(65)東大戦事前インタビュー② 鈴木健投手、松岡由機投手

2023.09.08

(この取材は8月25日に行われました)

 

鈴木健投手

――昨季を振り返っていかがですか。

 「スタートダッシュは結構良かったです。自分が去年の冬やってきたことと、自分のスタイルとチーム全体の、できるだけ序盤は接戦に持ってって終盤に勝負をかけるみたいな、そういうスタイルに対して自信が持てたというのはあると思います。後半戦にかけて失速していって、そこで自分の実力が足りない部分とか、秋についての課題が見えたと思います」

 

――規定投球回に到達しましたが、課題と収穫はありますか。

 「課題がメインになってしまうんですけど、去年のシーズンよりも投げるイニングが本当に2倍、3倍になってシーズン終盤に疲れが溜まって失速してしまった部分があって。それをなんとか補うためのスタミナをどう強化するかみたいなところと、自分の中でリカバリー方法みたいなのは、結構夏を通して練習してきたので、そういうのが秋シーズンに生かせればいいかなと考えてます。自分の中でピッチングした後にどの筋肉に負荷がかかってて、どの筋肉固くなりやすいとか、動きが悪くなりやすいかをできるだけ把握して、それに対して、一つ一つの筋肉に対して、どうすれば元の正常な動きをしてくれる状態に戻せるかみたいなのを結構意識して練習してきたので、そういうのができたらいいかなと思ってます」

 

――勝利のために必要なものは何だと感じましたか。

 「今年の春からそうですけど、自分たちの接戦に持ち込んで終盤でどう1本を出していくかっていうスタイル自体は、僕らは正しいとは考えています。あとは、僕たちピッチャー陣の目線からすると、どれだけそういう機会を増やしていけるか。今年の春だったら、松岡が良かったのもありますけど、3分の1か半分ぐらいは結構終盤まで持ち込むことができたみたいな試合があったんです。それをこの秋はどれだけ毎試合に近づけていくかで、野手に終盤どう託すことができるかみたいなのは、これが勝つために必要なスタイルだと思ってます」

 

――この夏に取り組んだことは何でしょうか。

 「投手陣としては、個人のレベルアップみたいなのは各自に任せてる部分が多くて、チーム全体で合宿を通してはランナーケアの部分。去年は、松岡さん(泰希選手)っていう、肩が強いキャッチャーがいて、その人に助けられて相手の盗塁とかを気にせず投げられた部分があったんですけど。今年の和田(泰晟捕手)も肩は強いですけど、松岡さんと比べるとまだっていう部分があるので、そこをピッチャーと協力してなんとか盗塁とかを減らしていかなきゃいけないっていうところで、ランナーケアとかけん制の技術とか、そういうのはチームの中で教え合ったりとかして向上するように努めました」

 

――自身は投手陣の中ではどのような立場ですか。

 「僕は2年生の頃から投げさせてもらってて、経験値は人よりあったので、その中でどうチームに対して目指す像みたいなのを与えられるかっていうのは、去年の秋とかは意識して取り組んでいて。例えば他大学の選手ってずっと一流でやってきてるんで、リーグ戦の中でどのくらい実力が必要とか、自分がどうしたら通用するかみたいなことが分かってる状態ですけど、僕らってレベルが低いところからトップのレベルまで急に入ってきて、自分のどういう長所が生きるのかとか、どういうスタイルで戦ったら自分が活躍できるかみたいなのが見えてない状態だと思うんですよ。その目標があんまり定まってない状態で努力をしても変な方向にぶれてしまう。その中で、僕とか松岡の経験をできるだけ還元して、こういう力が具体的に必要で、そこに向かって努力してほしいみたいな、そういう目標を立てるみたいなところは意識して取り組みました」

 

――トップ層ではないところから東京六大学に入って感じた苦労はありますか。

 「対戦するバッターのレベルが全く違います。僕、高校の時は本当に真っすぐの威力だけで押すようなピッチングをしたんですけど、それが大学に入ったら全く通用しなくなってしまって。それで自分でどうしようかと思って、たどり着いたのが今の、どちらかというと技巧派みたいな投球スタイルです」

 

――いよいよラストシーズンです。

 「早かったですね本当に。個人的には本当にいい経験をさせてもらったというか。早い段階から使っていただいて、2年生の頃自分の真っすぐで押すようなスタイルがほとんど通用しないってことが分かって、3年生で自分のスタイルを探して今のスタイルにたどり着いて、4年生でそれを改めて集大成として出していくみたいな、本当にいい経験をさせてもらえたらって思ってるので、何とかそれを生かして貢献したいっていう気持ちはやっぱりありますし。その中で僕、まだ4年間で勝ち試合で投げた経験がなくて。松岡は2回ぐらい勝ち試合に絡んでるんですけど、僕は1回もなくて。やっぱり自分のピッチングで勝ちを引き寄せたいっていう気持ちはあります。勝った試合をブルペンで見てた時に、もちろんうれしい気持ちもあるんですけど、それと一緒に悔しい気持ちというか、自分も直接貢献できなかったなっていうもやもやみたいな、絶対どっかにあったので。勝って、もう何もない状態で純粋にめちゃくちゃ喜びたいなっていう感じです」

 

――開幕戦は明大です。調整はいかがですか。

 「いっぱい分析しますね(笑)。明治さんって選手層が厚いんですよ。どの選手が出てきても活躍されるんで、そのためには幅広く分析するというか、他大学に比べて分析する人数も多いですし、本当にビデオにかじりついて見ながら弱点探していけたらなと思います。あと個人としても、今年の春通用した自分のその持ち味みたいなのもあるんですけど、やっぱりそれだけじゃ今年の秋は対応されてしまうと思うんで、そこにプラスアルファで、この夏取り組んできた、新しい球種とか、新しい何かを付け足すようなピッチングがしたいなって考えてます」

 

――秋の目標をお聞かせください。

 「まずチームとしての目標は間違いなく最下位脱出です。1勝だけじゃなくて、カードで取る勝ち点を取るために連勝していくっていうのは間違いないです。個人の目標としては、やはりその勝利の試合に投げる、先発して勝利を引き寄せるっていうのが目標です」

 

――秋のリーグ戦に向けて意気込みをお願いします。

 「0点で抑えます!」

 

――ありがとうございました。

 

 

 

松岡由機投手

――昨季を振り返っていかがですか。

 「ワンシーズンを通して先発をやったのが個人として初めてで、思ったより抑えられたかなという感じです。何とか試合をつくること自体はできたんですけど、その中でも結局勝てなかったので、試合をつくれた手応えは感じつつも、取られちゃいけない場面で点を取られたことはあったので、そういったところで抑えるだけじゃなくて勝てるようなピッチングをしなきゃいけないなと思いました」

 

――チームとしては松岡投手と鈴木健投手が軸となって試合をつくっていましたが、投手陣として印象に残る試合はございますか。

 「開幕戦の、それこそ明治さんとの試合で、あの時は健が7回1失点で抑えてくれて、ちょうど8回表とかにうちが2点を取って逆転した後に僕が投げて1点取られて。結果2―2のまま延長に入って、最後平田(康二郎投手)が1点取られて負けたんですよね。そういうところで、最後リードしている展開の中で、そういう展開に慣れていないのもあって、こちらが少し焦って、僕も平田もそんなに本来のピッチングではなかったと思うので、そういった中であまり力が発揮できず、結果追いつかれて逆転されてしまったのは、やはりうちの弱さというか、そういった感じがしたので、そういうところで勝ち切れるようにならないといけないなっていうのは、あの試合を通じて思いました」

 

――立大2回戦で完投した試合は振り返っていかがですか。

 「シーズンの中で試合数が増えていくにつれて、自分の中でも結構状態が良くなっているのを感じていたので、その1週前の慶應の試合でもそれなりに抑えることができて、その手応えを感じたまま立教に入っていけたので。あの試合は結構いい意味で、疲れも多少ありましたけど、それがいい意味でリラックスできたというか、それでうまく抑えられたかなと思います。あとは早稲田の時に、同点の6回か7回かに僕が結構大量点を取られてひっくり返されて負けた試合があって、終盤の体力がなくなってくる勝負どころで全然粘れなかったっていうのがあって、立教の時は終盤でピンチになっても、もう一段階集中力を上げて、何とか抑えられたので、そういったところでリーグ戦の中で自分としても成長できたかなと感じて、結構収穫のある試合でした」

 

――他に印象に残る登板はございますか。

 「立教の1回戦、満塁ホームランで追いついた後の9回にも投げたんですけど、あれは自分としてもあまり準備できてなくて、その中で結構0でいかないといけないっていうところで、春の試合の中で一番プレッシャーというか緊張した試合だったと思いますね。自分の中でも地に足が着いていない感覚はあったんですけど、ちょっとそわそわしながらも何とか冷静にっていうところで、結果的に0で抑えて帰れたっていうのは、結構自分の中では先発じゃないですけど印象には一番残っています」

 

――緊迫する場面での登板を重ねることで、マウンド上での心境が変わっていったという感じでしょうか。

 「そうですね。意識的にこういう考え方にすればいいなみたいなのは、なんとなく分かってきて。焦っている展開だったり、ピンチの場面でどうしてもネガティブな方向に行ったりとか、緊張して勝手にテンポが速くなったり、アップアップになったりすることが多いんですけど、そういう中で自分の精神状態をコントロールするというか、落ち着けるようになった。慣れというよりは、こうしたらいいかなっていう方法が何となく分かってきたっていうのはあります」

 

――この夏はどのようなことを中心に取り組まれていますか。

 「僕個人としてはやはり集大成なので、大学4年間やってきた中で自分の弱点というのはどうしてもあったので、そこの弱点を最後に直して、できるだけ完璧な状態で行けるようにっていうところで、今まで自分がちょっと目を背けてきたじゃないですけど、苦手にしてた部分に重点的に取り組んでいる感じです」

 

――副将という立場から見て、梅林主将はどのようなキャプテンに映っていますか。

 「やはり言葉で引っ張るのがすごくうまいので、みんなを引っ張っていく力はあるなと感じます。あとは彼自身の中でのアップダウンが見えないというか、彼の調子が崩れていても、やはりチームのためにというところで前を向いてやってくれているので、そういったところで結構安定的な、本当にチームの支柱っていう言葉がぴったりなキャプテンだと思います」

 

――この秋の東大のキーマンを挙げるとしたら、どなたですか。

 「ピッチャーはやはり僕と健じゃないですかね。2人が頑張らないとどうしようもないので。他にも下級生で平田とか鈴木太陽(投手)とかいいピッチャーはいるんですけど、 やはり僕らが頑張らないとどうしようもないので、ピッチャーのキーマンは僕たち2人でお願いします。野手は山口(真之介内野手)ですかね。明るいので。彼が打ったら雰囲気としても盛り上がると思いますし。春も満塁ホームラン打ったので、一発のパンチもあるし、単打もいけますし、最近のオープン戦でも結構調子が良いので、いい感じに打線をつないでいってくれるんじゃないかなっていうところで、雰囲気面とバッティングでの貢献と、どちらもの意味で期待しています」

 

――春は注目選手に酒井捷外野手を挙げられていましたが、活躍は見ていていかがですか。

 「いや、ちょっととんでもないなと思いましたね(笑)。こんな打つんやと思いました。なかなかこうリーグ戦初めてで、期待されて初めて出る人って今までもたくさんいましたけど、リーグ戦本番になるともう一個壁があって、なかなか自分の力が出ないパターンを何度も見てきたんですけど、あまりその壁を感じなかったというか。いや、すごい。素直にすごいなと思いました。ホームランも打っちゃって、ちょっとやばいなと思いました(笑)」

 

――今秋も開幕カードが明大ですが、警戒する明大の選手はどなたですか。

 「春、僕、みんな上田(希由翔主将・国際4=愛産大三河)と宗山(塁内野手・商3=広陵)って言うから飯森(太慈外野手・政経3=佼成学園)って言って、蓋開けたらみんな飯森だったんですよね(笑)。今回は素直に、上田希由翔で。やはりチームのキャプテンですし、勝手な印象ですけど、キャプテンになってから自分が打ってチームを鼓舞する感じがすごく出ているというか、そういったところで1本打たせるとチームとしても乗ってきちゃうかなと思うので。そういったところが嫌ですし、あとは単純に打率を残す方なので嫌だなっていうところと、あと個人としても結構対戦成績が良くなくて、結構今までやりたいようにやられているので。3年秋と4年春に2回、明治で先発しているんですけど、2回とも初回に彼にホームランを打たれて出鼻をくじかれているので、最後の秋こそはしっかり抑えて、うまく明治の流れを止められたらなと思います」

 

――秋はラストシーズンになると思いますが、ここまでの3年半は振り返っていかがですか。

 「個人としては、やはりさまざまな経験をさせてもらったのが一番大きいというか、いい経験でいったら、もちろん春や去年の秋の先発もそうですし、去年の秋の慶應さんに勝った時にも最後投げさせてもらって、勝ち試合っていうのは経験できました。逆に去年までリリーフで出て、勝っている展開の試合で逆転されたりですとか、こっちに流れを持っていきたいところで自分が打たれて負けたりっていう、なかなかうまくいかない経験もたくさんしてきた、そういった経験が今までできたことが、一番大きくて。そこで得たものを最後全部生かして、しっかり勝てればいいなと思います」

 

――東大に入って良かった一番のところはどういったところですか。

 「みんな練習熱心なところですかね。みんながやっているので、僕もやらなきゃっていう風になりますし。勉強に持っていっていた真面目さを、そのままみんな野球に持ってきているので、すごく野球に対して真摯(しんし)に向き合っているなっていうのは感じますし。全くうちの選手が姿勢とかで(他大学に)負けているとは思わないので、そういった姿勢を見ながら、自分でも頑張らないとなって思える、努力をあんまり努力と思ってない人たちがいる、そういった人たちがいる環境にいるのは一番大きいです」

 

――今秋の目標を教えてください。

 「チームはもう最下位脱出ですね。勝ち点2を取って自力で最下位脱出します。個人としては、最下位脱出を実現するために貢献しなきゃいけないと考えた時に、やはり3勝ですね。個人として3勝を挙げて、勝ち点2を取って、最下位脱出です」

 

――最後に意気込みをお願いします。

「秋こそは勝ちます」

 

――ありがとうございました。

[西田舞衣子、西村美夕]