(80)毛利海大 苦難乗り越えた熱きエース

2022.10.10

 強気の攻めで打者を圧倒する毛利海大投手(情コミ1=福岡大大濠)。大事な場面で三振が取れることが強みだ。昨年春のセンバツではエースとしてチームを4年ぶりに8強へと導いた。福岡の星から明大の、そして日本の星へ。皆の期待を背に、熱い気持ちで立ち上がる。

 

ケガを乗り越えて

 野球をやっていた父の影響で、物心ついたときにはボールを握っていた。中学時代に世界大会を経験した本格派左腕として福岡大大濠高に進学すると、1年次春からベンチ入り。順風満帆に思えた野球生活。しかし、そこに試練が訪れる。秋は公式戦に先発で登板するも、肘を故障。痛くて投げられない期間は野球から離れたいとも思った。それでも「野球を取り上げられたら何があるかなって思ったとき、何も無かった。やっぱり野球だなって」。走り込みやフォームの修正など基礎から自身の投球を見つめ直した。懸命なリハビリの末、2年次秋の県予選で復活。そこからはエースとしてチームを引っ張っていく。

 

気持ち強きエース

 3年次春のセンバツ初戦の相手は、前年秋の九州大会決勝で敗れた大崎高。因縁の対決に「負けられない」と粘りながら投げることを意識して先発のマウンドに上がった。結果は9回を投げ抜き1失点に抑えて勝利。「やっぱりエースだからそのくらいしないと」。オンオフの切り替えを徹底し、周りに弱いところは見せない。エースとしての強い責任感が投球にも表れた。この大会でチームとしては4年ぶりの8強。「甲子園は野球の楽しさをもう一度教えてくれた」。一時はケガで挫折しかけたが、そこでめげずに続けたことで立てた憧れの舞台。その経験は一生の財産となった。

 

思い描く夢の先へ

 しかし、夏は地方大会の準々決勝で敗退する。最後の試合はこの夏一番の投球ができたと振り返る反面「それでも結構打たれたので、まだ実力不足だった」と痛感。伝統があり注目度の高い六大学の舞台での、さらなるレベルアップを決意した。見据えるはプロ野球で活躍し、小さい子どもから「毛利みたいになりたい」と憧れられる選手になることだ。応援し、期待をしてくれている人たちのために。誓った恩返しは、いつしか多くの人の光となる。

 

[髙本都]

 

◆毛利 海大(もうり・かいと)情コミ1、福岡大大濠、177センチ、76キロ、左投左打ち、投手。

 2016年の球宴で始球式を務めた際、秋山翔吾選手「あの子いいボール投げるね」。