えば分かりやすく30分とした場合、極端に言うと、均等に見て1人当たりボールを触っている時間は1分しかありません。スクラムハーフやスタンドオフは長く触りますが、分かりやすく見た場合、79分間ボールを持っていない時間があるという話をしました。練習は6時半から始まって、グラウンドに立っている時間は長く見積もっても2時間しかないです。では残りの22時間は何をしますかという話です。関東大学対抗戦が7試合、全国大学選手権が3試合、僕たちがタイトルを取るために必要な公式戦は年間10試合しかありません。これを日にち換算すると10日間しかありません。では残りの355日はどうするのか、要はスポットライトが当たる時間は想像通り努力しますが、スポットライトが当たっていないときに人の何倍努力するかによってパフォーマンスも変わってくるし、勝負を分けるという話をしました。『シンプルにOff the ball、Off the fieldを大事にする人間です』と伝えました。長くなりましたが、可能な限りシンプルに言葉を使うという事を意識しています。選手に届くように、言ったからには責任を持って、グラウンド上でも、日々の生活でも細かくリマインドして伝えています」

 

――最後に意気込みとファンの方にメッセージをお願いします。

 「戦うのは学生なので、監督はチームをまとめる顔として取り上げられますが、何よりも学生が高いパフォーマンスを出してほしいです。特に4年生が学生生活を振り返って、明治大学ラグビー部に入って良かったと思えるように監督としての立場からサポートしたいです。自分が4年生の時に、優勝した話題で今も同期と話せますし、そういった思い出をつくらせてあげたいなと思います。厳しい目線で応援してくれる方もいますし、期待に応えられるように自分の持っている力を出したいと思います」

 

――ありがとうございました。

 

[田中佑太、安室帆海]

 

◆神鳥 裕之(かみとり・ひろゆき)平9営卒

 2013年度より、リコーブラックラムズの監督に就任し8年間指揮を執る。2021年6月1日より明大ラグビー部の監督に就任。大学時代にはナンバーエイトとして活躍し、大学1、3、4年次に全国大学選手権優勝に貢献した。