(59)東大戦事前インタビュー② 渡辺向輝投手、中井一心アナリスト

2025.09.19

(この取材は8月28日に行われました)

渡辺向輝投手
――昨季を振り返っていかがでしたか。
 「春のリーグ戦は結構いい試合になり、野球にはなっていたのですけれど、普通に実力差があって力負けしてしまったなというふうに感じています」

――昨季5試合登板して見えた自分の強み、課題を教えてください。
 「自分の強みは、試合をつくることはもう確実にできるようになったのかなというのはあって、試合を崩さずに5回2、3失点以内には収められるというのは強みなのかなと思います。出てきた課題としては、東大が先制できない中で相手に先制されてしまう、その詰めの甘さみたいなところが自分の課題みたいなところかなと思っています」

――春のインタビューでは目標として完投を挙げられていた中で、早大1回戦と明大1回戦で完投されました。完投することに対する意識はありますか。
 「意識があるというよりかは、後ろを頼めるリリーフがいないというのが現状だったので、自分が投げるしかないという思いで投げていました」

――昨季明大1回戦に登板し9回2失点、昨秋も8回無失点と明大に対して好投していますが、意識されていることはありますか。
 「いや、何か特に対策をしているわけではないのですが、すごくいい打者が多いので、ちょっと(タイミングを)ずらして抑えるというのがやりやすいなというふうに感じています」

――侍ジャパン大学代表候補合宿に参加されましたが、そこで得られたものはありますか。
 「すごくレベルの高い野球を間近で見ることができて、得られたものとしては、リーグ戦以上の野球を見たのが初めてだったので、自信をつけたといえばあれですけど、リーグ戦で今まで感じていた怖さみたいなのがなくなったかなというふうに思っています」

――候補合宿が終わった後のコメントとして、(侍ジャパン大学代表候補の選手たちは)東大よりも野球の頭を使える選手が多いという話をされていましたが、それの真意を教えていただいてもよろしいでしょうか。
 「頭の回転が速いというか、車の運転に近いと思うのですけれど、その場その場で判断しなければいけない。野球の中でその場その場の判断をするときに、東大の選手だと瞬時にした判断が間違えていることがざらにありますが、他大の選手はそこが正確です。例えばランナー出ているからあっち投げようと言って投げたら、東大だったらフィールダースチョイスになってホームに返ってきてしまうとか、なんかぐちゃぐちゃになってしまうのですけれど、そういうことがないという意味で瞬時の判断の精度が高いというふうに経験を積んでいるというのもあるし、普段から考えているのもあるんだろうなというので、そこをすごく感じました」

――春のリーグ戦が終わってから秋のリーグ戦に向けて取り組んだことを教えてください。
 「東大が先制するまではなるべくリスクを取らない配球をしようというのはすごく練習していました。なので、今までだったら簡単にフライアウトで打ってもらっていましたがそれが長打になって先制されると困るので、結構狭い配球にはなってしまいますが、ゴロを打たせにいく、リスクを負わない、東大が先制するまでリスクを取らないというのをすごく練習してきました」

――明大に対してどんなイメージを持っていますか。
 「野球エリート集団みたいな感じで、イメージとしては全体として整っている感じがします。みんなが同じ方向を向いていて、同じチームバッティングをしているなというような印象がすごくあります」

――渡辺投手は明大1回戦に登板されることが予想されていますが、意識されていることはありますか。
 「多分むしろ明大が開幕戦で緊張してガチガチになっていたりすると思うので、そこが狙い目かなと思っています」

――明大の選手で警戒している打者はいますか。
 「小島(大河捕手・政経4=東海大相模)選手が一番怖いですね。ホームランもあるし、逆方向に長打も出るので、一番アンダースローの敵みたいな打者だと思います」

――東大の選手の中で明大戦での活躍を期待している選手はいますか。
 「大原(海輝外野手)ですね。ストレートを打つのが上手なので、明大の投手はみんな球が速いですけれど、それを打ってくれるんじゃないかなと思っています」

――最後のシーズンとなる今季の目標を教えてください。
 「チームとしての目標はもう勝ち点を取ることですね。個人の目標は、勝ち点を取る試合で投げていたいです。自分が投げている試合で自分が勝って勝ち点を取りたいです」

――ありがとうございました。

中井一心アナリスト
――アナリストの仕事内容を教えてください。
 「メインとしてやっていることが主に二つあります。一つ目が練習のデータの収集や補助で、イメージとしては高校野球のマネージャーが比較的近いのかなとは思います。その中で違う点としては、ラプソードといった比較的高価な機材とかも使ってデータを取らせていただいて、それをフィードバックしている点が違いになっています。もう一つが試合データの収集で、試合を間近で見ながら試合データを取り、フィードバックしたり集計したりしています。リーグ戦だとトラックマンという機材が球場にあり、それにより自動でデータが収集されるようになっています。また練習試合だと、ラプソードを相手チームの許可が取れたら置かせてもらっていて、それで打球や投球のデータを取っています」

――守備の極端なポジショニングに対してアナリストがアドバイスすることはありますか。
 「実は東大のアナリストは作戦や分析にはあまり介入していなくて、あくまで資料を出すというのがうちのチームでのアナリストの役割で、分析はどちらかというと捕手をはじめとした選手が中心となっています」

――自分たちのデータが役に立ったと思える瞬間はありますか。
 「先ほど話した守備シフトですね。考えたのはもちろん選手ですけれど、それを作るための資料というのは自分たちが作っているので、守備シフトのおかげで安打性の当たりがアウトになったときにはすごく報われたなと感じます」

――東大ではアナリストの方が投手の投球映像を用いたVRを制作していますが、そのきっかけを教えてください。
 「自分は開発者ではないのですが、東大の選手は高校までの経験の面で他大に圧倒的に劣っている中で、いいピッチャーの球を見られるのがいい練習になること、あとは対策という面でも球筋を見て試合に入れるのかどうかというのには差があるのではないか、ということが制作した要因だと聞いています」

――アナリストが様々なデータ分析を行うことによって、選手からどのような評価をもらっていますか。
 「よく言われるのは、やはり出せるデータの量や幅が専任のアナリストがいることによって多く、広くなっていると言われます」

――他大学と比べた時にデータで見た東大の特徴を教えてください。
 「他大学と比べた時に課題として出てくるのが投手では球速、野手では長打力という意味でパワーですね。パワー面は圧倒的に他大学が上だとは思います。ただこれを裏返したような話ではありますが、戦力的に差があるからこそ極端な守備シフトを敷いてみるなど、大学野球において奇抜と言われることができるのは東大の強みだと思っています」

――今季期待している選手はいますか。
 「同期というのもありますが、堀部(康平内野手)に注目しています。パワー面ではどうしても劣っていると盗塁とかでチャンスを広げることが必要になると思っていて、そういうことができるというのが堀部の強みだと思っていますし、そういうところですごく期待しています」

――明大の特徴を教えてください。
 「第一に先ほど述べた意味でパワーがあると思います。あと毎年そうですが、投手陣の厚みは本当にすごいなと思いますし、個人的には東京六大学の中で一番厚みがあると思っています」

――明大で警戒している選手はいますか。
 「小島さんです。東大の勝ち筋を考えた時に、打ち勝つというのはやはり苦しいものがある中でロースコアが必須になると思っていますが、やはりホームランを打たれると無条件で点が入ってしまいますし、長打力を持っている小島選手というのは警戒しなければいけない選手だなと思っています」

――今季の目標を教えてください。
 「チームの目標は、ずっと言われていることではありますが勝ち点獲得、最下位脱出ということです。アナリストとしての目標は、今年の代になってからずっと『アナリストW A R1.0』という言葉を言っていて、平たく言えばアナリストの力で1勝分増やそうということはずっと言っているので、今年の代の集大成となる秋のシーズンではこれが目標です」

――ありがとうございました。

[尼子雄一]