(34)「明治のベースをさらに高いレベルに引き上げる」神鳥裕之監督 就任インタビュー①

ラグビー
2021.07.03

 新たな時代を築けるか。6月1日より明大ラグビー部監督に神鳥裕之(平9営卒)氏が就任。今回は神鳥監督に監督としての意気込みを伺った。全3回でお送りします。(この取材は6月13日に行われたものです)

 

――監督のオファーをいただいたのはいつ頃ですか。

 「1年程前になります。2020年の4月です。即決ではなかったですが、あまり引きずるのもよくないですし、決めるまでに数日かかりました。1週間くらい冷静に考える時間をもらいました。田中(澄憲・平10文卒)前監督から、僕の後の監督をやってほしいと回りくどく言う男ではないので、非常にシンプルにこういった理由で来ましたと伝えられました」

 

――監督を引き受けた理由を教えてください。

 「この仕事をやりたい人は多いと思いますが、実際にやれる人は本当に限られていて、ましてやその仕事をやってほしいと頼まれることは生きていて、そうそうないことだと感じました。後々やっておけばよかったと後悔をするくらいなら、頂いたオファーやチャンスにしっかりチャレンジして、それから振り返るような人生の方が良いと最終的には思ったのが一番の理由でした」

 

――リコーの監督退任は元から決まっていましたか。

 「決まっていました。僕が個人的に同じチームで8年間指導をしてきて、辞めろと言われたわけではないですが、トップリーグも新リーグに生まれ変わるというタイミングでした。いつまでも同じ組織で指導し続けることもプラスではないと思ったので、これを機に新しいことに挑戦しようと決めていました。それを会社の上司にも相談して、次に何をしようかと話している段階で、このお話を頂きました。そのタイミングで話が来たことは何か縁があったのかなと思います。他のチームに行く可能性は個人的にはなかったと思います。仕事に戻って、監督として培ったキャリアがビジネスの世界でどのように通用するかに興味を持ち始めていたので、リコーでの仕事でチャレンジをしようと思っていたのが事実です。その際に、ラグビーの中でも、明治大学という大変注目度の高いチームからオファーを頂いたことで、これだけラグビーに携われる機会を頂けたことは何かしらラグビーの世界で頑張れと言われているのではないかと感じました。今はこうなった以上、できる限りラグビーの世界に関わり続けられるようなキャリアを踏んでいきたいなと思い始めています」

 

――昨年度リコーは好成績を残しましたが、そこに心残りはありますか。

 「やはり人は同じ場所にいた方がどちらかと言うと居心地がいいですし、ましてやチームの状況が良くなると後ろ髪を引かれることがないと言えば嘘になります。ただ僕にとってこの明治大学というのは非常に大きなものですし、そこからのオファーを頂いたという時点で、この新しいチャレンジをしたいという気持ちを貫こうと決めて、ただ人間なので決めてから、4月から6月の14カ月間もあったので、その過程でリコーが良くなってきたと思うことはありました。ただその時は、自分の決めたことを常に立ち戻って考えていたので、そこまで引っ張られたことはないです」

 

――プロと学生の違いはありますか。

 「難しい質問ですね(笑)。(学生は)単純に言えば、指導者として見捨てることができません。ここに来た学生、選手たちは仕事ではないから、勉強もしています。学生は学費を払ってここに来ている人たちで、プロはお金をもらっているので、駄目なら終わりで、そこのシビアさが違います。ラグビーだけではなく、人間性を含めた育成をしていく。大学生の方があらゆる角度からでのアプローチが多くなると、ここに来てから感じることです。ラグビー面での指導は、トップリーグになると多くなってくるので、当然プロとしての心構えという時間もありますがいろいろな意味でのアプローチは学生の方が多いです」

 

――プレッシャーはありますか。

 「先のことはあまり考えないようにしています。当然、ありたい姿というのはしっかりとクリアにしていきます。明治大学のラグビー部がどんなものを求められていて、多くの方からどういったことを期待されているかは自分の中で重々承知しています。大学日本一を狙い続けるチームであるというありたい姿は当然持っていますが、そこにまつわる特別な創部100周年、記念的なところは意識せずに、単純に明治が強くなるためにどうすればいいかを考えるようにしています。プレッシャーはどうしてもコントロールの効かないところに目を向けることで生まれると思っているので、やらなければいけないことをチェックリスト化して、そこに着眼するようにしています」

 

――監督としての目標を教えてください。

 「田中監督がつくった明治のベースをさらに高いレベルに引き上げるというのが自分に一番合っているだろうと感じています。できたものをクラッシュして新しいことを起こすフェーズではないと思っています。リーダーシップを強烈に発揮して、一つベースをつくり上げた田中監督のこの形をさらに良くするために自分がアップデートしていくという考え方です。強い組織という田中監督の目標がありましたが、その組織をさらに良くするために自分がどうすればいいか。強い明治を継続するためにどうすればいいか。田中監督が在任期間で、優勝1回、準優勝2回、ベスト4が1回、これだけ優勝争いを確実に争ってきたチームを同じような形で優勝争いを続けられるチームにしていくことが大事です。見た目上では現状維持になりますが、現状維持では同じ結果を得られないと思っているので、取り組み方が一番大事になってくると思います」

 

――ありがとうございました。

 

[田中佑太、安室帆海]