(26)前半戦をデータで振り返る 投手編/東京六大学春季リーグ戦

2023.05.11

 4月が終了し3カードを消化した明大。8試合6勝1敗1分で勝ち点3を獲得し、現在首位に座っている。今回は前半戦を終えた明大をここまでのデータを基に振り返り、快進撃を続ける要因と後半戦に向けてのキーポイントを分析していく。

【注】今回の記事内の成績とリーグ内順位は全て5月6日時点のものです。

 

無双投球を続ける村田 データから見えた進化

 ここまで31回を投げ自責点3、防御率0.87と圧倒的な成績を残している村田賢一投手(商4=春日部共栄)。昨年度から安定感は抜群だったが、さらにもう一段階上の投球を披露している。今の無双につながっているのは奪三振能力の向上だ。奪三振率を昨季と比較してみると昨季は3.38だったのに対し、今季は7.83。倍以上に数値が跳ね上がっており、明らかな成長が見える。

 そして村田の真骨頂を表すデータもある。※k/bbという指標において前半戦の村田は脅威の9.00を記録。理論上、四球を一つ与えるまでに九つの三振を奪っているというとてつもない数字だ。今季は昨年度と比べてコントロールの良さはそのままに三振も奪えるという進化が見て取れる。後半戦もこの調子でどれだけの投球を見せてくれるのか期待せずにはいられない。

成績は良好も 手放しには喜べない先発陣

 前半戦の先発防御率を見ていくと、49回を投げ8失点、自責も8で1.47と好成績を残している。しかし、これは村田が上の章で述べたような活躍をしていることが大きな要因になっており、手放しには喜べない。その裏付けとしてQS(先発が6イニング以上を投げ、3失点以内)を達成したのは村田以外が先発の4試合では1試合しかない。HQS(先発が7イニング以上を投げ、2失点以内)で見ると1試合もない。この現状を鑑みると、2枚目の先発というのは後半戦で大きなカギになってくる。開幕前は二枚看板と目されていた蒔田稔投手(商4=九州学院)はここまで防御率3.31と本来の実力は出し切れていない。蒔田も今季はk/bbが高く、与四球率が昨年度に比べて改善されている。あとは出力の部分で昨春の姿に戻ることを望むばかりだ。それを前提としつつも蒔田が慶大4回戦ではロングリリーフで4回無失点の好結果。そして石原勇輝投手(商4=広陵)が慶大3回戦初先発で無失点の好投をした状況を考えると、今後の起用法というところにも注目だ。

蒔田の復調はチームにとって必須条件だ

 

好投続ける若い救援陣 求むは8回の男

 最後に救援陣を見ていく。成績は計25回で9失点、自責は6。防御率にすると2.16となっている。リーグ戦初登板などフレッシュなメンバーが多い中ではしっかりと試合をつないでいる印象だ。中でも浅利太門投手(商3=興国)はとてつもないインパクトを残した。直球は何度も150キロオーバーを計測し、イニングよりも多くの三振を奪っている。コマンドにはやや不安を残すもののそれすらも伸び代と感じさせる逸材だ。

 救援陣の中で懸念点を挙げるとするならば、8回の男だ。慶大3回戦での5失点が響いているとはいえ、イニング別失点で見ていくと一つの鬼門になっていることは間違いない(下記表参照)。奪三振率8.33と絶対的な奪三振能力を誇る石原か、リリーフ適性を見せつつある蒔田なのか。はたまた安定感を取り戻してきている藤江星河投手(政経3=大阪桐蔭)をはじめとした3年生陣なのか。ここは信頼と実績のある上級生に任せたい。

 

※k/bbとは

k/bbとは奪三振数÷与四球数で表される数値で、与四球一つ当たりの奪三振数を示す。三振が多く、四球が少ないほど数値が高くなり、単に三振を多く奪うだけでも打たせて取る投球でも数値が上がらないのがポイント。

3.5以上が好投手の基準で5.0を超えると非常に優秀だと言われている。

昨年度のNPBトップはセ・リーグでは今永投手(横浜DeNAベイスターズ)の4.55。パ・リーグでは加藤投手(北海道日本ハムファイターズ)の8.91。

 

[中村謙吾]