(6)「しっかり基礎から1年間つくっていく」 高野彬夫監督 新体制インタビュー
昨年度、関東大学対抗戦(対抗戦)、全国大学選手権(選手権)の両大会で優勝を果たした明大。今年度は大川虎拓郎主将(法4=東福岡)が先頭に立ち、スローガン『ALL IN』を掲げ2連覇を目指す。本連載では新チームの監督と幹部となる4年生のインタビューを全6回にわたって掲載していく。
第6回は高野彬夫(平18商卒)監督のインタビューをお送りします。(この取材は4月28日に行われたものです)
——HC時代と比べて監督としてコミュニケーションの部分で意識されていることはありますか。
「できるだけ彼らの表情とかも見るようにして、こっちから『あれやれ、これやれ』と言うよりは、彼らの反応や表情を見たりすることを意識してやっています」
——学生主体の運営に関して、どこまで介入して、どこから学生に委ねるという判断をされていますか。
「そこは難しくて、主体的という言葉は社会でも使われているけど、漠然とした言葉だと思っています。任せればいいというものではないので、やるべきことを僕は骨格というか何を持って話すとか、そういうものをこの1年間を通じて作っていく。このチームとしての、ラグビーとしての骨格の中で、あの子たちが自分たちで考えられるような土台を作っていくのはすごく意識していますけど、簡単にできるものじゃないなと思います。去年の神鳥監督はすごくいいものをつくって残してくれたんですけど、そういう部分を私生活でもラグビーでもつくっていきたいです」
——選手たちに日常生活と練習でどのようなことを心がけてほしいと思いますか。
「神鳥監督が仰っていた『凡事徹底』はすごくシンプルだけど、意外と人ってできないことなのでそこは徹底して。あとはせっかく寮生活をしているので、彼らには嘘の人間関係をしてほしくないと思っています。成長過程にある子供たちなので、『こんなことを言ったら仲悪くなっちゃうかな』とか、お互いが遠慮する部分は必ずあるけど、そういうのを乗り越えていく過程をしていかないと、最終的なチームの結束にはつながらないなと思っています。寮生活もルールを守り合うとかごまかさないとか、そういうところを徹底して、彼らの中で注意し合ったり解決したり。僕がうるさく言うのはすごく簡単なことなので、うまく学生の中で解決していくことをしたいなと考えています」
——故・北島忠治監督から指導を受けたことがない方が監督に就任するのは創部史上初めてのことです。北島イズムについてはどのように捉えていますか。
「明治大学そのものが、北島イズムと言うと他の人が怒るのかもしれないですけど(笑)。『前へ』という言葉は明治大学の哲学的な言葉になっているし、明治大学のスローガンみたいになっています。なので直接指導を受けていなくても、いつも心の中にはあるもので、大事にしていくものだし、直接指導を受けたことはないけど、すごく僕の中の心の支えになる言葉でもあるし、教えでもあるのかなと思います」
——就任会見の際に『(明大で)しんどい経験をしたことはものすごくプラスになっている』と仰られていましたが具体的にはどのような部分で感じますか。
「やっぱり勝てなかったことです。(当時)あったものは伝統と過去の栄光。実際に我々は強くなかった。それがやっぱり当時の学生にとってはすごくしんどいことでした。でもだからと言って、あの時勝てたら良かったとは今思わないし、そういう経験ができたから、経験を糧に日々成長できているのかなというのはあるし、明治で良かったと思います。日本一を目指す集団になった(今の)学生にも綺麗事なんだけど、結果が全てじゃない。本当に未来に残るものは優勝した結果よりも、くだらない仲間同士の思い出。そういうのを大切にして生活してほしいなと感じています」
——チームの構成として昨年度の4年生が抜けた点はどのように捉えていますか。
「学生スポーツは年に1回、4分の1がいなくなるのは決まっていることなので。4年生の穴は毎年出て当然だし、彼らは本当に去年よくやってくれたけど、新たな気持ちでまた1年つくっていくという思いです。それはどれだけ優秀な4年生であっても、あまりメンバーに絡む子が少ない年だとしても同じだと思っています。例えば今年の4年生が去年からメンバーの子多かったですけど、だから今年勝てるということは全くなくて、0からとは言わないけど、しっかり基礎から1年間つくっていくという思いです」
——平組や木戸組と比べて大川組はどのようなチームと感じていますか。
「まだわからないですけど個性は強いかな。今の4年生って個性の集まりなので面白いと思います。大方のファンの皆さんは『今年はすげえ』とか言っている方もいますけど、読売巨人軍が毎年勝っているわけじゃないですし、彼らも彼らで自分たちの課題は分かっていると思うし、どうやってまとまって一つの方向に向かっていくかっていうところは楽しみなところです」
——春シーズンの注目してほしい点を教えてください。
「新しい戦力がまずどうやって出てくるか。去年のメンバーが抜けたところで言うと、9番とか2番とか、あとはCTBとか。どんな選手が出てくるか、どんなパフォーマンスをして、どんな新しいものを見せてくれるかを長い目で注目してほしいなと思います。春からなんでも、去年の子たちみたいにできるわけじゃないと思うので」
——チャンピオンとして臨むシーズンですが昨年度などと心持ちは違いますか。
「周りの人の期待が大きくなっただけで心持ちは変わらないです。さっきも言ったように学生の4分の1がチームから抜けて、また新しいチームになるので。組織は4分の1もいなくなれば違うものだと思うので、そこをしっかり作っていくっていう思いがありますね。あくまでチャンピオンだったのは去年で、リーグワンだったらメンバーが残ってそのまま行けたりするけど、大学組織はそういうものでもない。しっかりチームとしての環境と文化、カルチャーとかよく言うけど、そういうも土台からしっかり築いていくというのをやりたいなと思います」
——ラグビー部を日頃から応援してくださっているファンの方に向けてメッセージをお願いします。
「本当に明治のファンは大学も含めて本当に感謝しています。すばらしいサポートと熱い応援、スタジアムでもいつも明治のファンが一番多くて、いつも校歌も大合唱だし、本当にありがたいです。神鳥監督も言っていましたけど、『おめでとう』より『ありがとう』と言ってくれるファンの方が多くて、そういうチームなんだなっていうのはすごくうれしいです。我々に『おめでとう』じゃなくて『楽しませてくれてありがとう』と言ってくれて、こちらこそ『本当にそうやって応援していただいてありがとう』なので、そういうファンの方たちに喜んでいただけるようなチームにしたいなと思います」
——ありがとうございました。
[佐藤比呂]
◆高野 彬夫(たかの・あきお)平18商卒。
現役時代は主にCTBとして活躍し4年時には主将を務めた。卒業後はクボタスピアーズ船橋・東京ベイで8年間プレーし2014年から同チームのコーチに就任。リーグワン2022-23年シーズンの優勝などに貢献した。2024-25シーズンから2年間明大のHCを務め今年度から監督に就任した。
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