(3)春季リーグ戦開幕前インタビュー 西嶋一記投手コーチ

2024.04.12

 

(この取材は3月13日に行われました)

――今季の投手陣に関して、浅利太門投手(商4=興国)は軸としての活躍が期待されます。
 「浅利の場合はまずストレートですよね。身長もありますし、そこから投げ込まれるストレートが一番の魅力ではないでしょうか。(昨秋はわずかに平均球速が落ちていたように見受けられました)彼の場合は昨年の春、3年生になってからデビューして、秋には勝ちゲームを任せられるように成長してくれたとチームとしても見ていました。そういった状況での緊張感であったり、求められる精度も高くなったと思うんですよね。その中でのスピードの変化、もちろん真っ直ぐだけでは抑えられないというのは本人も自覚しているのでそのあたりのコントロールの部分が要因なのではないかと思います。今季は浅利本人としても先発で行きたいという希望があって球数も投げないといけないという中で、今はカウントを作る、ゲームを作るという部分で試行錯誤をしているところだと思います。前のチームの村田(賢一選手・令6商卒=現ソフトバンク)あたりと比較される部分もあると思いますが、まずは彼のできるパフォーマンスをこちらも用意してあげたいと考えています」

――ケガから回復した大川慈英投手(国際3=常総学院)は昨秋リリーフとして定着しました。
 「大川は高校から大学に入った段階でケガというかちょっと不調な箇所があったものですから、そういったところの改善から入っています。大きく言えば体づくりですよね。強くすること、柔軟性を高めること。そこにプラスしてフォーム。そこをあの子はすごく一生懸命考えていて、それがいろいろな意味でマッチしてきた、それがひとつ結果になったのが去年の秋だったのではないでしょうか」

――今季のクローザーとしては千葉汐凱投手(営4=千葉黎明)、菊地竜雅投手(文4=常総学院)あたりも候補になってくると思います。
 「どうでしょうかね。大川もそうですし、千葉もそうですし、誰が後ろに回るか本当に分からないというのが正直なところです。ですが千葉や大川なんかは肩の作り方、ゲームへの入り方、体の準備などは経験があるので期待する部分はありますよね。菊地に関してはまだ本調子というか、オープン戦で結果につなげ切れていないところがあるのですがリーグ戦は長いので。ここぞというところで出てきてほしいとは考えています。(リーグ戦は)2ヶ月あるので開幕に全てを合わせる気はもちろんないですし、時間の流れとか時間の使い方を大事に、最終的に優勝という形が取れる最善の策を考えていきたいなと思っています」

――投手はケガがつきものと言われますが、選手運用に関してどのような方針をお持ちでしょうか。
 「うちは十数人もの多くの投手をワンシーズンで投げさせているところなどを見てもらえれば分かると思うのですが、本当にみんなでアウトを積み重ねていこうという考えがあります。若い選手に経験を積ませながら主戦になる選手がしっかりと軸となってやっていくというスタイルがここ数年の取り組みとしてあるので、それぞれが投げられる準備をすること。個人に任せる部分もありますが、うまく噛み合わせながらできているのではないかと感じています」

――続いてスカウティングに関して、投手は毎年スケールを重視した方針に見受けられます。
 「そうですね。高校の監督さんからお話をいただくこともありますしこちらからもお声がけさせていただくことも両方あるのですが、明治でやっていく育成とかも含めて環境に合っていくかどうかや、我々が選手に取り組んでもらっていることがブラスになるかどうかなどを踏まえてご縁をいただいている状況です。(今年度の推薦入学の投手では、身長180センチ前後の選手が複数そろいましたが、サイズの基準等は想定されているのでしょうか)いえ、特にそういったことはないのです。高校の監督さんから情報をいただいたりする中で偶然そのような状況になったのだと思います。例えば林(謙吾投手・政経1=山梨学院)は昨年度の選抜(選抜高等学校野球)の前ですかね。練習参加に来ていただいてその時初めてピッチングを見たのですが『あ、この子いいピッチャーになりそうだな』という印象を持って、その後大会をほぼ一人で投げ切ったような感じでした。投球術を持っている感じがあって、佐仲(大輝捕手・商1=山梨学院)と一緒にゲームを作っていくというところにすごみがあったのではないかと見ていました」

――チームとして14年連続ドラフト指名を受けていますが、プロを志望する選手にはどのようなことを意識させているのでしょうか。
 「指導論としては本当に自分でやるべきことを考えてというか、投球に関してもそうですし、試合までの時間の過ごし方も含めて、プロは個人経営者だという話はよくしますね。プロを目指す子にとっては自分にどう投資できるか、自己管理、自己プロデュースをどうするかが大事だと思います。これはあくまで僕個人の考えですが、明治をきっかけにというか、明治をステップにそこからプロや社会人など次のステップにつなげてもらいたいと考えていて、とにかく大きく羽ばたいてもらいたいです」

――昨年度のドラフト会議では、3選手が指名を受けた一方で蒔田稔選手(令6商卒=現JFE東日本)が指名漏れするという結果となりました。
 「何が足りなかったのかは分かりませんが、それはプロ野球側の話ですよね。向こうの都合に現時点で蒔田がそれに引っかからなかったというだけの話で、4年間で蒔田ができることはやったのではないかと思います。彼にとっては劇的に変わった4年間だと僕は思っていて、3年の春はあれだけの数を投げて、まさか本人もこんなに投げられると思っていなかったのではないかと思います。僕は2年の夏くらいから『お前しっかりやるぞ』と声をかけて時間を使いましたし、蒔田も期待に応えてくれました。4年間でピッチャーとしてやっていけるまで成長してくれたと感じています」

――現代の野球界では、球速一辺倒のような風潮が一部で存在していると思われますが、どうお考えでしょうか。
 「最近はSNSの切り抜き動画などもたくさんあったりして、そういったものを目にして質問をしてくださったのだと思いますが、重要なのはそういった表面的なところではなくて本質的なところですよね。『そもそもピッチャーって何をするポジションですか?』というところにもっとフォーカスしてできると面白いと思いますね。僕は選手にそういった接し方をしているのですが、結局ピッチャーの仕事ってアウトを取ることだよね、ということです。球が速いとかはあくまで一つの手段に過ぎません。実際自分も球が速い投手ではなかったですし、状況や環境、対戦相手だったりをいろいろなことを研究してどう抑えるかということを考えて初めてアウトが取れると思っているので、あまりそのような表面的なところだけを意識してほしくないですね」

――今季はどんな戦いをしたいと考えておられますか。
 「学生野球なので、対戦相手も含めて選手が毎年変わって違うチームになると思います。ですが彼らがどう成長できるか。彼らがどれだけ本気になってパフォーマンスする準備ができるかというところに尽きると思います。リーグ戦3連覇の最初の優勝だった一昨年の春もまさかあのスタッフで優勝できるところまでいけると思っていなかったですし、蒔田にしろ村田にしろ、あとは高山(陽成選手・令5文卒=現JR東日本)とかもそうですよね。選手たちがリーグ戦の中で成長したシーズンでしたので、そういった意味では浅利や藤江(星河投手・政経4=大阪桐蔭)あたりが成長した姿を見れると強いのではないかなと思います。これは野手も一緒で今は宗山(塁主将・商4=広陵)中心という感じになっていますがそうではなくて、成長したと言える選手が増えていけば良いのではないかと思います」

――ありがとうございました。

[上瀬拓海]