選抜準優勝エース

2011.04.23

 昨春、エースとして、5番として、日大三高をセンバツ準優勝に導いた山汕福也(政経1)。病気を克服し、プロ注目選手とまで呼ばれる今、山汕は大学で「投打の両方」に挑戦する。

 「死んじゃうのかな……」。小児脳腫瘍(しゅよう)が発覚したのは高校入学前の冬。普通の生活も危ぶまれたが「絶対に野球をやる」という一心で病院を探し、北海道の医師による手術を受けた。手術は成功したが、直後は思うように体が動かなかった。野球がしたいのにできない――。そんな山汕を支えたのは、春のセンバツに出場していた兄の姿だった。「甲子園にいる兄を見て自分も頑張ろうと思った」。そこから驚異的な回復を見せ、1週間後には野球が再開できるまでになった。

 病気も完治し名門・日大三高へ入学。ミートセンスと長打力を武器に、打者として2年からレギュラー。3年春にはエースとして、5番打者としてチームをセンバツ準優勝へ導くとともに、大会個人最多安打記録にも並んだ。「病気になってハンデもあったけど、とにかく練習を積んだ」。苦労が報われた瞬間だった。

 しかし最後の夏、西東京大会準決勝で先発したものの終盤に逆転を許し敗戦。「自分のせいで負けた」と自らを責めた山汕は、引退後も1人寮へ残った。「夏に負けた悔しさがあったから、毎日頑張れた」と、後輩と共に練習を続けた。

 一度野球ができないかもしれない危機を味わったからこそ、つらくても努力を積み重ね、そうやって結果を出してきた山汕。大学では投手、打者両方に挑戦する。「ほかの人ができないことをやりたい」。野球ができることに感謝し、投打の二刀流で日本一を目指す。それこそ、山汕福也にしかできないことだ。

◆山崎福也 やまざきさちや 政経 日大三高 186cm・85kg⑤全国高校選抜準優勝