黄金世代の掲げし誓い 坂本誠志郎

逃し続けた日本一への挑戦が始まる。昨季は粘りの野球が結実し、リーグ戦37度目の優勝を飾った。しかしその後、秋の大学日本一を決める明治神宮大会で準優勝。同大会2年連続で頂点を逃した。涙をのんでから4カ月。屈辱を忘れずに鍛錬を積んできた。今年は下級生の時から活躍してきた4年生世代が軸。その中心に立つのが坂本誠志郎主将(文4=履正社)だ。「日本一のチームをつくる」と誰よりも勝利へのこだわりを見せている。春季リーグ戦を制し、6月の全日本大学選手権で春の日本一になるまで。坂本が持ち前の統率力でチームをVロードへ導く。
勝利のために
精神的支柱になる。「自分がやることがチームのためになるなら、やろうと思っていた」と主将を務める意志を固めていた。これまでもチームを見る目を持ち、自然と同級生以下をまとめてきた。「選手からの人望が一番ある」と善波達也監督は坂本を主将に指名した。チームを背負う覚悟はできている。主将就任後はチームを見る幅が広がった。一番気に掛けているのは選手の人間的な面だ。「そこからほころびが出ないようにしたい」。昨年をもってコーチ、寮長の松岡功祐氏(昭40農卒)がチームを離れた。人間性が野球に通ずると、私生活の細かな面まで目を光らせた存在がいなくなり不安を覚える。それだけに、ごみ拾いやスリッパをそろえることなどの恩師の教えを、坂本自らが率先して行い、チームにも伝えている。「しっかりと引っ張ってくれている」と高校時代からの同級生の石井元(営4=履正社)は言う。キャプテンシーはしっかりと発揮されており、選手からの信頼厚き主将となっている。守り勝つ野球において、捕手としての役割も大きい。坂本は1年秋からは正捕手に定着し、チームの3度のリーグ優勝に守備面で大きく貢献した。2、3年次には大学日本代表として世界を相手に戦った。多くの投手の球を受け、あらゆる試合展開も乗り越え、経験値は十分。投手陣は「要求通りに投げれば大丈夫」と信頼を置く。大学ナンバーワン捕手と評されるにふさわしい選手である。抱く理想は「勝てる捕手」になること。投手の能力を引き出す力、相手の観察力といった捕手として必要なことを、高いレベルで実行できるように心掛ける。また、日頃から他の捕手の配球を見ながら自分の考えと比較する。試合のどんな場面にも対応するために、考えの幅を広げている。全ては「勝つ」ためだ。
無力感を糧に
「俺は何をしていたのか」。この言葉が全てを物語っている。昨年秋の明治神宮大会準優勝後の坂本に残ったのは無力感。自身は攻守に役割を全うできなかった。チームも2年連続で自分たちの野球ができず頂点を逃した。「負けたら何も言えない」。自身も、チームももうその思いを味わいたくない。だからこそ、主将となってからはチームに対しても悔しさを忘れないよう厳しく伝え続けている。頂点へのこだわりは誰にも負けない。「チームとして日本一が必要、自分に誇れるだけの日本一も必要」。周囲の期待が大きいチームの主将として成し遂げなければならない目標。そして自身も経験のない称号を必ずつかんでみせる。春の日本一へ挑戦する土俵に立つため、まずは今季を制す。「今年は結果が求められるチーム」。主将、正捕手として大切な1年が幕を開ける。
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