(204)箱根駅伝事後インタビュー⑮/山本佑樹駅伝監督(前編)

2023.01.10

〝返り咲け明治〟。復活を誓うスローガンを胸に挑んだ箱根路。10区間中2区間で区間賞を獲得するなど紫紺の戦士たちが躍動するも、結果は総合12位。3度目の正直とはならなかった。今回はレース後の選手たちの声をお届けする。

 

山本佑樹駅伝監督のインタビューです。(この取材は1月6日に電話で行われたものです)

 

――今回の箱根駅伝(以下、箱根)全体を振り返っていかがですか。

 「でこぼこというか、出入りの多いレースで、終わった後の脱力感は強く感じました。それと同時にシード権が取れなくて悔しい気持ちは本当に強いのですが、区間賞を二つ取れたのは、少しずつ成長はしているかなという手応えも感じたレースでした」

 

――シード権に至らなかった一番の要因はどのように考えていますか。

 「10人の足並みがそろわなかったことが一番の要因かなと思います。やはり優勝した駒澤もそうですが、きちんと上位で平均的に走ることが今は重要です。一つのミスも許されない、それが大きいミスだと本当に取り返しがつかないなと思います」

 

――1区の富田峻平選手(営4=八千代松陰)は区間賞でした。

 「1区の富田は割と早い段階で軸として決めていました。ハイペースになってもスローになってもこの一年『よーいどん』でやった試合できちんと上位にいたのは富田でした。直前の他大のエントリーを見ると、もうこれはかなりの確率でスローペースになるだろうと思っていました。なので、とにかく自分からレースを動かすことはせずに、しっかりためて最後の最後に一発で勝負を決めようと話をしていました。その通りの走りをして区間賞という結果を出してくれたので、本当に良かったと思います」

 

――富田選手は入学当初からかなり成長した結果を残しました。感慨深いものはありますか。

 「入学当初から『お前は絶対上でやれるから』と言い続けてきましたが、なかなか富田自身が自分の可能性を信じることができず、半信半疑な部分でやっていました。ただ、昨年度の7区を区間2番で走ってから『俺もいけるんだ』となり、彼にとっては本当にメンタルの成長が一番大きかったと思います」

 

――2区の小澤大輝主将(政経4=韮山)の走りはいかがでしたか。

 「当初は児玉(真輝・文3=鎌倉学園)を2区で考えていたので(小澤を)急きょ2区に回した感じでした。ただ、直前の調子はかなり上向いていましたし、キャプテンとして2区を走らせたいというのもありました。本人にも2区を走りたい気持ちがどこかにあったので、強いチャレンジの気持ちでやってくれたと思います。その中でどうしても他大のエース格が2区に集まったので、そこでは少し力負けをしてしまったかなと思います。あと30秒良ければ、合格だったかなという走りだったと思います」

 

――キャプテンとして最後の箱根でした。チームを引っ張ってきた小澤選手に一言お願いします。

 「昨年度の鈴木聖人(令4政経卒・現旭化成)からキャプテンを引き継いで、本当にチームの改革を一生懸命やってくれました。チームをまとめることは相当なストレスもかかるし、大変な作業だったと思いますが、本当に彼の人間性でしっかり引っ張ってくれました。周りの4年生も『小澤のために』と協力をしてくれていたので、本当に小澤の人間性の素晴らしさを感じた一年でした。この悔しい気持ちは富士通に行って実業団でしっかり晴らしてほしいです」

 

――3区の森下翔太選手(政経1=世羅)は1年生ながら素晴らしい走りでした。

 「直前の調子も良かったですし、そこそこいい走りはするだろうなと思っていましたが、僕が思っていたよりも上をいくいい走りでした。やはり都大路で1区区間賞を取るだけの力はあるなと改めて感心しました」

 

――4区の尾﨑健斗選手(商2=浜松商)はいかがでしたか。

 「櫛田(佳希・政経4=学校法人石川)と児玉が使えなくなったので、4区起用となりましたが、いずれ尾﨑はチームのエースとして背負って立つべき選手です。そういった意味で4区をチャレンジしようと走ってもらいました。タイム的にも予定通り以上の走りをしてくれました。急きょ走った中でもいい走りをしてくれたのではないかなと思います」

 

――5区の吉川響選手(文1=世羅)はいかがでしたか。

 「吉川響に関しては少し悔しい走りになったかなと思います。5キロくらいのところで少し足にけいれんがきているのが後ろから見て分かったので、正直なところゴールできるかなと不安もよぎりました。ここは僕の山に対する調整のミスがあり、もう少し準備をさせたほうが良かったかなという感じです」

 

――レース前の状態的にも良くなかったのですか。

 「レース前の状態が良過ぎて、どちらかというと平坦で力を発揮できるような調子の良さでした。ニュアンスが難しいのですが、平坦を走っていたら相当走れただろうなという状態だったので、逆に少し良過ぎというか仕上げ過ぎたかなという感じです」

 

――そこは来年度に向けて一つ反省点になりますか。

 「やはりそれぞれ選手のタイプがあるのですが、そこは見極めてやらなければいけないです。本人と僕の感触の一致はありましたし、何より彼が来年度も絶対にリベンジするという気持ちになっているので、2人で相談しながらまたしっかり準備したいです」

 

――区には1年生の堀颯介選手(商1=仙台育英)を起用しました。

 「当初漆畑(瑠人・文4=鹿児島城西)と堀颯のどっちでいこうかなというところで、漆畑を10区に回し、堀颯を6区にしました。僕の中で将来的なことも考えて1年生で使っておきたいというのもありましたし、下りの適性は夏以降にかなり感じていました。下りのスペシャリストになってくれるかなと期待を込めてエントリーしました。あまり上りが得意ではなかったので不安でしたが、そこをしっかり頑張ってくれていたので、いいスタートを切れたかなと思います。本人も反省していましたが、下りで思い切って下り切れなかったところがありました。下りは技術的な要素も強いので、今回経験したことで、今後につながるいい走りができたと思います。あとは、シード権を追う展開のいい詰め方をしてくれたので、本当に復路のいいスタートを切ってくれました」

 

――来年度以降も6区を走らせたい思いはありますか。

 「スペシャリストに仕上げたいという思いはあるので、平地でもいける実力を付けつつ、下りのスペシャリストになろうという話を終わった後に本人としました」

 

――7区の杉彩文海選手(文3=鳥栖工)が素晴らしい走りでした。

 「僕の中で7区は重要視しているポイントでした。杉はMARCH対抗戦で自己ベストを出してから本当に上り調子に調子を上げてきていました。彼は上りも下りもうまく走れるので、7区のコースが合っていると区間配置しました。前半からハイペースで飛ばしていて、正直なところ飛ばし過ぎかなと不安に感じていましたが、速い割には動きが落ち着いていて、後ろ姿からオーラも見えたような感じでした。これだったらこのままいき切れるかなと感じました。本当にそのまま押し切り、しかも区間賞という、本当に華々しい初出走だったので、彼にとって大きい自信になったと思います」

 

――以前の取材で杉選手は冬の寒さに強いという話がありましたが、そういったところもいい結果につながりましたか。

 「秋以降調子を上げてくるだろうと思っており、箱根では力を発揮してくれると思っていました。昨年度は暑い時期に全く練習ができず、少し(練習を)抜けてしまうところがありましたが、今年度は暑い中でもきちんとAチームで練習をこなしてきていました。夏にしっかり力を付けてくれた彼の努力や辛抱強さが今回の走りに現れたと思います」

 

――箱根前に主力がトラックレースを回避した中でMARCH対抗戦に出た杉選手がいい結果を出したというのは、いい傾向ではありますか。

 「そこの持っていき方は一つありますが、今回杉の良かったところは1万メートルをやった後にそのまま強化練習に入れたことです。やはりMARCH対抗戦でいい結果を出したことが彼にとって大きな自信になりました。1万メートルをやったからどうというのはまた違うかもしれませんが、一つのパターンとしてできたことは事実かなと思います」

 

――ありがとうございました。

 

[飯塚今日平]

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