(36)春季リーグ戦後インタビュー 田中武宏監督

2024.06.15

(この取材は6月9日に行われました)

田中武宏監督
――今季を勝ち点4の2位で終えました。
 「故障者が多かったということはあります。試合に出る出ないに関わらずチームに故障者がすごく多かったので。このような状況は初めてで当初の予定とはかなり違ってきた感じがありました」

――犠打成功数の1試合平均はリーグトップを記録しましたが、今季も以前までと同様に犠打を多用する手堅い戦術で戦いました。
 「基本的に毎年変わっているつもりはありません。確かに相手が(犠打を)やってくる場面が少ないなというのは感じていました。まあ確実性ですよね。選手をそこまで信用していないので。他大学の監督さんは選手のことを打てると信用していたのだと思います」

――今季を簡単に振り返ります。まず開幕戦の東大1回戦では開幕投手の藤江星河投手(政経4=大阪桐蔭)が2回で降板することになりました。
 「アクシデントですね。腰に違和感が出たということで変えざるを得ませんでした。オープン戦で結果を出したので安心したのか分かりませんが、考えられないですよね。これで秋の背番号に関しては全くの白紙で。今の状況ではとてもじゃないけど4年生にはつけさせられないというのが正直なところです」

――早大戦では全体的に投手陣に不安定な部分がありました。
 「墓穴を掘っての負けですよね。普通にやれば勝機はあったと思うのですが。浅利(太門投手・商4=興国)に関しては元々そこまでコントロールが良い方ではない子なのですが、自らのバント処理でああいう風に点を与えてというところで流れが本当に悪かったのでその後の3カード目からはガラッと布陣を変えて戦いました」

――後がない早大2回戦では先発にリーグ戦初先発の髙須大雅投手(法3=静岡)を抜てきしましたが、起用の背景を教えてください。
 「東大戦や早稲田戦で制球力の欠如という課題が露骨に出ていたので、じゃあ誰がストライクを取れるかとなれば髙須でした。本人には初戦を落としたところで伝えました。(以降カード初戦の先発を務めた髙須投手ですが、中1日で3回戦に先発起用することは今季ありませんでした)体力不足の子ばかりですから。そこまでタフなのは一人も居ないので。だから今季完投がなかったのは東大さんとうちだけですよね。中1日で投げさせてもへばってるので。早稲田さんはそうせざるを得ない陣容の中で選手がタフに戦っていましたが、うちは取っ替え引っ替えでやってなんとか最後まで走り切れたかなという感じです」

――立大戦では1回戦で逆転負けを喫した後、宗山塁主将(商4=広陵)から田中監督に打席でのアプローチを改善する指示を出すよう直訴されたと伺いました。
 「そうですね。宗山が相手の嫌がることをしろというので、じゃあベースにつけと指示をしました。全員バッターボックスの白線を踏めと僕が言いました。そこをやらない選手は試合には使わないからと。それが今チームとしての決め事になっています」

――慶大2回戦では1点差に追い上げられた9回裏に松本直投手(情コミ2=鎌倉学園)が登板し逃げ切りました
 「髙須に並ぶくらいの制球力はオープン戦から見せてくれていました。あの場面で四球を出したりされるのはとにかく嫌だったので浅利ではなく松本を起用したのですが、よく期待に応えてくれたと思います。コーチ陣とも話した中で、この夏は髙須、松本直、毛利(海大投手・情コミ3=福岡大大濠)の3人の一本立ち、1試合を任せられるようにしたいと構想しています。ただ彼らもやはり体力不足です。例えば毛利にしても3カード目は疲れが見えました。週1回、70〜80球投げたくらいでそうなっているようでは物足りないですよね。そうなれば練習でもそれなりの量をやらないといけません。全員にやれと言ってもそれは無理なので、となればこの3人を中心にと今のところは考えています。それを見て4年生がどう思うかですよね」

――1番の直井宏路外野手(商4=桐光学園)は今季、打席での内容が大幅に良化しました。
 「まあようやくですよ。宗山は休んでいるのでリーグの現役の選手で一番出場数多いのが彼です。それまでにどれだけ時間がかかったか。高い授業料だったなと思います。それだけの経験をさせてもらったのですから、僕から言えばあれぐらいやって当然です。まだ足らないくらいです。(守備力に秀でた直井選手を中堅で下級生から起用しています)そうですね、足が速くて肩の強い選手はもちろん居るのですが、外野の守備はもうセンスなので。『あー取れるね』っていうのと『あー取れなかったね』っていう違いです。山内(陽太郎外野手・法4=米子東)なんかをオープン戦でセンターを守らせたりもしますが『あれ、直井とかなら取っていたよね』というケースが何度かありましたから」

――試合中はベンチで常に明るい表情をされているのが印象的です。
 「どうでしょうね。怖い顔をしたら良くなるっていうならするのですが。言い方は悪いかもしれませんがたかが野球だからと。されど野球、ではあるのですがそんなに眉間にしわを寄せていたら体が悪くなりそうなので笑っていようと思っています。(マウンドへの行き帰りも素早いように見受けられます)あんなところ長く居ようと思わないんですよ。見せ物になっているような気がするから早く戻ろうといつも思っています。でもそうしたら最近他の監督さんも速いんだよね。意識しているなっていうのは見てて分かりますし、僕の動きが速いっていうのは絶対耳に入っていると思いますよ、聞いたことはないけど(笑)」

――生活面での指導も徹底されていると伺いました。
 「指導というか、当たり前のことです。今日も問題になったのがある部屋が施錠されていなかったと。鈴木(文雄)コーチが遅れて練習に来たときに、誰も居ない部屋の扉が開いてたと怒っていましたがこれはそんなに難しいことではないですよね。そんなことばかりです。一歩外に出たらみんなに見られているということです。最近も自転車の乗り方が悪かったと苦情が来ています。それが1年生だと分かったので1年生は当面自転車の使用禁止。23日に府中警察の方に来ていただいて1、2年生対象の交通安全教室をやります。毎年のことですが今年は遅れたので、1年生は大丈夫かなと思っていたら案の定、近所の方から学校に『見慣れない顔だから1年生だと思うんだけど並走していて非常に怖い』と。そんなこと言われなくても分かるだろという話ですが、分からないなら分からせるだけです。『自転車は当面禁止で歩いて行ってください。時間がかかるなら早く(練習を)上がらせてやるから』という感じです。ここにいる間はうるさいなと思うかもしれないけど、最後は感謝して出ていっているやつもいるのでね」

――食事・栄養面ではどんな取り組みを行なっているのでしょうか。
 「契約しているのがシダックスさんなので。栄養面はしっかりと管理をしていただいています。試合がある日の食事の取り方でもメンバーとメンバー外の選手で違いますし、スタメンとそれ以外でもまた違います。これだけいたら人によって意識の差は出ると思いますが、それは自分に跳ね返ってくるところです。『人からこうしろと言われてやるだけでは身にならないよ』と常々言っています」

――来季は監督として1年生から見てきた選手たちがラストシーズンを迎えます。
 「それぞれ社会に出ていくわけなので、思い通りの進路に進んでもらえたら良いなというのはありますね。この代はスカウティングの責任者として任された第1号の代なんです。それまでもコーチ時代から善波(達也前監督)の下でやってはいましたが全責任が僕になるのでそれは違ってきますよね。(近年は的確なスカウティングが目立ちます)勉強重視ですからね。大学側から『評定平均〇〇以上』と指定されていますし、最近は特に英語に関してうるさくなってきているなと感じます(笑)。気になる子には話をしに行って、しっかりと確認をしています。(毛利投手の勧誘のために何度も九州にスカウトに行かれたと伺いました)何度も行きました。プロも少し意識していたけども、まだ早いよと。とにかくこの秋は彼らにいい思いをさせてあげたいなと思います。早稲田さんにもやり返しますよ」

――ありがとうございました。

[上瀬拓海]