東京に集結! アイスホッケーの新たな可能性/GOAT Challenge Cup

アイスホッケー 2023.07.04

 夢の対決が実現した。〝史上最高〟の試合を目指して開催されたGOAT Challenge Cup。海外で活躍を見せる日本人選手と、日本の大学で活躍を見せる選手たちによる史上初の試合が幕を開けた。誰一人予想のできない試合となったが、海外オールスターが主導権を握る展開に。大学生オールスターも粘り強いプレーを見せ、最後まで白熱した試合となった。また試合だけでなく、演出やイベントなど観客を楽しませる工夫が施され、これまでにない盛り上がりを見せた。

 

 これまでにない熱い試合となった。開場前から長蛇の列ができ、1000人を超える観客で会場が埋め尽くされた今大会。普段は見ることのできない海外の日本人選手はもちろん、1カ月前は敵チームとして関東大学選手権を戦った、日本の大学生オールスターにも期待が寄せられた。「これまで体験したことがないような演出で、入場する時が一番緊張した」(GK中村柊志綺・政経4=北海道清水)。試合前には会場が暗転し、GOAT Challenge Cupのために作成されたプロモーションビデオに合わせて選手が入場。さらにはライトアップやスモークなど、大学生の試合では見ないような演出で会場を盛り上げた。

(写真:入場で観客に応えるDF福田琉太(営2=白樺学園))

 

 「試合を通して海外でやっている意地や、意識の違いを見せていこうと話していた」(平野裕志朗監督・Abbotsford Canucks)。その言葉通り、開始直後からフリーのパックへの寄せの速さや、フィジカルの強さで海外オールスターが主導権を握る。FW芹野泰良(South Shore Kings)がゴール付近にこぼれたパックに素早い反応を見せると、クイックシュートで先制ゴール。しかし、日本の大学オールスターもすぐに反撃に転じる。起点となったのは両チームから注目を集める井口藍仁(商2=埼玉栄)。パックを持つと、リンクを横断するロングパスを逆サイドを走るFW角丸陸斗(中大)へ。相手DFとの1対1となったが、横にずれながらゴール上部のわずかな隙間にシュートを決め、同点に追い付いた。その後は反則による数的不利での失点やシュートリバウンドを押し込まれるなど1―3で海外オールスターがリードし、第1Pが終了。


 そして、インターバル中にも観客を惹き付ける企画が実施された。第1P終了と同時に抽選で呼ばれた観客がリンクへ。センターラインからゴールへシュートを打つ『Shoot the Puck!』イベントが始まった。海外オールスターの注目選手であるFW佐藤優(Torpedo Nizhny Novgorod)、FW榛澤力(Sacred Heart University)両選手がリンクに残り、手本や写真撮影などに協力。運営と観客だけでなく、選手まで一体となる貴重な時間となった。

(写真:選手・運営・観客が一体となってイベントを盛り上げた)


 第2Pには今回の企画ならではのゴールが見られた。海外オールスターにDFとして出場した朝比奈大心(営1=埼玉栄)。「受け身にならずに積極的にプレーしていこうと考えていた」と古川逸暉(Collingwood Blues)のドライブに反応し、フリーのスペースに走り込んでパスを要求。普段は朝比奈の後ろを守るGK中村から大学初ゴールを決めた。その後も海外オールスターがさらに1点を追加し、1―5と点差を広げた。

 

 「自分はガチでやりたいし、そうしないとせっかく来てもらうお客さんが楽しめないと思う」。試合前の取材で今大会への強い気持ちを口にした佐藤。その思いがチームにも広まり、点差が付いた第3Pになっても海外オールスターが主導権を握り続けた。さらに第3P中盤には、膝を付いた選手へのハードチェックが火種となり乱闘が発生。エキシビションマッチでも一切手を抜かない姿勢が最後まで試合を引き締めた。

(写真:試合後には乱闘した選手同士、お互いを称え合った)


 最終スコアは1対5で海外オールスターがリードしたまま試合終了。点差は付いたものの、観客からは大きな拍手が送られた。「トップ選手が集まって試合をする機会なんてないので、来年はもっといい大会にできるように盛り上げていきたい」(佐藤)。普段は見ることのできないレベルの高いプレーや演出。さらには観客も巻き込んだイベントなど、今後のアイスホッケーへの可能性を示した今大会。来年度もこのような試合がより多く開催されるよう、アイスホッケーの普及が進むことを願うばかりだ。

 

[倉田泰]

 

試合後のコメントはこちらから。



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