チーム2冠のスラッガー 佐野恵

2016.04.01

 原点回帰でチームの柱に返り咲く。佐野恵太内野手(商4=広陵)は昨季2本塁打、11打点でチーム内2冠王。自身初のベストナインも受賞し、六大学を代表する強打者へと上り詰めた。しかし、現在は苦しい状況に置かれている。Bチーム暮らしが続き、チームの最前線にすら立てていない。野球人生でかつてない挫折。ここからはい上がり、再び輝きを放てるか。

3年間右上がり
 プロ顔負けのスイングで威圧感を放つ。佐野恵の魅力は振りの強さにある。それを象徴するのが、昨季慶大2回戦で放った本塁打。六大屈指の剛腕・加藤拓の高めの直球を、完璧に捉え右翼席にたたき込んだ。過去に2度計測したというスイングスピードは153㌔と160㌔。プロ野球でもトップクラスの数値だ。「スイングスピードが一番大事だと思っているし、自信があるのもそこ」。どんな球にも振り負けない鋭いスイング。最もこだわる部分であり、絶対の自負を持つ。
 ここまで右肩上がりの曲線を描いてきた。2年春から代打を中心に出場機会を得ると、同秋からは打力を買われ、捕手から一塁にコンバート。リーグ戦初本塁打も放った。15年はさらに飛躍を遂げ、昨季は全試合5番ファーストでスタメン出場。チーム2冠の活躍でベストナインに輝いた。神宮デビューから4季。シーズンごとに成績を伸ばし続けている。

1からの再出発
 そんな佐野恵だが、苦境の真っただ中にいる。3月31日現在、スタメンはおろか、Aチームにすら帯同していない。事の発端は、新年1回目の全体練習。帰省から戻りたてだった佐野恵は、ポール間走のメニューをこなせなかった。副将という立場にありながらの体たらくに善波達也監督が激怒。それが尾を引き、アメリカキャンプでは唯一試合の出場なし。現在はBチーム遠征の日々だ。「試合で打ち続けていればという甘い考えがあった」(佐野恵)。最上級生でメンバーから外されたのは野球人生で初めて。かつてない挫折だった。
 期待するが故の厳しさではある。今季の打線の要について「本当なら佐野になってもらいたい。はい上がってもらわないと困る」と指揮官は話す。
 「今はリーグ戦とかは考えていない。一日一日、一球一球がむしゃらにやるだけ」と佐野恵は再出発を誓った。実績だけを見れば、今季は4番を打ってもおかしくない。己と向き合う機会、必ずや一回り大きくなって戻ってくる。
【尾藤泰平】