(81)大川慈英 圧倒的エース

2022.10.11

 高校時代には甲子園で白星を挙げ、武器のストレートは最速148キロを計測する。そんな誰もがうらやむ野球人生を歩んでいると思われた大川慈英(国際1=常総学院)にこれまでの野球人生の点数を問うと、返ってきたのは意外な答えだった。

 

抱えてきた後悔と葛藤

 「50点。後悔が多く、50点以上にはならないと思う」。輝かしい実績を持つ大川だが、真っ先に口に出したのは後悔の念だった。弟に連れられ始めた野球。湘南ボーイズ時代は控え投手で目立った活躍はできなかった。しかし練習試合を偶然視察していた常総学院高のスカウトの目に留まり、進学が決定。控え投手でありながら名門校との縁を持ち合わせていたことに、大川の逸材たるその片鱗が伺える。覚悟を決め進学した名門では3年春に甲子園出場を果たす。「甲子園はなぜか楽しく、自分の力以上のものを出せる舞台」。憧れの甲子園で挑んだ初戦の敦賀気比高戦では、延長13回に及ぶ熱戦を制し、大川は勝利投手となる活躍を見せた。しかし悔やむのは2回戦・中京大中京高戦。大川は5回表から登板するも、チームはそれまでに8失点。3イニングを1失点と粘投したが、チームはそのまま敗戦し、甲子園を去った。「試合の要点で投げることができなかった」。意外にも、大川の野球人生は後悔と共にあった。

 

垣間見えた「終盤力」

 最速148キロを誇る大川に球速向上の秘訣(ひけつ)を聞くと「自分は試合の終盤に投げることが多かった。緊迫した場面で、負けたくないという気持ちで投げることで球速が上がっていった」。また自身の武器を投球時における状況判断能力とした。高校時代には、恩師・島田直也監督の下で「考える力」を養い、場面に応じた状況判断を磨いた。名門で悔しさと確かな成長を実感した大川。目の奥で燃える負けん気にチームの命運を担う「終盤力」を見た。

 

試合を任されるエース

 大学卒業後はプロ野球の道を志望する大川。高校からプロの世界に飛び込む選択肢もあったが、身体的な課題を感じ大学進学を選択した。4年間で目指すのは「どんな場面でも抑える圧倒的な投手」。現在は故障の経験から、柔軟性向上とフォーム改造に取り組んでいる。未完の大器に焦りはない。勝敗を任せられるようになる日はそう遠くないだろう。

 

[上瀬拓海]

 

大川 慈英(おおかわ・じぇい)国際1、常総学院高、177センチ73キロ、右投げ左打ち、投手 

趣味は小説を読むこと。しかし最近読んだ川上美映子『ヘヴン』は難しすぎた。