
(12)後輩に託した〝100勝〟への思い 名門率いたエース左腕 市岡奏馬インタビュー【後編】

夏の甲子園100回記念特別企画。第6弾は、市岡奏馬投手(情コミ2=龍谷大平安)のインタビューをお送りします。史上最多・春夏通算74回目の甲子園出場を決め、通算100勝に王手をかける龍谷大平安高。主将としてチームをセンバツ4強に導き、勝利数を99に伸ばした市岡選手に、甲子園や母校への思いを語っていただきました(この取材は7月29日に行ったものです)。
――主将時に1年生だった代が活躍する姿を見て特別な思いはありますか。
「自分が直接関わっている中では最後の代なので、やっぱり思い入れは強いですね。エースの小寺(智也)は1年次の夏からベンチ入りしていましたし、同じ投手としても関わりは多くて。投球とかを見ても『年々成長しているな』と感じますし、チーム状況も良さそうなので、何か成し遂げてくれるんじゃないかなって期待しています」
――原田監督も、今年度は先陣を切ってチームの雰囲気づくりに努めているようです。
「チーム状態の良さの表れですよね(笑)。技術が間に合っていないチームには、監督はあんな声掛けはしないと思うので、チームが仕上がっているんだと思います。自分たちの代からは『お前らは甘々な世代やから』と言われていたので、監督なりの工夫かなと。自分たちからしたら、あれはあれで逆に怖いですけどね(笑)。厳しいイメージだった人が、内心何を思っているんやろって(笑)。自分たちの代であれをやってほしかったかって言われたら、また別ですけど(笑)。でも、ああいうやり方も1回味わってみたかったですね。楽にできたかもしれないです(笑)。代によって色があるので、今のチームには合っているんだと思います」
――チームにルーティンなどはありましたか。
「『サイキアップ』といって、試合前にベンチの前で円になって体をほぐした後に『せーの! 1、2、3、4……!』って全員で声を合わせて10まで数えます。気持ちが高ぶりますし、チームが一つになりますね」
――100勝目を懸けた100回大会である今大会、今年4月に他界されたOBの衣笠祥雄氏に活躍を届けたいということもあり、龍谷大平安高が今夏にかける思いはひときわ強いと思われます。市岡選手としても感じるものはありますか。
「いろいろな記事を読んで、衣笠さんや平安に対する原田監督の思いの強さを改めて感じましたし、チームとしてもこの夏にかける思いは相当強いと思います。6月下旬、夏の大会が始まる1週間ほど前に帰省して、練習を見にいった際にも『ものすごく気合いが入っているな』と感じました。甲子園出場を果たして、自分のことのようにうれしかったです」
――高校3年生にとって夏の甲子園というのは、やはり特別な思いがあるのでしょうか。
「自分の代は行けていないので何とも言えませんが〝夏の甲子園〟の空気を感じてみたかったという思いはあります。監督も『夏の甲子園はいいぞ』とよくおっしゃっていたので、そこを経験できなかったのは高校生活での心残りです」
――OBとして、戦いを控える後輩たちにメッセージをお願いします。
「1回勝てば100勝なので、そこはあくまでも通過点として、日本一を目標にやってもらいたいです。自分も現役時代はそこを目標にやっていたので、100勝を達成して日本一になって、最後の夏を最高の思い出に変えて、笑って終わってもらいたいです」
――最後に、市岡選手にとって、龍谷大平安高にとって甲子園とは。
「高校野球をやっている以上全員が夏の甲子園を目指しているので、センバツベスト4になったとはいえ、自分にとっての甲子園は〝憧れ〟ですね。子どもの頃から試合を見にいっていましたし、あの舞台に立ちたいと思って平安に入学したので、その思いは春出場していても変わりません。龍谷大平安にとっての甲子園は〝使命〟ですかね。全国最多出場校として、出場して当たり前、結果を出して当たり前だと思われていると思いますし、自分たちもそう言われ続けていたので。出場回数が全てだとは思いませんが、記録が伸びてうれしく思いますし、母校を誇りに思います。これからもつないでいってもらいたいです」
――後輩たちの活躍が楽しみですね。お時間をいただき、ありがとうございました。
[谷山美海]
◆市岡 奏馬(いちおか・そうま) 情コミ2、龍谷大平安、180センチ・78キロ、左投左打、投手
史上最多となる春夏通算74回の甲子園出場を誇る名門・龍谷大平安高の第108代主将。高校3年次はエースとしてチームをセンバツベスト4に導き、母校の甲子園での春夏通算勝利数を99勝とした。夏の最高成績は高校1年次の甲子園出場。 取材当日はラフな服装で取材場所に訪れた市岡。撮影もあると知ると急いで自室に戻り、〝H〟と書かれたシャツに着替えて再登場。「法政ではなく、平安の〝H〟です」と説明してくれた。
市岡選手の母校・龍谷大平安高は8月11日(土)に鳥取城北高との初戦を迎えます。熱戦にご注目ください。
次回の夏の甲子園100回記念特別企画は、佐野悠太外野手(商4=広陵)と喜多真吾内野手(法3=広陵)による広陵高OB対談です。お楽しみに。
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