(7)春の悔しさを一球に込めて 関谷亮太

2011.09.07
(7)春の悔しさを一球に込めて 関谷亮太
 「先発でなくていい。チームに貢献できるピッチングを」――。秋への意気込みの問いに、こう答えた。今春は開幕2戦目で先発のマウンドに上がった関谷(政経2)だが、オープン戦から続いていた好投がうそのように腕が振れなかった。2回に先制点を奪われ、4回で降板。先発の役目を果たせなかった。その後も崩れた調子を取り戻すことができず、予期せぬ不調で春は結果を残せなかった。しかし、この不調と悔しさは自分を見つめ直す機会を与えた。チームのために、自分は何ができるだろうか――。

 リーグ後のオープン戦では先発はほとんどせず、リリーフに回った。新しく与えられた役割で、今までにない感覚を覚えた。「いい場面で、いい緊張感で投げられるのは今後の自分のためになりました」。その中で、直球に確かな手応えを感じた。「短いイニングの分、真っすぐで勝負していける。調子はいい感じです」。その言葉通り、オープン戦では要所で直球勝負。自信をつけたストレートの威力は春とは見違えるほどだ。

 直球だけではない。オープン戦でも変化球のキレは一段と増していた。持ち球のカーブ、スライダー、チェンジアップ、ツーシームを多彩に操り、次々と三振を奪っていく。しかし、秋のリーグでは変化球を巧みに交えて三振を…というピッチングは望んでいないようだ。「リーグが始まると研究されて変化球もすぐに見抜かれてしまうから、ここは真っすぐで勝負していきたいです」と直球へのこだわりを強く見せる。取材に対し「特徴のない投手」と答えた1年前の関谷はどこにもいない。技術的にも精神的にも成長した関谷に、確かな期待が膨らんだ。

 春は期待に応えられなかった。リーグ前のオープン戦では東京ガスを相手に5安打完封勝利。低めに集まる伸びのあるストレートに、一冬超えてキレを増した変化球。制球力も申し分なく、まさに絶好調の状態だった。誰もが関谷の活躍を信じて疑わない、好調のまま迎えた春。開幕2回戦目、先発を任せられた関谷だが、思うように球が走らず4回でマウンドを退く。その後も調子は上がらず一度はベンチを外されてしまった。それでも後半は調子を取り戻し、ストレートは自己最速を更新する148kmをマーク。上昇気流に乗ったものの、前半の不調は大きく影響した。「最初の2回で崩され、修正ができないままリーグを終えてしまいました。神宮慣れしていたつもりだったが、緊張が大きかったと思います」と、メンタル面での弱さも実感した。また新人戦では登板がない中で明治が優勝。「うれしかったが、寂しくもありました」と悔しそうに笑った。

 今季は4年生と過ごす最後のシーズン。不調の時もすかさずアドバイスをくれた先輩投手である野村(商4)を「いい形で次のステージに送り出してあげたいです」という気持ちが大きい。「春は申し訳ない気持ちでいっぱいでした。秋は4年生ラストイヤー。何とか貢献できるピッチングがしたいです」。春の苦い経験が、今の関谷を突き動かしている。

 「自分の与えられた役割をこなしていくだけです」。経験とスキルを積んだ関谷のピッチングに、リーグ優勝の命運を託してみたくなる。

◆関谷亮太 せきやりょうた 政経2 日大三高出 180・82kg 右/右

次回のTOYKOBIG6秋2011は9月8日(木)、阿部(寿・情コミ4)、中村(将・法4)、島内(法4)をアップ予定です。お楽しみに。