逆王手跳ね返し8季ぶりV達成!/東京六大学秋季リーグ戦

2013.10.23
逆王手跳ね返し8季ぶりV達成!/東京六大学秋季リーグ戦
 優勝決定の瞬間に歓喜の輪ができた。両校共に勝てば優勝が決まる大一番。5回に寶田慎太郎(営2=東北)の打席で、相手の失策から待望の先取点を挙げると、続く酒井翔也(営1=東北)の犠飛で2点目を追加する。投げては、先発の赤尾裕希(文3=錦城)が7回を1失点にまとめ上げると、代わった小田敏大(営1=明大中野八王子)がラストまで1点のリードを死守。前日の敗戦で早大に逆王手を掛けられ「流れは最悪だった」(船木翼主将・農4=広陵)。その逆境を精神力で跳ね返した明大が、8季ぶり優勝の栄冠を手にした。

 今季の明大の強さを象徴する展開だった。「昨年より力は全然劣る。弱いなら弱いなりにできることがある」(船木)と、シーズン当初は決して充実した戦力ではなかった。それでも、これまで幾度となく接戦を制し、それを乗り切る精神力がチームを強くした。この試合も両者譲らず序盤から均衡した展開。4回には、無死から酒井翔の内野安打と盗塁で走者を進めながら、早大先発の河合が無失点に封じられると、対する明大先発の赤尾も1死二塁のピンチを守り抜いた。試合が動いたのは5回、先頭となった三浦周(営4=掛川西)の中前打を皮切りに、1死満塁の好機をつくり出す。打席に入った俊足の寶田が流した当たりが遊撃手の失策を誘い、先制点を奪取。さらに、それに酒井も犠飛で続き2点目を追加した。そして、明大に流れを手繰り寄せたのが、直後の早大の攻撃。2死から一、三塁のピンチを招くと、右翼を抜けるかという当たりを酒井がキャッチ。逆転の危機を好守が救った。粘る赤尾も気迫の投球で、6回に1点を失いながらも主導権は渡さなかった。

 まさに気力の熱投を披露した。2-1と1点リードの8回、無死1塁の場面で赤尾に代わりルーキー小田に全てを託した。犠打で1死を取った後は、連続の四球で1死満塁と最大のピンチを迎える。「緊張してしまった」(小田)と両校の優勝が懸かる異様な雰囲気に飲まれかけた。それでも「ベンチから堂々と行けという声を聞いて、自信を持って投げられるようになった」(小田)背中を押された。そして残りの2死は気迫を込めた投球で、早大打線を打ち取った。そして、運命の最終回も難なく2死を取り、あと一つのアウト。そこから安打で走者を許すも、最後は二塁手橋本健史(商3=明大中野八王子)の好守で優勝をつかみとった。両手を突き上げる小田と捕手の伊藤めがけ、ベンチから選手たちが駆け寄った。「最高の一言に尽きる」(伊藤晋太郎・営4=千葉経大附)と、4年生にとっても初めての経験となる8季ぶりのリーグ戦優勝は格別だった。

 ここ数年早大には苦戦を強いられてきた。優勝は決定したものの、早大との勝ち点争いは次戦に持ち越される。完全優勝でシーズンを終えるため、最後まで戦い抜く覚悟だ。

最後の打者を打ち取りガッツポーズの小田<
最後の打者を打ち取りガッツポーズの小田

[千島良太]

試合後のコメント
船木

「本当にうれしい。やっと早大を倒すことができた。ピッチャーが良く踏ん張ってくれたのと、先制点を取れたことが一番大きかった。1戦目は引き分けで取れず、2戦目には負けたということで流れは最悪だった。守って攻撃につなげるという課題を持ってやっていたが、結局みんなが楽しくやることがうちの野球。リーグ戦優勝というこれまで一度も味わうことができなかったものを味わうことができた。1試合勝つことはできるけれども、2試合勝つことの難しさを改めて知った。(主将としてこれまでやってきて)4年生みんながキャプテンのような感じで引っ張ってくれたのですごく楽だった。後輩たちも言ったことを実行してくれたのでやりやすかった。去年より力は全然劣るが、去年のチームにはなかった思いがあった。弱いなら弱いなりにできることがあるというか。練習量もすごく変えたし、気持ちの面でも鍛えてきた。メンタル的には去年よりも断然上になったと思っている。今年はほとんど接戦で、それを乗り切る精神力が付いたのが勝利の要因。自分たちのやり方を見てくれていれば、来年もここで胴上げできると思うので期待している」

伊藤
「最高の一言に尽きる。あれだけピンチを招いて、赤尾と小田はエースとしての自覚が出てきた。下級生もこんな4年生のために、一緒に野球をしたいという思いもあったようで、一生懸命やってくれてうれしい。2戦目も大差を付けられたが、今日の試合前に船木と最後だから1回から9回までとにかくやり切ろうということを言っていた。それをベンチに入っている人とか関係なくみんながやってくれたことが結果につながった。自分は極力ピッチャーのために何かやってあげたいということを精一杯やってきたつもりで、それが結果として表れたということは本当にやりがいがある。(小田について)あいつが1年生からフル回転で稼動してくれたことは、チームにとって大きくプラスになった。(副将として)正直船木に頼りっぱなしで負担も掛けてしまった部分がある。自分はキャッチャーなのでバッテリーなどに関しては責任持とうと思っていた。打たれたら全部自分の責任でいいとピッチャー陣には全員に伝えていたので、逆に思い切って腕を振って投げてこいと新チーム当初から言っていたが、それ以上の期待に応えてくれた。全国での舞台でもそうだし、今日のような緊迫した試合をやってきたことは本当にいい経験になると思う。それを勝つ自信に変えてほしい。そういうものをもう一度見直してくれえれば、来年またいいチームになると思う」

小田
「(8回途中からの登板は)緊張してしまった。ベンチから堂々といけという声を聞いて、自信を持って投げられるようになった。(今季安定した成績を残してきたが)清瀬杯で投げて、そこで抑えることができた経験が大きい。技術というよりも気持ちの面で自信を持てた。高校までは一発勝負だったので、こういうリーグは大学に入って初めて。調整が難しかったが、先輩に聞くなどして対応してきた。特にケアの部分には気を使った。(赤尾と先発を支えてきたが)赤尾さんが柱だが、2人で引っ張っていくという強い気持ちを持ってやってきた」

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