(110)大学野球引退インタビュー 熱田泰祐学生コーチ

2023.11.13

(この取材は10月28日に行われました)


熱田泰祐学生コーチ(営4=明大中野八王子)

――今季のリーグ戦は振り返っていかがですか。

 「春は、すごいチームがグラグラな状態でスタートして、試合をしていく中で、反省点見つけて、改善してを繰り返してのシーズンだったんですけど、この秋は自分の中では、完成形に近づけた上でスタートしたシーズン。それでも、それはどこの大学も一緒だったと実感しました。最後の一球を投げ切る、一本を出すというところができなかったのが悔しいです」


――「春はチームの状態がグラグラだった」。日々の練習からも感じていたのですか。

 「練習もそうですし、私生活とか、寮生活もつながっていました。就活生とかもいたので、全員が頑張って、優勝しようみたいな気持ちは、正直感じられなくて、メンバーの中だけだったんですけど、秋はみんな同じ方向でみんなで頑張ろうっていうのはできていたかなと思います」


――最終戦では、ノッカーもされたと思いますが、どのような気持ちでしたか。 

 「この大学は学生が打てないと思っていた中で、戸塚(俊美)助監督から『ラストはお前が打て』と言ってくださって、うれしかったし、緊張しましたね。(試合終わった後の、チームの雰囲気はどうでしたか)前日で優勝なくなってしまって、悔しかったと思いますが、 あと1試合やり切るだけっていうのをみんな言い合って、最後笑顔で終わろうと言ってたから、勝ててやり切ったというか、いい顔してたかなと思います」


――普段の練習のメニューは、どのように決められていますか。

 「学生コーチが5人いたので、まずめっちゃ話し合います。その上で、俺は選手の意見を大事にしたいから、希由翔(上田主将・国際4=愛産大三河)とかを呼んで、意見はもらっていました。(そこは選手ともコミュニケーションを取りながら)前までの学生コーチよりかはだいぶ選手と話したとは思います。(話そうと思ったきっかけは)俺が選手時代も、なんでこのメニューやんのかなって思うことがあって。そのまま流して、ただやるだけみたいな。その練習の意図を分からず、やっている選手が多いんじゃないかなって考えて、選手たちが感じている課題と、こっちが考えている課題をすり合わせないと意思疎通にならないので、話すようにしました」


――明大に入って濃い4年間になった一番のきっかけを教えてください。

 「一番は、やっぱり最後の1年間になると思いますね。学生コーチになってから、しんどくて、楽しかった1年間です。(しんどさはどういうところにありましたか)まず第1は、就活との両立。最後の1年は学生コーチをやっていて、他の就活生は色々休んだりしていたんだけど、俺は立場上休めないところにいました。もう1個は学生コーチになった以上、勝たせないといけないのが、役割。しかも3連覇が懸かっていたので。(最初は大変だと思います)やっぱりこっちがやってほしい練習の姿勢や雰囲気っていうのは、 選手がやってくれないとつくれない。結局やるのは選手なので、実現するためには結構難しかったです。色々話したり言ったりしてきました」


――学生コーチになったのはどのタイミングですか。

 「3年秋のリーグ戦ラストカードぐらいだから、10月の最後の週ぐらいですね。(どのような経緯で) 一つ上は4人学生コーチがいて。その4人が話し合った結果、何人かピックアップして、声を掛けられたって感じです。そこで了承しました。(どういう思いで引き受けた)マジで入学してからやりたくない役職だったから、もちろんしんどいし、文句も言われるし。いざ打診されてみると、3年間全く貢献できていなかったから『何をするためにこの部活入ったか』っていうのを考えて、チームに貢献して勝ちたいなって思った時には、この役職やるべきだなって思いました。(葛藤はかなりあった)選手兼任で学生コーチすることもできできましたが、やるからには、どっちか絞りたいなと思って。もし受けるなら、選手辞めることになるから引退を前に引退するみたいな。1年早く引退するっていうのは、ちょっと悔しいし。両親には選手で活躍してるところを見せたくて、支えてくれていたからこそ、親に相談したりして、めちゃくちゃ悩みました」


――学生コーチになった当初の理想像はありますか。

 「選手時代にBチームとかCチームの経験があるからこそ、いいところを見て、どんどんチャンスを与えてあげたいなっていう思いがありました。なので、多くの選手を推薦して、努力とか姿勢を評価できるような学生コーチだったりチームを目指していました」


――熱田さんから見て上田主将はどのようなキャプテンですか。

 「新チーム当初はそこまではあんまり口数も多くないタイプで。全員に対して希由翔がキャプテンとして言った方が聞くこと、学生コーチから言うことには違いがあると思っているんですけど、希由翔は、みんなの前で言うことを怖がるというか、嫌がっていて、それを全部俺に『ちょっと頼むわ』みたいな時がありました。でも2月のキャンプぐらいから自分がやんなきゃダメだって思ったのか、言うようになって。それがずっと姿勢にも表れてたし、俺も希由翔ばっかりに任せていたこともあって、細かいところまでしっかり言うキャプテンだった。言えるように変わっていったっていう感じですね。」


――田中武宏監督からも『史上最高の学生コーチ』と言われていましたが、いかがですか。

 「学生コーチが上に推薦した選手の活躍する場面が多くて、監督から『よくわかったね』と言われることは多かったです。あとは俺もBやCチーム出身だったからこそ、気持ちがわかるし、仲良くして気にかけていたからこそ、チームが分裂することはなかったので、そういう点も見ているのかなと。その辺が、つながっていると思います」


――同期に対して思うことを教えてください。

 「こんなに楽しかったのは同期のおかげだと思っています。 特に学生コーチになってからは、面倒くさいお願いもしたんですよ。特に就活生たちは、練習メインで使えなかったりして、嫌な思いもさせて。けど、それを俺に言ってこないで、黙々とやってくれたりとかしたのはすごい感謝しています」


――今感謝を一番伝えたい人を教えてください。

 「一番伝えたい人は、まず親はそうですけど、両親も背中押してくれたから学生コーチでも見に来てくれます。あとは希由翔かな。相談しまくったし、飯とか買い物もたくさん行ったんですけど、その時もチームの話ばっかりしていて。いなかったら、チームも成り立っていないと思います。あとは学生コーチにもわがまま言いましたね。それを聞いてくれて感謝ですし、福嶋(耕学生コーチ・情コミ3=明大中野)も順応してくれたので、期待しています」


――最後に、同じ学生コーチの後輩に向けてメッセージをお願いします。

 「学生コーチは本当に評価が難しい立場。勝たないと評価されない役職なので。うまくやって、選手と相談していってほしいなというのと、チームをつくるのに、嫌われなきゃダメみたいな言葉がよくあると思いますが、俺は嫌われたら終わりだと思ってやっていました。学生コーチにはついてこないから。だからこそ嫌われないように、真面目な時と不真面目な時をしっかりつくって、うまく選手をリードしてほしいなと思います。頑張ってください」


――ありがとうございました。


 [中村謙吾]