(98)ドラフト指名特別企画 広陵高・中井哲之監督インタビュー

2023.11.08

(この取材は11月1日、電話で行われました)

 

中井哲之監督

――石原勇輝投手(商4=広陵)が指名された瞬間はご覧になっていましたか。

 「しっかりは見れていないです。うち(広陵高)の選手もドラフトを待っていて指名がなかったので。そこから中国大会に移動したもんですから。石原本人からは移動中の新幹線で電話が掛かってきましたね。その時は十分に話はできなかったですけど。(指名は)もちろん知ってました」

 

――石原投手を初めてご覧になった時のことは覚えていらっしゃいますか。

 「そうですね、野球が大好きで、『甲子園に行きたい』という強い気持ちを持った子だったなっていう印象があります」

 ――当時はどこに魅力を感じていらっしゃいましたか。

 「顔以外ですよね(笑)。今の笑うところですよ(笑)。本当に性格がね、明るくて、朗らかで、真面目で。野球の技術的にいうと、股関節とか肩甲骨が柔らかくて、柔らかすぎてなかなか高校の時には筋力がつかなかったけど。大学に行ってだいぶ筋力もついてきたかなと思って見ています。プロの世界ではまだまだパワーの面だと足りないと思うので、そこら辺のパワーをつければ、もう1段階上に上がれるのではないかと思います」

 

――高校時代はどのような投手でしたか。

「非常に明るくて真面目で、将来性を感じる子でした。ピッチャーの同級生がたまたま3人プロ野球選手になるような代でしたけど、一番将来性は感じていたんですよね。それで明治大学にお世話になって、なかなかエースにはなれませんでしたが、順調に育っていってプロ野球の方からは将来性も買ってもらったと思います。大学生ではあるけれども、まだまだ伸び広がるという感じで思っていただいたと僕自身は思っています」

 

――お話にもあったように、当時の広陵高には多くの好投手がそろっていました。

 「高校の時は河野(佳選手・現広島東洋カープ)が頭一つくらい抜けてたんですけど、石原はちょっとコントロールが、左ピッチャー独特のがあると思うんですけど、そこが定まってなくて。でも体の柔らかさであったりボールの出どころがすごく分かりにくいピッチャーだったので、体が強くなっていけば楽しみだなという気持ちでした。今のところ、よく頑張ってくれていると思います」

 

――広陵高での教えで大切にしていることはございますか。

 「自分一人では野球ができないことは常々言っているんですよね。親御さんの大切さであったり控え選手のありがたさであったり。自分以外の人を大事にしない人は野球も絶対うまくなりませんし、人として成長しないことには愛される選手にはなれないので。野球以外のこと、人を大事にするというのは厳しく伝えているつもりです」

 

――広陵高出身の選手はプロや大学野球界でも多く活躍されています。

 「活躍するためにも、人間性の部分は一番やかましく言っています。その次に言うのは『自分で考えろ』っていうことですね。それで考えるだけではうまくならないから、行動に起こせと。行動に起こしたら、続けろと。これをやかましく言うんですよね。広陵高校は自主性をすごく重んじていて、高校の時から厳しく言っているんですけど、大学に行って高校から離れても、どこに行っても、頑張れる子が多いですね。その形が夢であるプロ野球選手になったり、たとえなれなくても人として活躍してくれている選手が多いので、本当に教え子には感謝しています」
 

――大学入学後、石原投手が一番変わったなと思うところはございますか。
 
 「よく喋るようになりましたよね。よく喋るし、必ずオフシーズンには顔を出してくれます。人が行くから行くではなくて、母校に行って体を動かしたいとか伝えたいとか。後輩にも伝えたいとか面倒見たいとか、そういうことは彼の動きを見ていて感じます」
 

――石原投手の変わらない良さというのはございますか。

 「偉そうにしないですよ。どんな立場になっても、明治に行ったからだとか背番号もらったからとか。人として野球は野球、人間は人間っていうところがよく分かっているのだと思います。たかが野球なので、最後人間は心しか残らないっていうことは常々うちの選手には言ってきているので。特にプロ野球選手っていうのは、早い終わりがあるじゃないですか。よく頑張って30歳で、35歳ぐらいまで頑張れるとすごい。でも世の中は65歳まで働くし、70歳まで働く時代が来ているわけですから。そういう意味では、しっかりしたものを持っておかないとゆくゆく自分がみじめになるので。そういった部分は常々話をしています」


 ――広陵高は自主性を大事にされている印象があります。

 「それは本当に大事にしています。そのことが生きる力に変わってきますし、人生野球だけではないので。自分で考えて自分で動いて、自分でやっていかないと何も残らないと思います。野球する意味、スポーツをする意味も、大きく言っていくとそういうところに関わってくると思うので。高校の時からそういうことは、本当に口酸っぱく言いますし、下級生はそういった上級生の姿を見ながら大きくなっていったり強くなっていくので、広陵高校のいい伝統かなとは思っています」


――監督から見た石原投手の武器は何だとお考えですか。

 「スピードが球速以上に速く見えるんだろうと思うんですよね。変化球のキレも、高校の時もすごくいいカーブを投げたりいいスライダーを投げてて。大学に行ってから、チェンジアップも良くなっていると聞いていますので。スピードというよりバッターに対するキレっていうところがいいところかなと思います」
 

――石原投手は大学入学後、体重が大幅に増えたと話されていました。

「ある程度スピードがほしかったんだと思います。どうしても体重が少なくてウエートが乗っていかないっていうところを自分が感じていて、筋力トレーニングだったり、食トレだったり。栄養価のことも考えながら、自分でやったんだと思います。自分でやったからこそ、体も大きくなって強くなって、スピードの出始めているところだと思いますね」

 

――広陵高で同期の高太一投手(大商大)もドラフト指名されました。

 「『絶対に負けない』と石原の方が言い切りますね(笑)。 『高には絶対に負けません』っていうのを話した時もそんなようなことを言っていたので。同じ左ピッチャーっていうのもありますし、順番でいうと高が2番で石原が3番だったので、そういうところもあるのかなって思ったりしています。高は広陵の時は4番手ピッチャーだったので『なんでこの子がこんなになるんや』っていうぐらいのピッチャーでしたけど、石原も自分が投げれない時に大商大で高が投げたりしていたと思うので、ライバル心というかそういうのは感じています」
 

――広陵高同期の森勝哉投手(文4=広陵)も近くで石原投手のドラフト指名を見守っていた姿がありました。

 「僕はモリカツって呼ぶんですけど、彼も社会人野球に行きたくてチャレンジしたんですけど、考えた末に、一般就職を選んだんですね。だからモリカツはすごいですよ。同級生なので(石原が)羨ましくなると思うんですよね。でもそこを喜び合えるというか。石原自身も森にすごく感謝しているところを感じたりするので、本当に僕自身はうれしいです。その上には渡邉(涼太氏・令3商卒)っていう子もいて、『最後の最後まで練習出てくれた』と。『普通の子はそんなことしないんです』みたいなことを聞くと、ありがたいなと思いますね。選手が頑張ってくれてるし、高校の時にやってたことを僕の手を離れてもやってくれていることがすごいなって思います」

 

――どういった選手になってほしいとお考えですか。

 「一番はファンの方に愛される選手になってほしいです。 せっかく夢の舞台に立ったんですから、故障しない息の長いプロ野球選手になってくれたらなって思います」


 ――最後に石原投手にメッセージをお願いします。

 「電話でもいいし、時間があったらぜひグラウンドに顔出してくださいっていうことですよね。本当に謙虚にがむしゃらに頑張ってほしいと思います。僕が一生応援したいような選手になってほしいと思います」

 

――ありがとうございました。

 

[伊藤香奈]

※写真はご本人提供