誓った5年ぶり日本一 柳 全勝宣言

2016.04.01

 頼もしい全勝宣言だ! 今季から主将を務める柳裕也(政経4=横浜)は昨季六大学単独トップの5勝をマークした絶対的エース。「投げる試合は全部勝つ」と並々ならぬ覚悟でチームを引っ張る。昨季は優勝まであと1勝の局面から逆転を許した明大。19年ぶりの投手主将は力強く雪辱Vを誓う。

直々の指名
 偉大な先輩たちを超えていく。投手が主将を務めるのは川上憲伸氏(平10商卒)以来19年ぶり。さかのぼれば星野仙一氏(昭44政経卒)や1975年にチームを日本一に導いた高橋三千丈氏(昭54商卒)などそうそうたる顔ぶれが並ぶ。「エース」で「主将」の一人二役は並大抵のことではないが「3年間見ていて柳は物事を冷静に見る能力があるし、自分にしっかりものを言える」と善波達也監督直々の指名だった。昨季六大学単独トップの5勝を挙げた実績はもちろん、抜群のリーダーシップへの信頼も大きい。「去年から自分が引っ張るつもりでやってきた」(柳)と持ち前の強い責任感でチームをけん引する。

抱えた責任
 ポジションの特性上、投手と主将の両立は、どうしても負担が大きくなる。「全部やろうとしたらパンクしてしまう」(柳)。今でこそ笑顔で話すが、最初からそう割り切れていたわけではなかった。
 アメリカキャンプ中の3月15日。アリゾナ州立大とのオープン戦でのこと。六回裏から登板、3者連続三振に切って取った柳が七回突如乱れた。2安打3四死球の乱調から逆転を許すと、同点に追い付いた九回裏に再び失点しサヨナラ負け。柳自身「主将になってから初めて負けて、自分の気持ちの置きどころが分からなくなった」と振り返るこの試合は「あんな動揺した柳は見たことがない」とチームメートが口をそろえるほどの衝撃だった。
 同期は悩む主将の身を案じていた。「自分が抑えてあげよう、自分が三振を取るんだと、背負い過ぎて頑張っちゃう。それが柳のいいところでもあるけど…」(萩原英之外野手・営4=九州学院)。帰国後すぐの休み、萩原ら副将4人の食事会を開いた。サヨナラ負けしたあの日、柳のためにもっとやれることはなかったか。腹を割って話し合うために設けた機会だった。「いかにサポートできるか。キャプテンに何もさせないぐらい、僕らが頑張る」。出した結論は明快だった。
 「今はみんなに任せるところは任せようと、いい意味で開き直ってやれている」(柳)。大黒柱と、それを支える4年生。柳に全てを背負わせない、今年のチームの強さが見えた。

全勝の意味
 「投げる試合は全部勝つ」。シーズンの目標を聞くと決まって柳はこう答える。しかし、同じ言葉でも今年は意味が違う。「自分が投げて勝ち続けることで、チームのみんなも安心してくれる。逆に自分があたふたする姿をマウンドで見せるとチームも崩れてしまう」。計り知れない責任を背負う柳。だが、決して孤独なマウンドにはならない。5年ぶりの日本一は、全員の手でつかみ取る。
【萬屋直】