
(26)甲子園Vの若き逸材 新たな舞台でも優勝へ 西川黎

異例尽くしの野球人生だ。中高一貫校から履正社高校への進学を選んだ西川黎外野手(商1=履正社)。レギュラーながらマネジャーを兼任し、甲子園優勝を果たした。昨年は1年生ながらレギュラーをつかみ取り、ルーキーイヤーから存在感を放った期待の新星だ。
中学2年生の冬前、履正社高から推薦がきたことで、同級生が付属高校に進む中、履正社高に進学することを決意。
異例の進路をとり入学した履正社高。先輩たちのレベルの高さに「ここでやっていけるかな」という思いがよぎった。「不安を払拭するためには結果を出すしかない」。どうすれば結果を出せるか考えながら練習をすることを常に意識した。
2年生の秋、新チームが始動する際に指名されたプレーイングマネジャー。文武両道で、学業でも良い成績を収めていた西川に白羽の矢が立った。出欠確認や監督との連絡、練習の準備などを任された。スタメンを張っている選手が務めることは珍しかった。マネジャーの仕事に時間を取られ、短くなる練習時間。他選手のミスの責任を負い怒られることもあった。いつも頭にあった「マネジャーを辞めたい」という思い。西川を支えたのはメンバーから漏れた選手のサポートだった。率先して協力してくれる気遣いはうれしく、西川を支え続けた。また、マネジャーをしていくうちに身に付いた「周りを見る力」。打席の中での状況整理や先を見越したプレーにつながった。
西川にとって高校で一番印象に残る試合は3年夏の甲子園決勝戦。対戦相手は春の選抜でエース・奥川恭伸(東京ヤクルトスワローズ)に17三振を奪われ完封負けを喫した星稜高。打てるチームという自負があっただけに、春の完敗には言葉が出なかった。それ以来「どうやって奥川を打つか」だけを考え続けた。マシンを160キロに設定した打撃練習や、狙い球をどう絞るかなど、試行錯誤しながらの練習。その成果は結果に表れた。甲子園初戦から2試合連続で本塁打を含む猛打賞を記録。準決勝でも決勝打となる犠飛を放つなど好調を維持し、決勝に駒を進めた。「決勝で当たるのがドラマみたい」と感じた星稜高戦。「今までやってきたことを信じて頑張ろう」と意気込み挑んだ。同点で迎えた8回表。「焦ることなく冷静にできた」と振り返る犠打を決めると、続く打者の適時打で勝ち越す。春から積んできた練習は、優勝という最高のかたちで実を結んだ。「ベンチに入れなかった選手たちに報えたことが一番嬉しかった」。ずっと支えてくれたチームメートに勝利を届けた。春から目標にしてきた相手を決勝で倒せたことは「すごく良い経験」。考え抜いてつかみ取った勝利は確実に西川を成長させた。
「野球をやるからにはやっぱり強いところでやりたい」という意思を持ち明大に進学。開幕スタメンに抜てきされると、初打席、早川隆久(早大)から適時打を放ち、華々しい神宮デビューを飾った。
4年間での目標はベストナインと首位打者のタイトル。課題である体力と飛距離を改善するため、1年間戦える体づくりに取り組んでいる。頼れる若武者が大学でもチームを優勝へ導く。
[西村美夕]
◆西川 黎(にしかわ・れい) 商1、履正社高、174センチ、74キロ、右投右打、外野手
高校の成績はほぼオール5。しかし「勉強は大嫌い」
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