
(76)前半戦をデータと振り返る 投手編/東京六大学秋季リーグ戦

9月が終了し3カードを消化した明大。7試合6勝1敗で勝ち点3を獲得し、現在首位に座っている。今回は前半戦を終えた明大をここまでのデータを基に振り返り、快進撃を続ける要因と後半戦に向けてのキーポイントを分析していく。
【注】今回の記事内の成績とリーグ内順位は全て10月11日時点のものです。
〝負けないエース〟は継続も 状態はいかに
大黒柱の村田賢一投手(商4=春日部共栄)はここまで4試合先発で3勝0敗、防御率2.14。この数字だけ見ると素晴らしい投球に見える。しかし、今季の村田は様々な観点から昨季より苦しいシーズンになっていることは明らかだ。昨季は6先発で1試合を除いてHQS(7回2失点以内)を達成しているが、今季はここまで0。細かい数値でも以下表のとおり全て悪化してしまっているのが現状だ。一番注目すべきは※WHIPだろう。与四球と被安打数の数から算出されるため、村田の良さが一番現れやすいデータ。昨季の0.578が異常に良いだけに今季の苦しさが分かりやすい。肩の違和感からの調整不足に、風邪にも悩まされるなど災難が相次いだのは確か。苦しい状況でも時には自らのバットで取り戻すなど無敗を継続しているのはさすが〝11〟と言える。しかし、後半2カードは春の上位校で今季も実力十分。それだけに村田の投球が1戦目の勝利、2戦目の投手運用に今まで以上に直結してくる。エースが本来の投球を取り戻せるかは後半最大のキーポイントになるだろう。
どちらがつかむか 第2戦先発
1戦目の先発は昨季から不動で村田。それに対して2戦目の先発は今季も蒔田稔投手(商4=九州学院)と石原勇輝投手(商4=広陵)で流動的な起用が続いている。蒔田と石原は数字で見ると印象とは違う部分があるのが興味深い。蒔田は昨季からの球種偽装スタイルで打たせて取る印象が強いが、奪三振率が8.56と高い。昨季から成長しており、欲しいところで三振が取れている。逆に石原は快速球で奪三振を奪っていく印象が強いが、奪三振率は6.23と平均的。その代わりWHIPが0.808と非常に優秀で、変化球もうまく使ってまとまりが出てきたと見える。2人とも違った良さがあるが、課題は共通して1巡目以降の成績だ。以下の表から分かるように両者ともに3イニングまでの失点は少ない。4回と6回、ちょうど打者が一巡してくるタイミングが山場になっている。急に改善を見込むのは難しく、現状相性の良し悪しを見極めての先発起用になるだろう。いずれも1巡目だけの安定感なら村田と並ぶかそれ以上の力がある。ここまでの3カードでは先発しない方は延長も考慮しあまり中継ぎ登板していないが、後半2カード特に慶大の打撃陣に対してそこまでの余裕が持てるか。後述する浅利太門投手(商3=興国)が守護神としての役目は十分果たせる現状を見ると、2人が短いイニングで直接つなぐ継投があっても驚かない。
絶対的守護神誕生か 2年生トリオにも注目
今季非常に助かっているのが救援陣の働きだろう。合計で、22回と2/3を投げ自責はわずかに2。防御率は0.79と圧巻の数値だ。昨季から最も改善、進化した部分で4年生トリオが目立つ一方、下級生もめきめきと実力をつけてきたことが数字からもわかる。まず触れるべきは守護神として躍動している浅利だろう。後半2、3イニングは浅利までつなげば問題ないと思わせるほどの存在感が生まれてきた。データで見ても打者24に対して被安打、与四死球ともに一つのみ。スケール感はそのままに安定感が加わった形で、着々とスターへの階段を上っている。浅利の他では2年生トリオも活躍。久野悠斗投手(商2=報徳学園)を中心に大川慈英投手(国際2=常総学院)がデビュー、髙須大雅投手(法2=静岡)も経験を重ねた。今年度で抜ける4年生トリオの穴を来年度以降埋めてもらいたい。先発の状態次第ではあるが、今後はより苦しい場面でも登板が増えるであろうリリーフ陣。残り2カードも前半の調子を維持してほしい。
※WHIPとは
WHIPとは1イニングあたりに何人の出塁を許したかを表す。1.30が平均的で1.00を下回ると素晴らしいと言われる。
今年度のNPBトップはセ・リーグ、村上頌樹(阪神タイガース)の0.74。パ・リーグ、山本由伸(オリックス・バファローズ)の0.88。
[中村謙吾]
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