荒木郁 阪神へ

2010.11.30

〝夢の大舞台へ”。10月28日のドラフト会議で本学から荒木郁也が阪神タイガース5位指名を受けた。輝かしい成績を残してきた彼だが、プロへの道は決して平坦ではなかった。

 2年次春、対早稲田1回戦9回裏一死1塁――。荒木(郁)の打球がスタンドに突き刺さった瞬間、紫紺に染まった観衆が沸いた。リーグ優勝を手繰り寄せた豪快なサヨナラ弾。この一打が彼の名を大学球界に轟かせた。50㍍5秒7の俊足は1試合で五つの盗塁を成功させ、大学通算盗塁数は現役トップの36。二度のベストナインを獲得し、荒木(郁)は順風満帆な野球道を歩んできた。進路をプロ一本に絞っていた彼にとって、今季はスカウトへ最後のアピールチャンスだった。

突然襲った不調

 しかし今季序盤、結果を出そうという焦燥感から打撃不振に陥る。打率は対早稲田1回戦までで2割2分2厘と低迷。出塁数が減り、盗塁もできず自慢の足を生かせない。翌日には今まで当然だったスタメンを外れてしまう。もっとプロへアピールするはずだった。「指名されないのでは」。不安は募る一方だった。

取り戻した熱さ

 そんな中、スタメンを外れたことで、荒木(郁)は自分を見つめ直す。「もっと熱くなってやろう」。対早稲田2回戦以降の彼の姿は見違えるようだった。前半戦では見られなかったヘッドスライディングをするなど熱い闘志を全面に押し出したプレーが目立つ。その姿勢が結果にもつながり安打を量産。リーグ最終戦となる対立教3回戦では3安打5打点を挙げ、プロへ猛アピールしラストシーズンを終えた。

 そして運命のドラフト当日。待ち望んだプロからの声が、5巡目についに掛かった。「見えないところで練習している」(小林(要)政経3)という4年間の努力が実を結んだ瞬間だった。「早く大観衆の中でプレーしたい」(荒木・郁)。その足で甲子園を沸かせる日が待ち遠しい。