亥年に起こした奇跡の逆転劇 40度目リーグ戦優勝!

2019.06.12

 走り出した紫紺の猪は止められない。東京六大学春季リーグ戦で40度目の優勝を飾った。島岡吉郎元監督(昭11政経卒)ゆかりの〝イノシシワッペン〟を30年ぶりに復活させ挑んだ今季。開幕黒星スタートから破竹の勢いで10連勝(1分け含む)し、5季ぶりの天皇杯を手にした。


好チーム

 待ちに待った瞬間だった。森下暢仁主将(政経4=大分商)が最後の打者を三振に斬る。紫紺に染まる神宮で、笑顔のナインが歓喜の輪をつくった。チームがまとまったから勝てた――。よく耳にする言葉だがこれほどふさわしいチームもない。開幕前、下馬評は高くなかった。エース・森下を中心に投手陣は充実。しかし、野手陣は、開幕スタメン全員が規定打席に一度も到達しておらず「みんな不安だった」(添田真海内野手・法4=作新学院)。実際、チーム防御率がリーグ1位、一方のチーム打率は4位と前評判通りの成績。それでも頂点に立てたのは、数字に表れない〝チーム力〟があったからだ。

 「誰かが駄目でも誰かがやってくれる」(北本一樹内野手・文4=二松学舎大付)。それを象徴した試合が優勝を決めた法大2回戦だ。序盤、投手陣がつかまり7点ビハインドに。それでも「負けない雰囲気があった」(森下)。4回表、日置航内野手(商1=日大三)の初安打となる適時打で反撃開始。北本ら主軸の一打も絡み徐々に追い上げると、8回表に代打・松下且興外野手(商3=九州学院)が適時二塁打を放ち逆転に成功。劇的勝利で栄冠をつかみ取った。「どこよりも全員で戦った」(喜多真吾内野手・法4=広陵)今季の明大。戦いながら磨き上げた強みを、集大成として見せつけた。


決意の涙

 「本当にごめん」。開幕戦後のロッカールーム。目に涙を浮かべ謝罪する背番号〝10〟の姿があった。「見たこともないようなひどい投球」(善波達也監督)と振り返るほどこの日の調子は最悪。0―4と完敗だった。「初戦を落としたら終わり」。意気込んで臨んだマウンドで迷惑を掛けた自分が許せなかった。それまでは「自分の結果さえ良ければいいタイプ」(北本)。初めて見る涙に周囲は衝撃を隠せなかった。それでも、口下手な主将が思いを吐露したことで「二度と暢仁(森下)を泣かせない」(北本)。沈んでいたチームがもう一度団結し、そこから明大は負けなし。森下もキャリアハイの成績、満票でのベストナインと投球でチームをけん引した。主将の人間力に仲間が動かされた、今季を語るに欠かせない時間だった。


猪突猛進

 まだまだ先へと突き進む。「今年は明治の年」(善波監督)とスローガン『猪突猛進』にふさわしい戦いぶりを見せてくれた明大ナイン。前回の優勝をエース兼主将として経験した柳裕也選手(平29政経卒・現中日ドラゴンズ)も「強い明大というのはすごく誇らしい」と後輩の活躍を祝福した。その柳世代以来の春秋連覇、日本一という使命がこれから残されている。「一丸となって日本一を目指したい」(森下)。全国の頂点に立つその日まで、猪軍団は猛進を続ける。


【小野原琢真】

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