(27)神宮大会前インタビュー 上原健太、坂本誠志郎

2013.11.12
 飛躍のシーズンだった。山崎福也投手(政経3=日大三)、関谷亮太投手(政経4=日大三)の2本柱を支える3番手としてリーグ最多の11試合に登板した上原健太投手(商2=広陵)。防御率0.88、39奪三振と好成績を残し、優勝に大きく貢献した。登板機会に恵まれなかった昨季の悔しさをバネに見事な成長ぶりを見せた。神宮大会でも活躍が期待される上原に今季を振り返ってもらい、日本一への意気込みも語ってもらった。

<絶対的な柱になりたい>

――今季を振り返ってみていかがですか
上原:
自分が思った以上に調子が良かったので試合を重ねていくごとに自信がついたシーズンでした。何よりも安定した投球で、チームに貢献できたことが大きかったです。開幕前は試合で使ってもらえるかも分からない状況で不安でしたが、投げてみたら意外と良くて次の試合では更に良くなっていきました。

――投球ではどんなことを意識しましたか
上原:
「点が入らなければいい」ということを一番に考えて、後は無駄なフォアボールを出さないことやリズムを崩さないことを意識して投げました。いい結果は残せましたが、細かいところでまだ自分に足りないものがあると思います。立大戦で相手の流れを止められなかったことや大事な場面で得点圏にランナーを置いてしまって点を取られたことが反省点です。そういう場面でもっと抑えられるようになりたいと特に思いました。

――一番自信に繋がった試合はいつですか
上原:
慶応戦です。2回戦で先発した後からかなり自信がついて、法政相手でも大丈夫という気持ちにはなっていました。法大戦でもいろいろ考えずに坂本(誠志郎捕手・文2=履正社)が呼んでいる場所に投げることと、あまり焦らないで投げることを考えていたらいい結果につながったかな、と思います。

――2本柱の存在は大きいですか
上原:
昨季は自分の調子が不安定だったんですけど、関谷さんも山崎さんもすごく調子が良くて、なかなか自分に回ってこなくて、ひたすら投げたいなとずっと思っていました。あの時の2人の印象がすごく大きくて、チームにとっても絶対的な柱だったのでこういう存在になりたい、と思って見ていました。今季は2人の調子があまり上がらなかったので、その代わりにはなれたかな、と思います。

――2本柱を形成していた関谷投手は今季で引退
上原:
関谷さんが抜けてしまうことで、投手陣にとっては大事な戦力が抜けることになるのでその穴を埋めるだけの結果をこれから残していきたいです。春の2人みたいに他の人から見て絶対的な存在の中に入っていきたいなと思います。

<日本一で4年生を送りたい>

――三振を量産しましたが
上原:
結果的に三振だったと気付くことが多かったです。終盤戦になってくると2ストライクまで追い込めばと三振は取れる、という意識があったので場面によっては三振を取りにいったり、打たせようと思ったりして自分のなかでうまくコントロールできたと思います。フォーク、スクリュー、スライダーの3つで三振は取りにいっていました。最後の方は低めにさえいけばもう大丈夫、といった感じでした。握りも変えていないです。自分では分からないんですけど、受けているキャッチャーだったり対戦しているバッターから聞くと、コントロールが安定してきているから見極めができないと言われました。

――空き週は何に重点を置きましたか
上原:
空き週は結構追い込んで、これだけやってきたという気持ち的に余裕を持って試合に臨むことを意識していました。大体一日20~25本の50mダッシュを4日続けていたので、4日で90本くらい走りました。普段はしないです。いったん体を追いこんで動ける体を作るようにしました。

――キャンプでのケガの影響は
上原:
左足を捻挫して全然練習に参加できなくて調子も上がらず、不安が残るままリーグ戦は迎えました。なので、まさかここまで抑えられるとは思っていなかったです。ケアはできるだけトレーナーの力を借りたり、自分のできることなど何でもいいから続けて取り組み、日常生活の過ごし方なども考えて変えました。起きる時間を早くして体操前にお風呂に入ってすっきりした状態で一日を始めるということをやりました。

――課題とされていたメンタル面では
上原:
リーグ戦が始まる直前まで気持ち的にも技術的にもいい感じではありませんでした。そのままリーグ戦入ってしまいました。それでも試合を重ねるごとにだんだん良くなっていきました。メンタル面も試合を重ねるごとに安定していって、緊張感というのがあまりなくなって楽しんで投げられたというか、固くなることはなかったです。

――理想の投球を教えて下さい
上原:
外野にだけ飛ばされなければいいというのが自分の一番理想とする投球です。三振を取りたいということはなくて、力で押したり時には抜いてみたり、自分のリズムで投げれたらそれが一番の理想かな、と思います。楽天の田中投手は自分が投げたい球を投げているのですごいと思います。見ている側が次はこれだろうと完全に予想する球を投げていて、それで抑えているということにすごく魅力を感じました。

――神宮大会に向けて抱負をお願いします。
上原:
リーグ優勝までしたので、ここまで来たら日本一をとって4年生を送り出したいです。4年生には感謝の気持ちを言葉で言わなくても行動というか、プレーで表せたらいいと思うので神宮大会で結果を出したいです。胴上げ投手になりたいなどはあまりありません。どこで投げていてもやっぱりチームに貢献できれば最後が自分じゃなくても喜びは一緒だと思うので。日本一を実現出来る大きなチャンスだと思うのでこのチャンスを逃さないように全力で頑張っていきたいと思います。

――ありがとうございました。

◆上原健太 うえはらけんた 商2 広陵高出 190㎝・86㎏ 投手 左投左打

試合 勝利 敗戦 打者 投球回 安打 四死球 三振 自責点 防御率
上原 今秋・通算成績
今秋 11 123 30 2/3 22 39 0.88
通算 27 311 75 66 18 72 15 1.80

 責任感の増したシーズンだった。今季も捕手として全試合にスタメン出場した坂本誠志郎捕手(文2=履正社)。投手の良さを引き出すリードは健在だった。また打撃面でも勝負強さを発揮。2季連続ベストナインに選出され、六大学を代表する捕手になった坂本に今季を振り返ってもらった。

<捕手としての責任>

――優勝して今のお気持ちはどうですか
坂本:
うれしいですけど、やっと終わったなという気持ちが強いです。自分が試合に出るようになってから毎シーズン試合数が多く、今シーズンは特にきつくてすごい神経を使った気がします。それで結果が出ないのはもっとつらかったですが、優勝できて安心している感じが強いですね。

――前半戦は投手陣が不調でしたがどう抑えようとしましたか
坂本:
野手が捕球する機会を増やすことを心がけていました。いい時は自分が何もしなくても抑えるんですけど、悪い時にいかに点数を与えないかが自分の仕事だと思うので、悪いなりにがんばった部分のほうが強いです。

――不調の原因は何だと感じましたか
坂本:
春はキャンプで投げ込んだりする機会が多くて準備期間がありました。秋は夏に日米があったりして準備期間が短く、投げ込むことが少なかったです。ピッチャー自身も手応えがなかったんじゃないかなと思います。

――そんな中、上原投手は好調でしたが
坂本:
150㎞近い真っすぐと縦の変化、緩い球で前後に緩急をつけれるようになりました。上下やコースで勝負していたのが前後の感覚で攻めることができたので、バッターからすると変化球に泳いだり、真っすぐに詰まったりという感じだったはずです。前後の勝負ができるのがピッチャーにとっては強いと思います。その勝負の仕方が安定して、そのボールに上原も自分も自信を持っていたのが一番好調につながった部分だと思います。

――敗戦時には「自分のせい」とおっしゃることが多かったですが
坂本:
特に立教戦はひどかったと思います。あの日だけゲームの中で頭が回ってなかったです。キャッチャーをやっていてああいう状態になったのが珍しいというか、そう感じたことがなかったです。あの日だけはちょっとおかしいなというのがあって、負ける時はあんな感じで負けます。あの日(立大3回戦)は簡単に崩れちゃったなと。自分も流れを止めようと思っても止められなかったです。そういう意味では、立教3戦目は一番印象に残っています。

――頭が回らないとはどういう状況でしたか
坂本:
ピッチャーが甘くなって打たれたなら、修正したり自分のジェスチャーで変えられると思います。ただあの日に関してはピッチャーの調子は悪くなかったですし、自分の配球もそんなに悪かったわけじゃない中で打たれました。今までは打たれてもピッチャーが負けた中に自分の責任もあると思っていました。あの試合に関しては自分が負けた気がして、すごく悔しいというか申し訳ないという感じがしました。

――立大3回戦後は敗戦を「自分の責任」とおっしゃいましたが
坂本:
自分に求められているのはそこだと思います。自分がそこを失うと明治でキャッチャーしている意味がなくなると思います。そこは失いたくないですし失ってはいけません。そこを取り返すのがその後の課題でした。慶應戦や法政戦は今までやってきた、だめでも途中で切ることができたので、シーズン中で改善できるようになったのも一つの収穫です。

<つかんだ手応え>

――打撃面では開幕前に「印象的な活躍」を目標にしていましたが
坂本:
自分が打って勝ったのが初めてだったので、慶應戦はすごくうれしかったです。始めのころはもっと打てる気がして、オープン戦もいい調子で入ったのですが、リーグ戦が始まって調子が上がらなくて。いつもそんな感じなので周りからは気にしなくていいとは言われていましたけれど、内心どこかで悔しい気はしていましたし、何とかしたいと思っていました。スクイズやバント、フォアボールを選んだりと打てずにできることは必ずこなそうと思って、そういうことができたことに関してはよかったと思います。

――勝負どころでの活躍が目立ちましたが
坂本:
場面場面で相手がこう投げたいだろうなと分かった時は結構打っています。逆に言うとその状況をもっとつくったり、そういうところを見ながら打席に入れるともっと打ちやすくなる気がします。今シーズン後半になってやっとできるようになったので、これは来シーズン以降につながります。

――チームとして連覇への意識はどうでしたか
坂本:
ひとつひとつ勝っていったら他大学も強いですけど連覇できると思っていましたし、普通にやったらできると思っていたのでそうやれないことが一番怖かったです。いかに普通にやるかを考えていたのが大きかったです。

――マークや研究された時はどう乗り越えましたか
坂本:
相手もいろいろ考えていたと思いますが、それを利用してこっちも攻めたり、その雰囲気を感じて攻め方を変えたりということは常にしているつもりです。いかに相手がやろうとしていることに早く気づけるかが勝負になってくると思います。春は1戦目を落として気づくことがあったりしましたが、今シーズンは1戦目のうちに気づけてだんだん崩せたり、打たせなかったりということもできるようになりました。

――終盤の逆転が多かったですが
坂本:
スロースターターなチームなので、なんとかバッテリーで粘っていけば後半チャンスはあると思っていました。チャンスのときの全体の集中力を大事にできていました。

――今季チームのカギとなった試合はどこだと思いますか
坂本:
立教3回戦は大きかったです。このチームで勝ち点を落とすことがなかったので、勝ち点を落としてもっとずるずるいくかと思ったのですが、いい意味でみんなあっさりしていました。シーズン終盤明治にいい流れになっていたので、その時に優勝するのかなという気はしました。

――神宮大会がありますが短期決戦の戦い方をどう考えていますか
坂本:
リーグ戦は同じ相手と2、3試合したりずっとやっていますが、神宮大会は一発勝負なので裏をかいたりというよりも、相手バッターの合ってない球を使うべきです。その時その時の直感よりもその選手の能力との勝負になるので、いい部分をいかに出すかが勝負になります。それが出せる環境をつくることが大事だと思います。

――神宮大会の個人の目標を教えてください
坂本:
明治のピッチャーが簡単に打たれるとは思っていません。打たれたら全部自分に返ってくると思うので、自分が責任を取ることがないようにピッチャーをリードしていきたいです。

――ありがとうございました。

◆坂本誠志郎 さかもとせいしろう 文2 履正社高出 175cm・77kg  捕手 右投右打

試合 打数 安打 二塁打 三塁打 本塁打 打点 盗塁 犠打 四死球 打率
坂本 今秋・通算成績
今秋 12 34 .206
通算 44 127 27 17 15 21 .213

[西谷侑紀・森光史]