
(13)春季リーグ戦開幕前インタビュー 田中武宏監督

(この取材は3月2日に行われました)
田中武宏監督
――まずは今季の布陣についてお聞きします。昨秋まで4番を務めた上田選手(令6国際卒=現ロッテ)の穴を埋める4番打者がポイントになると思われます。
「それはおっしゃる通りで、3番が宗山(塁主将・商4=広陵)なので怖いバッターを置くのが良いのか、嫌なバッターを置くのが良いのか。誰が打つかは決まっていないので、相手を見ながらですね」
――競争の激しい二塁のポジションはどの選手が入るのでしょうか。
「今使えるめどが立ったのは友納(周哉内野手・文2=福岡大大濠)、木本(圭一内野手・政経3=桐蔭学園)、津田(基内野手・文2=近江)あたりですね。ここは守備優先で。若い選手がハマってくるかと思います」
――3番に入る宗山主将は1年前から主将に内定していたと伺いました。
「いやもう面談をするところで、希由翔(上田選手)がキャプテンやり出した時期だったので、迷いなく『次お前』と自然に。希由翔と同じ部屋でしたし、あいつもまだ完璧ではないので早めに伝えました。どんな形であれ、チームのために働いてもらいたいです。勝率に貢献してもらいたいですよね」
――中堅に入る直井宏路外野手(商4=桐光学園)と榊原七斗外野手(情コミ2=報徳学園)が共存する布陣は想定されていますか。
「榊原がちょっとケガしちゃったんで。飯森(太慈外野手・政経4=佼成学園)にセンターをやらせる場合もあります。両翼はいくらでもいるので、センターというポジションで言えば飯森、直井、榊原ですね。榊原はケガの回復具合にもよるんだけど、打つ以外の守備走塁の面でもどうしてもあの子の力は必要になってきます」
――打順に関して、2番は監督の個性が出る打順ですがどの選手を起用しますか。
「できれば右打者を置きたいですね。例えば一塁ランナーが飯森だとして、右打者だったらあいつの動きを見やすいので、そういう選手を求めています。スタートが良いと思ったら見逃す、悪いと思ったらファールで逃げるとか。できない子はできないけど僕はできたので。できない子に言っても仕方ないですが『それできないと上行けないよ』と個別で言うことはあります。できる選手が出てくるかどうか。出てこなければ左打者でもできそうな子を使って、という感じですね。(打順は極力固定する方針でしょうか)そりゃ考えたくないもん(笑)」
――昨秋を振り返ると、全体感としてリーグ戦後半に進むにつれ打線の状態が下がっていった印象があります。
「これはね、年間通じてそうでしたね。やっぱり夏場の過ごし方ですよね。秋前に村田(賢一投手・令6商卒=現ソフトバンク)が肩の違和感が出たのと一緒で、振る量が春に比べて落ちたし、体づくりの点で弱さが出ました。持たなかったと。数字で明らかに出ていたので、去年の11月に新チームになった時からウエートトレーニング重視、ランメニュー重視と口酸っぱく言ってきました。その結果、11月のウエートの数値と今年の2月末に測定した数値を見たら明らかに上がってきているので、そこは評価しました」
――投手陣に関してどのような構想をお持ちですか。
「先発は藤江(星河投手・政経4=大阪桐蔭)、浅利(太門投手・商4=興国)、久野(悠斗投手・商3=報徳学園)、髙須(大雅投手・法3=静岡)、毛利(海大投手・情コミ3=福岡大大濠)かなと思っています、タイプとしては。(藤江投手はリーグ戦の経験もあり重要な役割を担うと思われます)期待するボールは投げているけどもあとはどれだけ球数をどれだけ投げられるかですね。『5回くらいで降りられたら務まらないよ』と本人にも伝えています」
――続いてスカウティングについて伺います。まず今年度は豊田喜一捕手(法1=長崎日大)、佐仲大輝捕手(商1=山梨学院)、高橋慎捕手(文1=大垣日大)と3名の捕手が推薦入学で加入しました。
「キャッチャーがいないので。相対的に頭数が少ないので。ピッチャーがいくらいても、受けるキャッチャーが足りなければ練習になりません」
――広陵高出身の選手が入学することが多いですが、今年度も田上夏衣外野手(商1=広陵)が入部します。
「広陵の子はしっかりと中井先生(哲之広陵高監督)に教育されていますし、手がかからないですよね。その上こちらのシステムを理解していただいているので、こちらが『この選手はどうですか』と言った時も『こいつは勉強が得意じゃないから明治さんでは無理ですよ』とか『ちょっとだらしないところがあるから明治さんでは無理ですよ』とはっきり言っていただけます。これまで広陵からこっちに来て何人もほぼ成功しているので。まあどことは言わないですけど、ここは伸びないなというケースもたくさん見ているので、そういう事情もあります」
――林謙吾投手(政経1=山梨学院)は例年の傾向とは違い、制球力や投球術に特色があるタイプだと思われますが、彼についてはいかがでしょうか。
「2年秋の神宮大会(明治神宮大会)で見たときは全然印象に残らなかったのですが、一冬越えて2月に向こうからバッテリーで練習参加を申し込んでいただいて、そこで見た時に『あれ?高校生ってこんなに変わるんだ』と。まさか選抜(選抜高校野球)で優勝するとは思っていませんでしたが、その伸びを見た時にこのバッテリーは良いなと感じました。佐仲も含めて2人とも学校の成績もかなり良かったので問題なかったですね」
――スカウティングで重視するポイントを教えてください。
「勉強です(笑)。まあピッチャーは西嶋(一記投手コーチ)に任せています。僕が候補を並べて『どうする?』という感じで。あとはいろいろなことを調べます。性格や学校の成績も非常に重要ですし、スポーツ推薦の基準も大学から言われていますからタイトにやらなければ学校の方にも迷惑がかかります。そもそも野球だけやりにくると思っていたら大間違いなので、そんな考えだったらご縁がないと思ってくださいという感じですね。あまり甲子園の結果なんかはあてにしていませんし、その人を見てあとはチームの補強ポイントが右なのか左なのか、あとは走力はどうだろうかといった具合に見ていきます。1回見て決めるということはなくて、できるだけ多く見るようにはしています。あらゆる視点からあらゆる人にクロスチェックしてもらって決めていますよ」
――2月には田中監督自らプロ野球12球団のキャンプに足を運ばれたと伺いました。
「12球団選手がお世話になっていますし、唯一いない巨人さんも球団職員としてOBがお世話になっているので。キャンプに行った報告を選手にもしたのですが、ふるまいやあいさつなど野球以外のところを本当に評価していただいています。お世辞も込みとは思いますが、プロの方にも社会人野球の方にも評価をしていただいていると感じます。今も社会人の練習参加に行かせたりもしていますが、だからといって誰でも行かせるわけではありません。『行きたいです』と言われても『君は無理。外に出せない。理由は〇〇です』という感じではっきりと言っています。大学までは親がお金を払って行かせてもらうところですが、ここから先は行きたいから行ける世界ではないですよね。先方からこの選手もらえませんかと言われて行く世界なので、僕が推薦できないと思ったら『多少遅刻癖ありますよ』とか企業さんにもはっきりと伝えます。そうなったら先方も引かれますよね。社会人に選手を送りたくて『この選手は大丈夫です』とかそういうことは言いません。野球を続けるということは僕のフィルターを通ることになるので、嘘はつけません。取るのも慎重、送り出すのも慎重というのが僕の考えです」
――監督は競争をあおる立場になりますが、どのようなことを意識されているのでしょうか。
「例えば『ここの高校のこのポジションの選手を取ってきたということはこのポジションが弱いと思われているな』とか選手に分かるようにやっているんです。選手がマネジャーに『監督今日はどこに行っているの?』と聞いて『広陵』となれば誰だろう、といった具合です。そういう風に考えるのが普通だし、考えないようではいけませんよね。あとは今の時代怒るようなことはあまりありませんがしっかりメッセージは出しているつもりです。私生活や学校の成績も選択肢のひとつとしてあると伝えています」
――ありがとうございました。
[上瀬拓海]
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