
(番外)小川佳純氏 インタビュー 後編
日本サッカー界をけん引する人材を数多く輩出してきた明大サッカー部。今回は明大を卒業後、プロ選手としてJリーグの3チームを渡り歩き、現在はJFLのFCティアモ枚方で監督を務める小川佳純氏(平19商卒)に三つのテーマに分けてお話を伺った。ここでは、今後の日本サッカーについて語っていただいたものをお届けする。(この取材は8月18日にオンラインで行われたものです。)
――自身のオンラインサロンを開設するなど、監督業を行いながらもサッカー界に携わっていらっしゃいますが、日本サッカーに対する思いを教えてください。
「日本サッカー界には、プロ生活で素晴らしい時間を過ごさせていただいたので感謝しかないです。自分は微力ですが、どういう形であれ日本のサッカー界の発展に貢献したいということを引退してからの目標の一つとして常に持ち続けています。このように、自分が現役を終えてすぐティアモ枚方の監督に就任して、JFLに昇格させてさらにいい結果を残すという一つのモデルケースになることができれば、現役選手にとってもプラスになるのではないかと考えています。そういった部分も含めて、現役選手への貢献もそうですし、自分が指導者として成功して、サッカー界を盛り上げて、いい選手を育てたり、いいチームを作ったりすることで、日本のサッカーがレベルアップしてほしいという思いで今の活動を続けています」
――今回の五輪も、メダルには届きませんでした。また、国際大会で優勝するためはどのような部分が足りないと思いますか。
「吉田麻也(サンプドリア)や南野拓実(リバプール)のように、欧州のトップリーグに在籍する選手が増えていくことです。そして、一番大事なのは指導者だと思っていて、例えば日本国内で結果を出した指導者が、欧州のビッククラブから監督のオファーがあるかとか、そういったところで指揮を執っている日本人は現状ではまだいないので、今度は日本の指導者で欧州のクラブで指揮を執る人間が出てくるということが、日本のレベルを上げていくことにつながると思います。少しずつ欧州で活躍する選手が出てきたので、そうした中で指導者がどんどん成長していかなければいけないと思います。この前の五輪であと一歩メダルに届かなかった原因はそういう部分にあるのではないかなと思っているので、一人の指導者としてより勉強していかなければいけないなと東京五輪を見て感じました」
――日本の指導者が海外で指揮を執るにはどのようなことが必要だと思いますか。
「やはりJリーグのレベルが上がっていけば、そこで指揮を執っていた監督は、自然と評価は上がると思います。しかし、欧州と比べるとリーグの実力自体の差があると思うので、結果を出したとしても、欧州から見ると一つ下のカテゴリーのチームで優勝させたという実績しか残せないと思います。最近はイニエスタ(ヴィッセル神戸)など、海外の選手が増えてきた中で、リーグのレベルが少しずつ海外に近づいていけば、そこで結果を出した監督も同様に評価も上がっていくと考えています。そして、欧州で監督になるためのライセンスと日本のトップのライセンスはレベルが一緒ではないので、その部分も変えていかないといけないなと思います。日本で結果を出した監督が、翌年にヨーロッパで監督になれるかというと、ライセンスが釣り合っていない時点で不可能なので、そこは変えていくべき問題だと思います」
――日本特有の大学サッカーが、今後どのように日本サッカー界に影響を与えると思いますか。
「僕個人の意見で言うと、高校卒業するときにプロになれるのであれば、プロに進んだ方が良いと思っています。僕は35歳まで現役を続けましたが、それでも13年しかできなくて、高校卒業からプロになって35歳までできたとしたら、17年間プレーできたわけで、その4年の違いというのは、お金を稼ぐという意味でも海外に挑戦するチャンスがあるかないかという部分でも大きく違うので早くプロになれるのであればなった方がいいというのが僕の考えです。そんな中でも大卒選手が即戦力としてJリーグに入団することが多いということも事実なので、大学サッカーが日本サッカー界に貢献しているということも間違いないですね。
例えば、大学サッカーはJFLといい勝負ができると思うので、J3の下に大学やJFLのチームが戦うようなカテゴリーがあっても面白いのではないかなと思います。大学サッカーの格付けがもう少し上がってもいいのではないかと思うので、そういうことをたまに考えます。あまり現実的ではないかもしれないですが、大学サッカーで明大などは、毎年優勝争いをして、あれだけ多くの選手をプロに輩出しているので、大学界にとどまらず、違うカテゴリーで優勝を目指して戦うということも、あっても面白いかなと個人的には思います」
――FCティアモ枚方での目標を教えてください。
「まずはJFLで優勝することです。そして、このクラブはJリーグ参入を目指していますが、まだ基準を満たしてないので、スタジアムなどの環境を整えなければいけないです。それはクラブの人間だけでは達成できないので、チームを取り巻く環境がチームのJリーグ参入に向けての速度を加速させるということを、結果を出すことで促していきたいと思っています」
――明大の学生に向けてメッセージをお願いします。
「大学というのは、子供から大人に変わる非常に重要な時期だと思います。なので、周りの人からさまざまなことを学んで、1人の人間として、1人の大人になる上で、大事な時期なので、大学4年間を大事に過ごしてもらいたいなと思います。卒業後はそれぞれ新たな世界にチャレンジすると思いますが、自分が一番やりたいことを考えて、それに向かって努力して、チャレンジする。僕は引退後、どんな結果になるかわからなかったですが、自分がJリーグの監督になってタイトルを取るという目標を立てて、そこに向かって新たなことにチャレンジして、失敗もありましたが、成功体験も得られました。そうやってチャレンジすることで得るものというのは非常にたくさんあると思うので、チャレンジすることを恐れずに、まずは学生時代をいい大人になれるように、1人の社会人として自立できるようにという事を考えて過ごす。その後、自分のやりたいことに向けてしっかりチャレンジしてもらいたいなと思います」
――ありがとうございました。
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