明治の〝11〟からハマのスターへ 入江大生

2020.11.13

 2020プロ野球ドラフト会議が10月26日に行われ、入江大生投手(政経4=作新学院) が横浜DeNAベイスターズ(以下、横浜)から1位指名を受けた。187㌢の長身から投げ込む、最速153㌔の直球とキレのあるスライダーが持ち味だ。高校3年次の夏には背番号〝1〟を今井達也選手(埼玉西武ライオンズ)に譲り、打者としてチームの全国高校選手権優勝に貢献した。大学入学後は投手に再挑戦。4年次はエースの役割を果たした。打者ではなく、ついに本職でその名をとどろかせる。

安堵と覚悟

 「第1巡選択希望選手。横浜DeNA、イリエタイセイ……」。寮に設置されたテレビから、自身の名が響く。報道陣のフラッシュの中、主役は一人大きく息を吐いた。「本当にほっとした」。

 ちょうど1年前。先輩の森下暢仁選手(令2政経卒・現広島東洋カープ)らがドラフト指名を受ける姿を見て「来年は頑張る。自分ならいける」と覚悟を語った。誰もが認め る〝投手〟を目指し「人より多く、人より前へ」。背番〝11〟の責任感から、誰よりもたくさんの汗を流してきた。思うように結果が出ず、悔し涙を流す時もあった。あの日からずっと思い描いた光景。「まだ実感が湧かない。まさか1位で指名していただけるなんて」。だが、喜びをかみ締めたのもつかの間。少しずつ芽生える、プロ野球選手になる自覚と責任から「これから結果でお返ししたい」。鋭く前を見据えた。

 

出会いと道

 ドラフト直前に真価を見せつけた。力みがちで思うような投球ができずにいた今秋、迎えた法大1回戦。9回13奪三振と、起死回生の完封劇を披露。一気にドラフト1位を引き寄せた。これまでも「何かが懸かった一戦で力を発揮してきた」。土壇場での快投は、一時の偶然ではなかった。

 「人や運に恵まれているところが最大の長所」。作新学院高時代の恩師・小針崇宏監督や岩嶋敬一部長、さらに母・小夜里さんまで口をそろえる。振り返れば、ずっと誰かが上にいた。高校時代は今井選手、大学では森下選手や伊勢大夢選手(令2営卒・現横浜)。それでもそばには「どれだけミスしても外されなかった」と信じ続けてくれた小針監督や、投手の才能を買ってくれた善波達也前監督が。4年次には「日の目を見るときが来た」(田中武 宏監督)。上級生の陰で力を付けてきた入江を一番近くで見守ってくれた田中監督がいた。  

 環境と習慣を大事にすること。日々当たり前のことをこなして、徳を積んでゆく。いざとなったときにその巡り合わせが助けてくれる――。小針監督から得た教訓だ。明大でも私生活重視の指導の下〝人間力〟を磨いてきた。時間を守る、ゴミを拾う……。高校、大学と、毎日積み重ねてきたこと。それは人生の局面でも、決して自分を裏切らなかった。「運も実力のうち」。愛用のグラブには〝勝運〟の文字。縁と才を持つ男は、勝利の女神にも愛される。

ハマの星へ

 「応援される選手になりたい」。横浜でスター選手への道を歩む。プロ1年目の目標は、10 勝を挙げること。「ずっと背中を見てきた森下さんを、いつか越せるように」。新人王が確実視される先輩をもしのぐ投手へ。「まだまだこれから成長する」。 覚悟、自信、感謝、悔しさ。全てを込めて。魂の赴くままに。〝投手・入江大生〟の夢物語は、まだ始まったばかりだ。

【荒川千那】

◆入江大生(いりえ・たいせい)栃木県出身。マイブームは「お花を摘むこと(笑)」。ちなみに好きな花はパンジー。語呂が良いためだとか。横浜でも持ち前のトークスキルで、ファンを笑顔にしてくれそうだ。右投右打。187㌢・87㌔

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