(70)榊原七斗 輝く星に憧れて

2023.09.26

 昨春に神宮デビューを果たした期待のルーキー・榊原七斗外野手(情コミ1=報徳学園)。高校時代は夢の甲子園出場こそ叶わなかったものの、汗も涙も乗り越えた強さが彼の武器になった。努力でつかんだ比類なき能力への自覚と責任を胸に、球場を駆ける。 

 

兄を追いかけ野球の道に 

 小さき努力も怠らない、〝積小為大〟の精神でここまで這い上がった。小学校4年次で硬式野球団に入団。その後地元兵庫の強豪・報徳学園高に進学した。早くから中心選手として活躍するも、プレッシャーを感じることはあまりなく「逆に怖いもの知らずで、思い切ってプレーすることができていた」。 2年次秋にはエースナンバーを背負うように。その後は投手としてのトレーニングに集中し、押しも押されもせぬエースへ成長した。そして迎えた夏の大会、転機は訪れた。 

 

「熱くなった」最後の夏 

 兵庫県大会5回戦。緊迫した投手戦となったこの試合は、9回を終え1―1と両者譲らぬ大接戦に。延長戦に突入してもなお、エースとしてマウンドに上がり腕を振った。しかし11回表、痛恨の一打を浴びてそのまま敗戦。138球の熱投も及ばなかった「負けた時は、大学で続けられる自信がないくらい落ち込んで…」。自責の念に駆られ、しばらく時の流れが止まったように立ち尽くした。そんなとき、空っぽの心に響いたのは両親の言葉「これで野球をするのが最後ではないから、次のステージに向けて頑張ればいい」。他にも励ましの言葉をもらい、多くの人に応援されていることに胸が熱くなったという。少しでも恩返しをしようと、引退後も後輩の打撃投手を務めた。誰かのために野球をすることで、自然と野球を愛する気持ちが蘇ってきた。 

 

大学入学、そして未来へ 

 高校生の時点で、プロからの注目も浴びていた。しかし「プロにいくような人と切磋琢磨して自分のレベルをもっと上げたいと思った」と、あえて険しい道を選び明大の門を叩いた。現状は野手登録だが、上級生になり機会があればとマウンドへの想いも消えていない。全ては、少しでも選手としての価値を高めるため。自身に厳しくできる強さこそ彼の才能であり、たゆまぬ努力の礎なのだ。神宮に舞い降りた新星が、明大の明日を照らす。 

 

[橘里多]  

 

榊原 七斗さかきばら・ななと情コミ1、報徳学園高、173センチ、75キロ、投げ打ち、外野手「通算安打記録更新」の文字を書けるか不安がり、スマホで調べるも一度書き損ていた。