明大、団体インカレ準優勝!尾川メイジに幕/第54回全日本学生選手権
大会3連覇を飾った関大の校歌が響き渡る。
祝勝ムード漂う大阪府立体育館にはひとり涙する尾川主将(政経4)の姿があった。
“やりきった、終わった、ありがとう”
その一滴には、いろんな思いが凝縮されていたのかもしれない。
4年間溜め込んできた思いは涙となってどっと溢れた。
尾川メイジ発足から1年。主将就任時に語った「来年は絶対に大阪府立でⅤを奪還して、監督を胴上げしたい」(尾川主将)という思いは、一年間変わらず貫いてきた。どんな大きな大会で成績を残そうとも「すべては府立(団体インカレ)のため」(尾川主将)の一言。現役部員では団体インカレ優勝の瞬間プレーヤーとして出場していたのは、尾川主将しかいない。なんとしてでもあの瞬間を、感動を……という思いもあったのだろう。何にせよ、尾川主将の府立(団体インカレ)に懸ける思いは誰よりも強かった。
そして向かえた運命の日、11月29日。大阪府立体育館で全日本学生選手権は開催された。泣いても笑っても最後。尾川メイジはこの日で終わる。

相手をねじ伏せる岡部
昨年準優勝の本学は、シードで2回戦からの出場。2~4回戦、初の団体インカレに緊張があった1年生部員の動きの固さは見られたものチームは快勝し順調トーナメントを勝ち上がっていく。3試合通して先方・神田(理工2)、中堅・後山(営4)、大将・尾川と一貫したオーダーで挑んだ明治。いまや本学、不動の3本柱となったこの3人がきっちり勝利することでチームも勢いづいた。4回戦までは難なく勝ち上がった本学。しかし監督、選手、OB全員が気付いていた。準決勝から本当の戦いが始まることを。いや、むしろ準決勝がすべてだということを……
迎えた準決勝、相手は同じ関東勢の中大。春、行われた東日本リーグ戦では、3勝3敗1分。しかし中大が早大に敗れたため明治が見事優勝を果たした。続く秋の東日本大学選手権では決勝で相まみえた本学と中大。またも3勝3敗で並んだため、試合は代表戦にまで進んだ。結果、代表戦で敗れた本学は2位。中大が冠を制した。両試合ともに接戦ながら、今年はまだ一度も中大から星を奪えず、それどころか2年前からあと一歩で勝利を逃してきた明治。両校が自他ともに認めるライバルであることは間違いない。
決戦を前に円陣を組む中大。ギャラリーからも歓声が上がる。

尾川主将(左)と浜田の一騎打ち
先峰戦、西野(政経2)が中大、細野(中大)に1本を守り切られ惜敗すると、続く次峰戦は誰がこのカードを予想したであろうか。両校エースがぶつかり合う波乱の次峰戦となった。尾川主将にとって今年のインカレ王者、浜田(中大)は東日本大学選手権の代表戦で敗れた因縁の相手。「2人とも先峰か大将でしかほとんど出たことのないのにお互い戦略上偶然、次峰であたった。運命を感じる」と尾川主将も語る。試合はお互い探り合うようにして始まった。小刻みにリズムを刻む尾川主将と、ずっしり構えてじりじり滲み寄る浜田。「絶対勝ってよ!」。4年間一緒に戦ってきた市村マネジャー

面突きをたたき込む後山
(文4)からも激が飛ぶ。中盤何度も決まったと思われた拳があったが、ことごとく審判に取り消される。その度に監督、コーチが両手を上げて審判にアピールする姿が印象的だった。打てども打てども取り消される拳に尾川主将は「拳をケガしていたからパンチを繰り出すのが怖かった。だからパンチのタイミングもずれて、なかなか審判に1本取って貰えなかったのだと思う」と分析する。試合はその後も硬直状態が続いた。残り1秒、浜田の面に向かって尾川の拳が大きく振り下ろされたがついに審判の旗が上がることはなかった。尾川主将は納得いかなかったもしれない。しかしこの引き分けは“勝ち”に等しい価値がある。
尾川主将の引き分けで流れに乗った明大はこの後、怒涛の反撃を見せる。神田、岡部(文1)、後山が立て続けに勝ち星を上げると、副将矢島(文4)が惜敗するも大将平松(法1)がルーキーながら、落ち着いて相手をさばき完勝。今年1年乗り越えられずに苦しんだ中大の厚い壁をついに攻略した瞬間だった。喜びに沸く明大サイド。
この1年間追い掛け続けた府立優勝まであと1勝……。
しかし、部員の緊張の糸はもう限界がきていた。過酷な試合のなか堪え抜いてきた心の糸は中大戦の勝利の喜びで緩めた瞬間、プツンとそこで切れてしまったのかもしれない。
決勝戦、明治は2-5で関大に敗れた。尾川主将は敗因を「準決勝で満足してしまったこと」だと語る。「中大に勝った喜びが勝り集中力に欠けていた」(尾川主将)。決勝戦で、団体戦初出場を飾った加藤(文1)を含め、メンバー7名中1年生が3人。尾川主将も「1年生はよくやった」というように岡部、平松は初戦から決勝まですべての試合をこなしてきて、一般入部の加藤も決勝戦で団体戦初出場というなかで、相手は全員4年生。3人ともに敗れはしたものの、果敢に立ち向かっていった彼らの健闘を称えたい。試合後は涙を見せた岡部。“最後に尾川先輩を胴上げしてあげたい”その一心でがむしゃらに放ち続けた拳も相手を捉えることはできなかった。勝てない自分の不甲斐なさが悔しかった。

神田は気迫あふれる拳法を見せた
そんななか、尾川主将とともに最後まで緊張の糸を切らさず、貴重な1勝を挙げたのが神田だ。関大の辻相手に気迫のこもった拳で圧勝。神田の今後の活躍に尾川主将の期待が懸かる。「この大会、神田の成長が一番うれしかった。今まで神田からは聞いたことのないような“決勝、絶対勝ちましょう”という力強い言葉を聞いたときは感動した。実際、決勝では、高校まで勝ったことがなかった相手に勝ってくれた」(尾川主将)。“後は俺に任せて下さい”という熱い思いをプレーで示したかの様な試合だった。
溢れた感情
準優勝に終わった尾川メイジ最後の大会。しかし意外にも尾川主将は「結果はあまり悔しくない。負けたのは悔しいが、納得してまた次に進んでいくしかない」と語った。自分に一番厳しい尾川主将のことだからこそ、この発言は主将自身この1年“やりきった”ことを明示しているように思う。
それでも試合後、尾川主将は涙を流した。泣かないように、堪えて堪えて堪えても溢れ出した大粒の涙は“悔しさ”からではない。尾川主将が1年次、本学の元主将・中栄(平19政経卒・現みちのくプロレス)の「お前らはよくやった。胸を張って引退しろ」という励ましの言葉に、気づいたら涙を流す自分がいた。「中栄先輩に認めてもらえたのがうれしかった。信頼していたし、目標だった。先輩は俺にとってのスターだったから」(尾川主将)。
自分は主将としてしっかりやってこられたのか不安もあっただろう。その不安を吹き消すかのようなスターの励ましに、涙せずにはいられなかった。
また1年生は言う。「尾川主将は人がいい。ついていきたくなる魅力がある」。
尾川主将もまた誰かのスターとなって引退してゆくのだろう。
最後に尾川主将はともに1年間戦ってきた仲間にコメントを残した。
1年生へ「3つも年が違えば、もう後輩というよりかわいい子たちという感じ。同期同士仲のいい代だから、同期を大切に。最後まで一生懸命やり続けることができたら、4年後何か見えてくるものがあるはず。心を折らずにがんばれ」。
2年生へ「人数は少ないけどプレーでの活躍に期待している」。
3年生へ「本当に“後輩”と感じたのは(年齢が)1つ下の3年生だけだった。3年生は一生懸命ついてきてくれた。最初はあまりだったが、徐々にやってくれるようになった。自覚を持ったのかもしれない。その自覚を大切にしてほしい。誰よりも自分に厳しくやっていたらみんなついてきてくれる。3年生全員で部をまとめていってほしい」。
そして同期へ「俺といっしょにいてくれてありがとう。楽しい時間を、本当にありがとう」。
2009年の拳法部には確かに尾川主将がいた。その発言は自信に充ち溢れていて、聞いているこっちが恥ずかしくなるほど。それでもこの人ならやってくれるかもと思わせる何か大きな魅力がある。時に他人に厳しいが、常に自分に一番厳しくあるからこそ、部員に慕われ、尊敬されてきた。
2010年の拳法部にもう尾川主将はいない。しかしそれは、拳法部の終わりではない。新主将加茂(政経3)の下でまた新たな戦いが始まる。明大拳法部修練の日々は続く。
最強の称号を手にするその日まで……。

尾川主将(左から三番目)と主将を支えた同期たち
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