
思い叶った!上本、プロの世界へ

上本崇司内野手(商4=広陵)が、25日にグランドプリンスホテル新高輪で行われたプロ野球ドラフト会議で、広島東洋カープから3位指名を受けた。課題だった打撃は最後のシーズンも2割4分5厘に終わったが、それ以上に何度もチームを救ってきた守備や走塁の高い技術が、プロのスカウトにも評価された。プロへの扉をこじ開けた。これで明大からは3年連続でプロ野球選手が誕生した。
すぐ通用
「ホッとした」。指名後、安堵(あんど)の表情を浮かべそう口にした。会議の様子を寮のテレビでチームメートと見ながら、今か今かとその時を待っていた。小学生のころからの夢がかなった瞬間に、喜びより先に緊張の糸がほどけた。
通算打率は2割5厘。シーズンで3割以上を打ったこともない。打撃はドラフトに指名されるレベルには物足りないものだった。だが、その欠点を補うだけの、魅力的な守備と走塁の技術があった。「守備と走塁は誰にも負けない」。捕球してから投げるまでの早さ。広い守備範囲。走りだしてからの加速。相手の一瞬のスキを見逃さず、次の塁を奪う走塁。広島東洋カープの苑田聡彦スカウト部長は「打撃は不調が続いたけど、守備と走塁は文句ない。プロでもすぐ通用する」と評価していた。
高校時代から巨人や中日など計7球団から注目されていた。だが高卒でのプロ入りは志願せず「大学で経験を積みたかった」と明大へ進学。1年春からレギュラーに抜てきされたが、打撃では、大学レベルの好投手への対応が遅れた。本人もプロ入りは「力的に無理」と感じていた。それでも「自分には野球しかない」。プロに行きたい気持ちが強く、社会人野球は考えず進路は、覚悟を決めて、プロ1本に絞った。指名漏れした際の逃げ道はつくらなかった。
試行錯誤
だからこそ今季は「何とかしないといけない」シーズンだった。開幕1週間前に、バットを長く軽いものに変え、それを一握り短く持った。オープン戦で一度も試せなかったが「やってみるしかない」と迷いはなかった。開幕カードの立大戦では12打数4安打2打点。早大2回戦では4打数3安打で猛打賞。序盤からアピールに成功した。
それでも終盤は慶大戦以降21打数3安打と調子を落とした。今秋も最後は2割4分5厘と決して打率を残せたわけではない。それでもチームに欠かせなかった。今秋ケガで主軸の同期たちが離脱する中「自分が引っ張っていきたかった」。慶大4回戦では守備で2度のファインプレー。負ければV消滅となった法大1回戦でも9回土壇場で出塁し、盗塁を決めた。「チームがピンチの時に何とかする。調子が悪くても相手に向かっていく気持ちがある」(苑田スカウト)。がむしゃらにもがく姿に球団は将来性を見出していた。
「1日でも早く1軍へ上がって、1日にでも長く1軍にいたい」と早くもプロ入り後の自分を見据えている。明大をずっと支えてきた男が、今度は地元・広島でもチームを救うヒーローとなる。
◆上本崇司(うえもと・たかし)1990年生まれ。広島県出身。中学時代は軟式チームの松永ヤンキースに所属し、大田泰示選手(読売ジャイアンツ)とチームメート。広陵高では1年秋からスタメン。3度甲子園に出場。2年夏に野村祐輔投手(平24商卒・現広島東洋カープ)らと甲子園準V。阪神タイガースの上本博紀選手は実兄。趣味は映画鑑賞と釣り。170cm・70kg。右投右打
関連記事
RELATED ENTRIES