(11)チャンスは任せろ!壁乗り越えた外野手・川嶋克弥

「自分はチャンスで何かするんです。2死からでも絶対簡単に終わらないんで、むしろ2死で回してほしい」。リーグ開幕前、笑顔でそう話していた。しかし、ただ“持っている”だけではない。それほどの自信の裏には、たゆまぬ努力の跡が色濃く刻まれていた。
戦いは年始からスタートしていた。冬の間、休んだのは正月のみ。走り込みや体力強化中心の自主練で、体をいじめ抜いた。バッティングでは試行錯誤の末、最も力が付くやり方を見つけた。「ノルマを決めるとただこなすだけの練習になっちゃう」。回数は決めず納得がいくまで延々とバットの振り込み。反対に、1回でも思い通りのスイングができた日には、それ以降素振りをすることはなかった。

ヒットを放ち笑顔を見せる川嶋
「どういう形であれ練習をしていないと不安になる」。川嶋克にはここまで打ち込む理由があった。リーグ戦ではほとんど代打での起用。レギュラーを勝ち取ることができず、ベンチから声援を送ることの方がはるかに多かった。「試合に出ることができなくて苦しい思いをしていたので」。試合に出たい一心で、とにかく練習を重ねた。
真の努力家だ。昨秋は、外野手への転向という試練が襲い掛かった。もちろん始めは「抵抗があった」。それでも決して下を向かず、慣れない外野守備を半年で仕上げた。長きにわたる控え選手という立場に、突然のコンバート。壁はいつも川嶋克の前に立ちはだかったが、そのたびに努力を重ね乗り越えてきた。
左翼手としてスタメン出場を果たした東大戦では、適時打2本を含む4安打を放つ活躍。「(試合に)出るだけじゃなくて貢献したい」との願いは、自身の力でかなえてみせた。試合を終えた後の神宮で「(開幕カードで勝ち点を取れて)ほっとしています」と安堵(あんど)した表情を浮かべた川嶋克だったが、最後は真顔でこう口にした。「これからもっと厳しくなるから、この調子でいきます」。次戦へ向け歩き出した背中が、何倍も頼もしく見えた。
◆川嶋克弥 かわしまかつや 商4 日南学園高出 173㎝・74㎏ 外野手 右/左
「自分の出塁率にも注目してください!」との言葉通り、安打でも四死球でも積極的に塁に出ている。また、東大戦で決めた盗塁は2つ。「塁に出たら走っていく」と機動力も魅力の外野手だ。
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