エース・赤尾が早大を完封 勝負は第3戦へ/東京六大学秋季リーグ戦
最初から最後まで“らしさ”が出た『赤尾劇場』となった。試合前半は『粘りの投球』だった。初回は早大の好打者に変化球を狙われ連打を浴び、3回は1死から死球と四球でピンチを招くと、4回は先頭打者にボール先行から甘くなった球を左翼前に運ばれた。5回にも1死から死球を与え球数は80球を越えた。「ストレートが良かった分、上半身だけで力が入ってしまった」と赤尾。それでも信条とする粘りの投球で要所を締め、最後まで本塁を踏ませなかった。
後半は真骨頂の『打たせて取る投球』を見せた。グラウンド整備を挟んだ6回に「下半身を使って、気持ち良く投げよう」と序盤の課題を改善。相手中軸を三者凡退に取ると、終盤3回は九つのアウトのうち八つを内野ゴロで仕留めた。「低めに、というのが意識してできた」とローボールを振らせ、整備後はテンポ良く43球で投げ抜いた。
赤尾の完封の陰に酒井翔弥外野手(法2=東北)の好守があった。初回、赤尾は2死から連打を浴び一、三塁のピンチを招く。迎える打者は六大学屈指の好打者・児玉(早大)。ワンストライクとして2球目を痛烈に右翼にはじき返された。右翼手・酒井は猛ダッシュで前進すると、捕球し直ちに一塁へ送球。持ち前の強肩でボールは児玉よりも先に一塁手のミットに収まった。前日打撃不振からスタメン落ちした男が、復帰早々に大仕事を果たした。「流れに乗せてくれた大きいプレーになった」と赤尾が言えば、加藤直紀主将(商4=明大中野八王子)も「あのプレーが一番大きかった」と絶賛。バックの手助けが好投を後押しした。

2回に適時打を放った赤尾
数少ない好機を確実に生かした。2回、先頭の4番・加藤が四球を選ぶと、ベンチがすかさず動く。盗塁と送りバントで1死三塁まで進め、さらに6番・酒井も四球を選び一、三塁。7番・多々野将太内野手(農1=花巻東)の打席の初球、酒井がスタートを切ると相手捕手の二塁への送球は大きく外れ、三塁走者・加藤が生還し先制した。
エースはバットでも集大成を見せた。2死一、三塁となって打席に立ったのは赤尾。初球の高めに外れたスライダーを見て、次はストライクゾーンに真っすぐが来るだろうと予想した。「じゃなかったら空振りしてもいい」とフルスイングした当たりは、強烈なライナーとなって三遊間を抜けていった。今までバッティングでは結果を残せておらず、打順が回ってくるたびにセーフティーバントを狙ってみたり、バスターで打ってみたり。「自分が打線の切れ目になってはいけない」と試行錯誤し、常に考えながら打席に立っていた。相手投手の配球を読み切っての当たりに「タイムリーになって良かった」と結果につながったことを喜んだ。完封に花を添える今季初打点となった。
悲願の優勝へ、勝負の第3戦を明日に控える。早大には2010年春季以来勝ち点を取れていない。「4年間一度も早稲田から勝ち点を取れずに終わりたくはない」(加藤)と特別な意識を持つ。また、主力のほとんどは昨年秋季優勝を経験しているだけに、優勝への思い入れは強い。「自分たちのためだけじゃなく、後輩たちに経験させてあげるためにも、応援や支援をして下さるOB方のためにも」(風岡厚志・理工4=川和)多くの思いを背負って、最終決戦に挑む。
[毛利允信]
試合後のコメント
加藤
「勝つことが全て。ヒットは3本だけだったが勝たなければ次はなかったので勝つことができて良かった。初回の酒井のビックプレーがこの試合を決めた。最終的にはあのプレーが一番大きかった。初回赤尾がバタバタしていたところを酒井が救って赤尾自身が勢いに乗っていけたと思う。赤尾は決して良くなかった。だけど4年生の意地やリーグ戦最後の先発ということもあり4年間やってきたものを出してくれてその結果が完封につながったと思う。2回のワンチャンスで2点取れたということが大きかった。あそこが1点で終わっていたら分からなかったので最低限の2点を取ることが大きかったと思う。だけど3回以降はいいようにやられてしまった。やっぱり低めのコントロールがいいのでそこをうまくはじき返さないと明日の勝ちはないと思う。向江(早大)はフォークと外の制球力が良いのでそこを各打者でどうするのか、外の真っすぐを狙うのか。落ちる球の見極めをしっかりすることをチームに徹底した。前から言っているが早稲田から勝ち点は取りたい。結果優勝をすれば早稲田から勝ち点を取ることになるので優勝が全て。2位もビリも同じようなものなので優勝しなければ意味がないしそのチャンスが手の届く位置にあるのでチーム全員で必死にやって優勝をつかみにいきたい」
赤尾
「素直に自分自身としてもうれしかったし、チームとしても優勝へ首の皮一枚つながったので、二重の喜びがあった。先制点を与えないことと、無駄なフォアボールを与えないこと、長打を打たれない、というのが自分の中で課題にしていた三つ。フォアボールとかデッドボールを出してしまったが、他の二つがしっかりできたので、最少失点につながったと思う。先発は今日勝っても負けても最後になると思ったので、そういう気持ちでは臨んだし、それを良い方向に捉えて、最後だからやってやろうという気持ちに変えられたと思う。先発の最後で、リーグ戦の最後で完封で締められたのは本当にうれしいし、集大成としてはいい形になったと思う。変化球を拾われることが多かったが、なるべく長打にしないように低めにコントロールした。打たれたのは相手がうまかったからなので気にしていない。前半はストレートが良かったが、ストレートが良かった分上半身だけで力で投げようとしてしまった。6回は整備後で流れが変わるので、しっかり下半身を使って気持ち良く投げようとして、それが実践できて、そこからは無駄の四死球なくしけたので良かった。5回まであまり内容が良くなかったので、6回はいろいろ工夫して入った。(打撃)1点先制はしたが、自分としてはもう1点返したいという思いがあって、真っすぐに絞って打った。タイムリーになって良かった。(次戦への意気込み)総力戦になると思うが、悔いが残らないように。采配的にも、気持ち的にも。全力で戦って勝ち負けが付くように。その中で勝てるようにやっていきたい」
風岡
「点取った回の攻撃は、ヒットは赤尾だけでしたけど、その前にフォアボールだったり盗塁だったりバントだったりが見事にはまった。うちは1番から7番まで足を絡められる攻撃ができるので、加藤が出てくれたからですけど、今までのどんな攻撃よりも内容が濃い攻撃だった。守備に関しては、3連打は無いだろうと見ていたら3連打された。でもライトが酒井だったから安心して見られた。ヒットはどんだけ打たれても、点を取られなければいいよとは言っていた。その回はフォアボールとかで出したランナーではなかった分良かったが、中盤は5回までフォアボールとか、スリーボールとかが多かったので、結果(失点)0点ですけど内容が良くなかった。(早大捕手は)昨日デッドボールを受けていて、ちょっとスローイングも怪しくて、肩がいいことは知っていたが駄目元で走らせた。あの回の3人は走ってほしい場面で初球からしっかり走ってくれて良かった。(明日のポイント)今日も3安打で2点取っているので、ああいう攻撃がするかしないか。向江より河合の方がいいピッチャーだし、ヒットは今日と同じぐらいか、はまればもっと打てるかもしれないが、はまる確率も低い。守備ではとりあえず先頭バッター。ミス無く四死球0、エラー0であれば大量失点そうそうないので、余計な点だけ与えなくて、うちが走塁とかバントがしっかりできれば勝てると思う」
多々野
「個人的にはチームに貢献できたと思う。でかいのはなかったがセーフティーバントが結構効いたと思う。セーフティーバントは狙っていた。盗塁はタイミングを見てここだと決めつけて走っている。個人的な内容よりも後ろの打者にいかにいい形でつなげるかが大事だと思うので後ろにつなぐバッティングを心掛けて明日以降もやっていきたい。サードでスタメンはものすごく緊張した。練習でもサードをやっていなくて久々だったが与えられたポジションで今後もやっていきたい。明日はチーム一丸になって1勝に向かっていければ勝てると思うのでそこの気持ちを切らさずに明日以降も頑張っていきたい」
関連記事
RELATED ENTRIES