(45)秋季リーグ戦前インタビュー 田中武宏監督

2024.09.11

(この取材は8月22日に行われたものです)

田中武宏監督
――夏の高森キャンプは振り返っていかがでしたでしょうか。
 「今回は一切雨がなかったので、ずっと外で練習できました。全員で量をこなすっていうのはできたと思います。天候で練習メニューが変わることはありませんでした」

――秋の構想について伺います。二塁の木本圭一内野手(政経3=桐蔭学園)に関してはどう評価をされていますか。
 「木本は後から分かったのですが春は右手を疲労骨折していたようで、そんな中でも1シーズンやり切れたのは良かったと思います。夏は十分休養と治療をした上でずっとフルでメニューをこなせていますし、野手の中では一番順調に来ているのかなと思います。守備に関してもうるさく言い続けてきたのですが、最近は多少粘り強さが出てきたかなと見ています」

――夏のハーレムベールボールウィークなどで大学日本代表の4番を務めた小島大河捕手(政経3=東海大相模)の打順に関して、春は5〜7番を務めましたが打順を上げることは想定されているのでしょうか。
 「まあそのあたりでしょうね。変に天狗にならなければ良いのですがね。キャッチャーなのであまり打順は上げたくありません。小島が7番くらいにいるほうが相手は絶対に嫌だと思うんですよね」

――ここまで上位打線は1番・直井宏路外野手(政経4=桐光学園)、2番・飯森太慈外野手(政経4=佼成学園)の形が固定されていますが、起用意図を教えてください。
 「脚力の観点です。経験値というのもあります。ただし、いい選手から出していくという考えは変わりません。秋は下級生に機会を与える場面もないまま終わってしまいましたが、今は外野の4年生3名の状態が上がっていないので総替えになる可能性もあります。実戦で今一番結果を出しているのが1年生の田上(夏衣外野手・商1=広陵)で、脚力ということで言えば田上や榊原(七斗外野手・情コミ2=報徳学園)も使えます。ただ田上も守備は全く足りません。『ああやって打球に合わせた取り方をしてると(頭を)越されるぞと』と言っていたらこの前越されましたし、今外野手の中で反応の良さなどで信用できるのは直井と榊原だけですね」

――流動的だった一塁、三塁のポジションは宮田知弥内野手(商3=横浜)あたりが候補になると考えられます。
 「宮田は守りに課題があるんですよね。守備なら1年生の磯(圭太内野手・情コミ1=作新学院)のほうが良いです。守備重視でやるというのは選手も分かってくれているとは思います。(内海優太内野手(商2=広陵)も復帰したと伺いました)内海も間に合えばなとは思っています。膝のケガの後で箇所が箇所なので、良くなって悪くなっての繰り返しです。ですが学生コーチからの助言もあって、B戦から少しずつ使っていく予定です」

――投手陣では大学日本代表にも選出された髙須大雅投手(法3=静岡)が中心となると見て良いのでしょうか。
 「大学日本代表の海外遠征があったのであまりあてにせず、10月からで良いかなと思っていました。体重が5キロ減ったと聞いています。オープン戦もまずまずですね。ああ見えてコントロールは良いですし、出力が出るのは分かっていますよ」

――春は1年生の出場がありませんでしたが、秋はいかがでしょうか
 「4年生優先ということはなく、成績を出した選手から出していきます。春1年生を誰も使わなかったのは自分が監督になってからでは初めてです。なので1年生には『思ったより君らおこちゃまだわ』と伝えました。春の時点では大学生としての自覚が全然で、今の2〜4年生が1年生だったときと比べても全くの子供でした。『神宮は子どもの遊び場じゃないし、だから出さなかったよ。そう思ったら行動が変わるはずだから』と言っています。萩(宗久外野手・商1=横浜)なんかは非常に期待できる一人で、逆に3年で『何をやってるんだ?』という者もいるので、それだったら下を使います。A戦も大量に下級生を詰めて、あまり成長が見られない者はBの方で行かせて、とあからさまに分かるようにやっています。今の外野陣の優先順位で言うと3年→2年→1年ではなく、1年→2年→3年です。競争で、結果の世界なので、誰かを特別視するということはありません」

――ケガから復帰した宗山塁主将(商4=広陵)についてはいかがでしょうか。
 「打つ打たないは関係なしに、あいつの守備を見れば『これは宗山しかできないな』という場面が多くあります。そこが評価の対象で、そこでチームを救ってもらうというのが一番期待しているところです。打つ方は変に(打球を)上げようとしなかったら良いですね。ケガする前は何を目指してるんだ、という感じだったので『上に上げようと思ったらどんどん崩れるよ』というのは言いました。ホームランを打つバッターではないですから。そう思ったら最近はフリーバッティングでもだいぶボールを抑えにかかっているような感じなのでまあ良いんじゃないかと思います。(春のシーズン中のオープン戦で骨折をした際は、チームとしてそのことを明らかにしませんでした)みなさんに偉そうに言う話でもないですし、それを言われたら本人としても恥ですよね。『ショートライナーで骨折?何やってんの?』ってね。本人だけじゃなく全員の前で上半身のコンディション不良で通すからこれ以上喋るなと伝えていました」

――就任5年目を迎えますが、部に対して残せたものや実績についてどうお考えでしょうか。
 「良いか悪いかは第三者が判断するだけですが、学年ごとの温度差や就活生とユニホームを着る選手の温度差は年々なくなってきているとは思います。就活生に対しては就活に行くのであれば事前の申請、後の報告というのは義務にしています。そして決まったらチームに貢献すること、練習で少しバッティングピッチャーをやって終わりとかそういうのは絶対無しだと言っています。選手としてやるのであれば、当然同じように練習メニューに入ってもらいます。今2人学生コーチの補助に手を挙げてくれた者もいます。贅沢を言ったらきりがないですが、そこは変わってきたと思っています」

――夏季は指導と高校生の視察でご多忙だったと伺いました。
 「視察は年中ですね。戸塚(俊美)助監督と福王(昭仁)コーチが必ず常勤でグラウンドにいてくれる安心感が大きいです。夏の甲子園はカード関係なしに、キャンプ終わりの8月12日、13日で行きました。夏はもう高校3年生は決まっているので1、2年生を見ていますね。その中で気になった選手については学業はどうか、家庭はどうかと調べていきます。甲子園は12球団のスカウトの方との情報交換の場所という面もあって、スカウトの方々は、春は仲が良いのですが夏は少し距離を取っているように見えるんです。僕はその間に入っていきます。大体向こうが聞きたいのは宗山の状態や浅利(太門投手・商4=興国)がどうか、志望届は誰が出すのか、あとは3年生は誰が決まったのかということなどです。逆にこちらは例えば九州に気になっている選手がいたとして『〇〇は予選はどうでしたか』と。『〇〇は2年生ですけど家庭の事情で進学は無理です』とか『勉強はあまり得意ではないようです』といった回答をもらうこともありますね。これも甲子園に行く目的としてあります。遠いところの視察は僕が行って、ピッチャーなら西嶋(一記コーチ)、関東近辺なら福王や戸塚助監督に『この子を確認してきてくれ』と分担します。鈴木(文雄)コーチにも行ってもらったこともあります。それをみんなで話しながら決めていきます」

――この秋は田中監督にとっても大事なシーズンになりますが、どんな野球をしたいとお考えですか。
 「やるのは、演じるのは選手なので、その舞台を演じやすいように用意するだけです。春は自分たちから勝ち星をあげたようなものですから。やっぱり勝たなきゃいけないですね。早稲田さんとは終盤に当たりますがそこを意識することなく、まずは21日の東京大学との試合が一番大事なので、内容関係なしにとにかく勝てたらと思っています。3連覇をやってしまったという言い方は変ですが、勝って当たり前というプレッシャーはあります。正直に言って、これだけの素材の子たちを集めているのですから責任を取るのは監督です。誰が出ても勝てるように、我々らしい野球をします」

――ありがとうございました。

[上瀬拓海]