最後は蓑尾が決めた! 6季ぶり41度目のリーグ戦優勝を果たす/東京六大学春季リーグ

硬式野球 2022.05.25

 勝利の女神は明大にほほ笑んだ。勝てば明大の優勝が決まる〝紫合戦〟。中1日で蒔田稔投手(商3=九州学院)が先発のマウンドを託される。相手先発・荘司(立大)との息も詰まるような投手戦で10回無失点と堂々たる投球を披露した。互いに点が入らない中、11回裏に蓑尾海斗捕手(文4=日南学園)が犠飛を放ち、サヨナラ勝利。明大が5大学全てから勝ち点を奪う完全優勝で6季ぶり41度目の〝頂〟に君臨した。

 


(明)蒔田、○千葉蓑尾

荘司、●沖黒岩

【安】(明)7(立)5

【二】(明)蓑尾(回)◇犠打3 蒔田(6回)、西山(8回)、蓑尾(11回) ◇併殺0 ◇残塁4 ◇盗塁1 直井(10回) ◇失策1


 11回裏。曇りがかった空に白球が高く舞い上がった。三塁走者・堀内祐我内野手(文3=愛工大名電)がヘッドスライディングでホームインするのを確認すると、神宮球場から大歓声が沸き起こる。一塁ベース付近ではサヨナラ犠飛を放った蓑尾を中心に選手たちが駆け寄り、歓喜の輪が広がっていった。6季ぶり41度目のリーグ優勝。〝頂戦〟を掲げた明大ナインの悲願が一つ達成された。

 

 蒔田と荘司の投げ合いはお互いに一歩も譲らない投手戦になった。荘司が5回裏、初めてのピンチを153キロの直球で見逃し三振に抑えると、紫紺の背番号17もそれに呼応。持ち味の尻上がりで、調子をどんどんと上げていく。6回以降に許した安打はわずかに1本のみ。9回表も2死から4番の山田(立大)を中飛で打ち取ると力強いガッツポーズを見せた。ここまでスコアボードに0を並べ、実質完封。しかし、無尽蔵のスタミナを誇る右腕の勢いは止まらない。そのまま10回もマウンドに上がると、三者凡退に抑え、チームに流れを呼び込む。「エースがいない」。前評判ではそのように言われていた明大。だが、今試合の蒔田はまさに〝エース〟そのものだ。今春幾度となくチームを救った大黒柱が最後の正念場を笑顔で乗り越えた。

 

 試合を決めたのは4年生の意地だ。荘司に対し、8回でわずかに2安打となかなか好機を作ることができない打撃陣。しかし簡単にアウトにならない粘りの野球は8回で113球を投げさせた。投手が変わり9、10回は打線がつながり始め、走者を二塁まで進めるもののあと1本が出ない。しかし11回裏、ついにその時はやってくる。先頭の堀内が中前安打で出塁すると、クリーンアップで好機を拡大。1死満塁で副将・蓑尾が打席へ。「スタンドの選手の思いに答えないといけない」。初球を果敢に振りにいった。打ち上がった打球は右翼手のグラブに入る。三塁走者・堀内が懸命に走り、サヨナラ犠飛に。3年ぶりのVが確定し、神宮球場は歓喜の渦に包まれた。選手たちの目に広がったのは優勝した者にしか見ることのできない最高の景色だ。

 

 蒔田、村田賢一投手(商3=春日部共栄)の両エースに加え、宗山塁内野手(商2=広陵)、上田希由翔内野手(国際3=愛産大三河)が2人で28打点と下級生がリーグ制覇の原動力になったことは間違いない。だが「4年生と優勝したい」(宗山)。「4年生が好きなので一緒に優勝したい」(上田)。村松開人主将(情コミ4=静岡)を中心とした下級生から愛される4年生のチームづくりが根底にはある。最上級生の〝人間力〟が明大を大きく成長させたのだ。東大以外の4大学とは3戦目以上にもつれた今春。苦しみながらも全大学から勝ち点を獲得し、完全優勝を果たした。「目標はまずリーグ優勝。そして、全日本選手権優勝」(村松)。次は日本一の〝頂〟へ。明大野球部の〝頂戦〟はまだ終わらない。


 [中村謙吾]




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