(番外)小川佳純氏 インタビュー 前編

サッカー
2021.09.26

 日本サッカー界をけん引する人材を数多く輩出してきた明大サッカー部。今回は明大を卒業後、プロ選手としてJリーグの3チームを渡り歩き、現在はJFLのFCティアモ枚方で監督を務める小川佳純氏(平19商卒)に三つのテーマに分けてお話を伺った。ここでは小川氏が指導するFCティアモ枚方について語っていただいたものをお届けする。(この取材は8月18日にオンラインで行われたものです。)

 

――アルビレックス新潟を退団した直後、FCティアモ枚方の監督に就任した経緯についてお聞かせください。

 「アルビレックス新潟を契約満了で退団することになり、他のJリーグのクラブで現役を続ける道を探していたのですがオファーがなかなか来ませんでした。そんな中、名古屋グランパス時代の同期である巻佑樹が、FCティアモ枚方のゼネラルマネージャーに就任することが決まり、巻から最初は選手として加入してほしいという話をいただきました。自分としては新潟での最後の2シーズンはケガが多く、環境がJリーグのクラブと比べて整っていない関西1部のチームで選手として自分が活動していくのは身体的に厳しいのではないかと思い、オファーを受けるかどうか答えを出せずにいました。そんな時、監督がまだ決まっていなかったらしく『監督をやってみないか』という連絡が巻から来ました。僕はぜひ監督をやらせていただきたいと答え、監督をやることが決まりました」

 

――FCティアモ枚方での監督業はいかがですか。

 「指導者の仕事をしたことは無かったので、最初は練習の組み立てが難しかったです。選手の時は与えられた練習をこなすだけだったので、細かいことは考えていませんでした。しかし、指導者になって練習メニューを組む上では、コートのサイズや、練習時間なども含めて組んでいかなければならないので、最初は手探りで進めており、難しかったです。しかし、それ以上にやりがいや、楽しめているなという感覚は自分で感じながらやれています。選手を引退した直後に監督に転身、というチャレンジをする人はなかなかいないと思うので、その意味でも非常に楽しめています」

 

――プロとアマチュアリーグの違いに関してはいかがですか。

 「FCティアモ枚方はプロのチームではないので選手はみんな仕事をしながらサッカーをしています。そのようなクラブでは、試合の設営や運営などの準備を選手、監督、スタッフ全員で協力して行い、ホームゲームが終わると、試合に出ていた選手も一緒に片付けをしなければなりません。人手が少ない中自分たちで全て作り上げているか否かがアマチュアとプロの違いです」

 

――さらなる上位進出、Jリーグへの参入に向けてはどのような部分が課題だと思いますか。

「Jリーグ参入という点に関しては、規定の収容人数を上回るスタジアムを造ることなど、すぐに解決することができない問題も絡んでくるので現時点では難しいです。ただ、たとえ昇格できなくてもチームとしていい結果を残すことができれば、ティアモを取り巻く人々が、『ティアモがそれだけ強いならスタジアムを作ってJリーグに昇格できるように準備しよう』というような動きを起こしてくれるのではないかと思います。そのためにも昇格して1年でJFL優勝、もしくはJ3の昇格圏である4位以内などの結果を出さなければならないと思っています」

 

――名古屋グランパス時代のストイコビッチ監督からはどのような影響を受けましたか。

 「ストイコビッチ監督(セルビア代表監督)も、監督業を始めたのはグランパスが最初でした。グランパスの監督に就任したときに、それまで万年中位と言われていた名古屋グランパスの中で『必ずタイトルを取るチームにする』と目標を言葉にしてメディアに発信していて、選手もその気になっていました。個人的にプレーについて何か言われるということはほとんど無かったのですが、勝者のメンタリティーや、最後まで諦めずに戦うということを常に言い続けてくださいました。その熱意が選手に植え付けられて、監督就任から3年後にチームが優勝するのですが、選手をその気にさせるマネジメント能力に関して非常に長けている監督だなと思いました。目標を明確に設定し、監督がそこを目指してぶれることなく向き合い続ければ、選手は付いてくるということを実際に見させていただいたので、監督となった今とても参考になっています」

 

――さまざまな指導者の下でプレーされてきましたが、監督業を行う上でご自身が最も影響を受けている監督はいらっしゃいますか。

 「一番と言われると選びづらいのですが、さまざまな監督のいい部分を吸収して、自分のものにしようと、今まで出会った監督の指導や振る舞いを思い出しながら取り組んでいます。練習メニューなども、高校、大学、プロと自分がやってきた中で『あのときのあの練習良かったな』と思ったものを選手に練習メニューとして与えたりしているので、今までご指導いただいた全監督のいいところを自分の中に取り込んで、それを発信しているという感じです」

 

――JFLとFCティアモ枚方の魅力には何だと思いますか。

 「僕たちや選手は、午後は仕事をしているのですが、その仕事先も実際にチームのスポンサーになってくださっている会社に勤めている人が多いです。自分たちが働いている会社の名前が胸とかに書かれたユニホームを着てプレーしているのでスポンサーの方々もチームに対する思い入れが強いです。スポンサーから見ても実際に自分たちの会社で働いている従業員がプレーしていますし、選手も自分たちが働いている会社名を背負ってプレーしているという意味では、チームをサポート、応援してくださっている皆さんと選手たちとの距離が近いということが良いところです。規模はJリーグと比べたら小さいのですが、人と人とのつながりがJリーグ以上に強いチームではあると思うので、そこが魅力かなと思います」

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