オリックスから5位指名 高島泰都 歩んできた道の名は③/ドラフト指名特別企画

準硬式野球 2023.11.16

 10月26日、ドラフト会議にてオリックス・バファローズから5巡目指名を受けた高島泰都投手(令4法卒=王子)。元甲子園球児は大学で準硬式の道へ。苦戦した入学当初からエースにまでのし上がった訳は。そして社会人野球で再び硬式に戻り、ドラフト指名を受けた高島。異色の球歴をもつ右腕は何を経験し、プロの世界で何を見据えるのか。今回は王子入社とその活躍までの道のりをお届けする。

11月9日発行の明大スポーツ第532号の2面に掲載した記事と併せてご覧ください。

 

準硬式から再び硬式へ

 準硬式ながら150キロを出した高島はプロ志望届を提出しなかった。「150出した時は、もう王子がほぼ決まっていた状態だったので、大学からプロではなく、王子で2年間結果残してプロに行こうと思っていた」。高島は複数の社会人野球部からオファーがあったが、強豪が多い東海地区に所属する、王子へ進む決断をした。「準硬式のOBの方に王子の関係者がいて、話をつないでもらって。1日だけ練習に参加してブルペンを見てもらって、前の稲葉監督で内定を頂いた」と経緯を説明。さらに当時、王子のマネージャーは早大準硬式野球部から王子、そして広島東洋カープでプレーした経験のある川口盛外氏。本人の努力はもちろんのこと、準硬式野球部出身という縁もあっての入社となった。

 

 準硬式から硬式に戻るとなると、まずボールへの対応が課題となる。その点については「自分が大学4年間でつけた技術とかは、変わらないところもあると思う。投げたことない球でもなかったんで、徐々に慣れていくだろうな」と自信を持っていた。実際、社会人でも大きく崩れた試合は少ない。「早めの段階で慣れたので、そんなに苦労したことはなく、スムーズにいけた」。硬式球に対する4年間のブランクはあれど、野球に対するブランクはない。硬式でも能力を遺憾なく発揮し、力があることを証明してみせた。

 

生きた準硬式の経験

 王子には多様なタイプの選手が所属している。チームの大黒柱でベテランの近藤均投手を始め、左投げのサイドスロー、パワーピッチャーにアンダースロー。バラエティに富んだ選手たちを前に、高島は何を武器に自身の立場を確立したのか。「自分が勝負できるのは、試合を崩さないコントロールの部分と、球速もある程度ある方だなと思った」。準硬式時代に身に付けた制球力を含め、総合力で勝負。中継ぎから始まり、信頼を得てからは先発へ。「大学の時からずっと先発でやっていて、プロを目指すなら先発の方が可能性は高いなと思っていた」。入部当初に思い描いていた通りに進むことができた。

 

 実はもう一つ、準硬式で得た武器があった。「ずっとリーグ戦とか全国大会とか準硬式の時に投げて、公式戦の緊張感というか、そういうのは慣れるのも大事な部分があると思う」。エースとして、これまで何十試合と腕を振ってきた高島。「あまり上がりすぎないでメンタルコントロールができるという部分は、準硬式の公式戦でいっぱい投げた経験が生きたのかなと思う」。社会人に入ってから緊張して投げたことはほぼないという。今年度は社会人野球の最高峰である都市対抗野球大会にも出場。東京ドームで先発し、北海道ガスを相手に7回無失点の好投を披露した。チームとしては5年ぶりとなる都市対抗野球大会での勝利。その際も「そんなに緊張せずに、いつもの自分のペースで試合入って投げれた」と落ち着いてアウトを積み重ねていった。

 

迫り来る運命の日

 社会人野球でも最速150キロをマークし、投げれば毎回好成績を残す。この逸材はプロも注目。「でかい大会は(スカウトが)来ているなっていうのは、自分の中で思っていた」。先ほど紹介した都市対抗野球大会の試合はもちろん、高島が投げる球場には毎回複数球団のスカウトが視察に訪れる。「地方の大会で投げる時とかは、(対戦相手の)コーチから『今日何球団来てんで』みたいに言われて、変に緊張させられる(笑)」。いくら緊張しにくい高島でも、多少は意識してしまうようだ。スカウトからの評価は「うれしかったっていうのはありますけど、あまりうのみにせず。励みというかいい方向に捉えようと思っていた」と思い上がらずに、自身のモチベーションにつなげて投げ続けた。

 

 ドラフト前最後の大会となった日本選手権東海地区最終予選には4試合に登板し、防御率1点台。計8球団のスカウトが視察に訪れており、彼らの前で最高のアピールをすることができた。大会を終え、あとは吉報を待つのみとなった高島。「社会人でやるからには2年でプロ目指して頑張ろう」と決めた目標は果たして達成できるのか。運命の日が、1カ月後に迫っていた。

 

[北原慶也]

 

※④はこちら

 

高島 泰都(たかしま・たいと)令4法卒、滝川西高。都市対抗野球大会の初戦の相手、北海道ガスには滝川西高の同期でエースだった鈴木愛斗投手が所属。鈴木投手が3回から登板し、2イニングの投げ合いが実現した。大会前の組み合わせ抽選を終えた後「まさか本当に当たるとはね、みたいな感じで電話をした。なかなか自分が高校時代には実現しない対戦だったので、うれしかった」。181センチ・80キロ


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