(7)「野村と出会えて幸せだった」広陵高時代の女房役・小林選手インタビュー

・まず初めに、野村さんの第一印象を教えて下さい
――口数が少なくてクール。だけど実は相当負けず嫌いだと思います。見た目からは分かりにくいですが、とても強い気持ちを持っているやつです。心が強いからあれほどの投手になったのだと思います。
・小林選手も最初は投手として広陵高に入学されたのですよね
――そうですね。自分も最初投手でした。でも投手として野村の方が全然上でしたし、(野村に)追いつき追い越せ状態でしたね。捕手転向する前から野村とは仲が良かったので、投手としてのアドバイスも野村からもらっていました。

野村にとっても小林選手の存在は大きい
・実際に捕手転向を告げられた時の気持ちは
――自分はもちろんですが(当時の)チームメイトも本当に驚いていました。捕手はそれまで1回もやったことがなくて。本当にゼロからのスタートでしたが、野村を含めいろいろな人に支えられて乗り越えられました。野村には捕手としてどうあるべきか何回も相談しました。バッテリーを組むようになってから、さらにコミュニケーションを取るようにして野村がくれるアドバイスにどうしたら近づけるか毎日考えていましたね。
・初めて野村さんをリードした時の感想は
――日ごろから(野村と)よく話していたので、リードしやすかったです。球威やコントロールの良さには本当にすごいと思いました。でも、それよりもボールに「絶対に打たせないぞ」という強い気持ちが乗っていてそれに圧倒されましたね。練習の時から本気でボールを投げてくるので、こっちも全力で受け止める練習をしましたよ。野村は技術やスピードで買われる投手だと思いますが、そういう球が投げられるのも「負けたくない」って気持ちが強いから。常に自分を見つめてどうしたら勝てるかずっと考えていますよ、あいつは。
・バッテリーとして一番心に残っている試合は
――やっぱり夏の甲子園決勝ですね。あれは自分の配球ミスで負けたと思うので、本当に悔しかったです。でも、あの試合があったからこそ今があるのだと思いますね。自分を成長させてくれて、これまで以上に頑張る糧をくれた試合でした。野村もそう思っているはずですよ。
・野村さんは小林選手から見てどういう投手でしょうか
――どんなカウントでも、例えばツースリーからでも強気でスライダーを投げたり、攻めたりできる投手ですね。バッターからしたら、嫌な投手だと思います。
・野球を離れるとどうですか
――クールではあるのですけど、面白いやつです。
・東京六大学リーグには野村さんのほかにも上本(商3)さんや土生選手(早稲田)といった元同僚がいます
――六大にいる元広陵のメンバーはすごい気になります。負けたくない、って思いますね。
・大学に入学されてからもプロアマ交流戦や大学日本代表の選考合宿で野村と再会する機会はありましたよね
――はい。「お互い頑張ろう」とか「調子どう?」とかそういう風に声をかけあってモチベーションを上げたり、プロの話をしたり、野村といて幸せな時間を過ごしました。
・野村さんは小林選手のことを「すごく信頼している」と話していました
――自分と野村の信頼関係は強いと思います。自分は「野村は絶対に打たれへん!」って気持ちでリードしていましたし、野村も「誠司が構えたところに投げて誠司のサインを信じていれば大丈夫」って思ってくれていたと思います。
・野村さんから言われた言葉で印象に残っているものはありますか
――「お前に任せているから」っていう言葉が野村から言われたもので印象に残っていますね。自分の慣れない捕手の練習を、野村がきっと誰よりも近くで見ていてくれたからそう言ってくれたのだと思います。うれしかったですし、自分が野村を引っ張っていかなきゃという責任も自覚させてくれた言葉でした。

代表選考合宿で会話をする野村と小林選手(右)
・野村さんは小林選手にとってどういう存在でしょうか
――自分の野球人生を変えた、言葉では言い表せないほど大きな存在です。捕手としてどうあるべきかということも含めて、野村から教わったことは数えきれません。あいつと過ごした広陵での3年間は宝物ですし、一生の財産です。野村あっての今の自分。ここまで自分を成長させてくれましたし、野村と出会えて本当に幸せでした。
・野村さんは卒業後プロの道に進むことが濃厚ですが
――そうですね。野村は絶対プロへ行くと思うので、プロ野球選手になったら野球以外の面でもみんなのかがみになって、誰からも憧れられる選手になってほしいです。自分もいずれはプロに行くことが目標です。一番の夢は野村と同じチームに入団してもう一度バッテリーを組むことですが、その前に野村と同じ舞台に立つことが第一ですね。
・では仮に野村さんと違うチームに入団したとして、野村さんを打つ自信は
――野村を打つ自信ですか?…あります(笑)!
・最後に、野村さんに一言メッセージをお願いします
――また野村の球、受けさせてな!絶対日本一のピッチャーになってや!
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