(49)東京六大学春季リーグ戦振り返り 輝き始めた黄金世代

10勝1敗1分、勝ち点5、勝率.909と圧倒的な成績で完全優勝を果たした今季の明大。全日本大学選手権の開幕を直前に控えた今回は、今季優勝を引き寄せるターニングポイントとなった2試合を振り返る。
【4.25 慶大4回戦 ○5―2】(https://meisupo.net/news/detail/14819)

第3週、1勝1敗1分で迎えた慶大4回戦。両軍後がない状況で試合が始まった。先制は慶大。4回裏に3番・廣瀬(慶大)の2点本塁打で先行した。「相手が直球を狙ってきたことや連投の疲労をふまえ、変化球中心の配球をしたがあの1球は失投だった」(村田賢一投手・商4=春日部共栄)。5回の攻防は両軍無得点でそのまま明大2点ビハインドで折り返す。先発の村田は1回戦で9回を投げた後、3回戦でも中継ぎ登板。疲労の色は隠せなかった。しかし明大以上に苦しい投手運用を強いられたのが今季の慶大だった。今季3勝を挙げた主戦の外丸(慶大)はこのカード4試合中3試合で先発登板。4回戦が始まるまでに3戦合計171球を投じており、慶大ベンチは6回表から継投を決断。左の森下(慶大)にスイッチした。
6回2失点と好投した村田 今季慶大が守った135イニングの内、94イニングを外丸と第2先発の谷村の2人が占めた投手陣の陣容を考えれば、苦しいのがどちらかは明白だった。6回表、1死から連続四球で一、二塁の好機を作ると上田希由翔主将(国際4=愛産大三河)の右前適時打で反撃開始。続く7回表は瀨千皓外野手(営2=天理)の二塁打から直井宏路外野手(商3=桐光学園)が二塁手の頭上を越える適時打を放ち、代走・榊原七斗外野手(情コミ1=報徳学園)が生還した。「自分の前の2打席を見て、狙い球を整理して打席に入ることができた」(直井)。この時点で慶大はエースの外丸を降板させており、勝ち筋が見え始めた明大サイドは意気揚がる。同点直後の7回裏からは蒔田稔投手(商4=九州学院)がリリーフ。「今季は球速の部分でつまずいてしまった」(蒔田)と、シーズン序盤はやや不安定な投球を見せていたが、同時に不調を理解した上での〝大人の投球〟が光った。カットボール、チェンジアップなど変化球を丁寧にコースに投げ分ける姿は昨年度にはなく、これに加え秋に球速が戻ってくれば、圧倒的な成績を残すことができるだろう。蒔田が3回を1安打無失点に抑え、迎えた10回表。3番手・谷村(慶大)を捉えた。1死一塁から途中出場の榊原がバスターを決め、好機を広げると、続く小島大河捕手(政経2=東海大相模)の値千金3点本塁打で勝ち越した。「打ったのはカーブ。1点を取りに行く打撃を意識した」(小島)。勝ち越した明大は蒔田がその裏を締め、2勝1敗1分で粘る慶大を振り切った。思えば今季、正捕手の不在が優勝候補の大本命とされる今季のチーム唯一の不安だった。抜群のインサイドワークで投手陣の信頼を集めた昨年度正捕手の蓑尾海斗選手(令5文卒・現Honda熊本)が抜けた穴。リーグ戦出場経験のある横山陽樹捕手(情コミ3=作新学院)らが故障で出遅れる中、弱冠19歳の小島は戦力ダウンを感じさせない活躍を見せ、ベストナインにも選出された。「試合になれば学年は関係ない。自分が引っ張っていくつもりだった」(小島)。異次元の勝負強さと積極性を持つ小島が3連覇の偉業達成に一役買ったことは間違いない。
小島の3点本塁打が試合を決めた
【4.25 法大1回戦 ○5―4】( https://meisupo.net/news/detail/14821)

慶大との激闘から中3日。法大とのゴールデンウィーク決戦が幕を明けた。勝負のポイントは、慶大戦で疲弊した投手陣の踏ん張り。試合は初回から動いた。先発・尾﨑(法大)の立ち上がりを攻め、加藤巧也内野手(商3=大阪桐蔭)の犠飛で先制。昨年度からのリーグ戦3連覇を振り返ると、初回の得点がモノをいった試合が多く、今季も12試合中5試合で初回に得点を挙げている。その原動力となっているのが飯森太慈外野手(政経3=佼成学園)の存在だ。昨季から2番打者に定着した飯森は昨季9盗塁、今季は7盗塁と圧倒的な進塁能力を保持。加えて今季は打率.426で首位打者のタイトルを獲得し、飯森の存在はチームの得点能力を大幅に向上させた。「今季は打てる球と打てない球を見分けられるようになった。逆方向への意識を持つことで厳しいボールもファールにできた」(飯森)。この試合でも初回に先制点を挙げ、序盤は明大ペースで進んだ。
先制の犠飛を放った加藤
中盤は法大が猛攻。4回表に内海貴(法大)の適時打で同点とされ、5回表は代打・浦(法大の)右中間に抜ける2点適時打で試合をひっくり返された。主戦・尾崎を早い段階で諦め代打策を取った法大ベンチの好判断であった。しかしその裏宗山塁内野手(商3=広陵)、上田の連続適時打で明大がすぐさま同点。昨年度の戦いを想起させる宗山、上田の連続適時打で劣勢ムードをはね返した。7回表からは浅利太門投手(商3=興国)が登板。「普段の練習で対戦している打線を考えれば相手は怖くなかった」(浅利)。この春リーグ戦デビューを果たしたシンデレラボーイは8回に不運な当たりで1点を失ったものの、最速154キロの快速球で打線の奮起を呼んだ。1点を追う8回裏。この回は間違いなく今季のハイライトと言えるだろう。1死から小島が中前打で出塁すると、その後2死二塁から代打・木本圭一内野手(政経2=桐蔭学園)。代打らしく初球からスイングをかけていった5球目。吉鶴(法大)の失投を左中間スタンドに突き刺した。「追い込まれた後、2球連続で変化球を見逃したので直球で来ると思った」(木本)。9回表は石原勇輝投手(商4=広陵)が締め、2時間34分の死闘を制した。昨年度以上に選手層の厚さを感じさせた今季。木本をはじめ、慶大2回戦で勝ち越しの代打2点本塁打を放った内海優太内野手(商1=広陵)、早大1回戦でリーグ戦初スタメンながら4安打4打点の活躍を見せた今井英寿外野手(政経2=松商学園)らの登場は黄金期の到来を予感させた。「いい雰囲気を作ってくれる上級生がいる中で、下級生も上級生に負けていると思っていない。勝ち気な下級生が多くいる」(浅利)。圧倒的な個の集合からなる日本一の組織。戦後初の3連覇は必然だっただろうか。
逆転本塁打を放った木本
春季リーグ戦を完全優勝で制し、全日本大学選手権へと駒を進めた明大。苦しいリーグ戦の経験は全国の舞台に向けて大きな糧となるだろう。
[上瀬拓海]
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