「チーム全員で」決めた!慶応を破り3季ぶり32回目の優勝!/東京六大学春季新人戦

1999.01.01
「チーム全員で」決めた!慶応を破り3季ぶり32回目の優勝!/東京六大学春季新人戦
 とうとう迎えた新人戦決勝。対するは奇しくもリーグ戦で優勝をかき消された因縁の相手・慶応だ。「自分たちの力を見せつけてやろう」(宮武・商2)。次こそは絶対に負けられない。互いのプライドと意地がぶつかり合う中、頂上決戦の火ぶたが切って落とされた。
 
 明治の先発は岡(貴・営2)。「しっかり試合を作っていきたい」と、ストレートとスライダーのコンビネーションで、序盤は慶応につけ入るスキをまったく与えなかった。岡(貴)らしく、丁寧な投球がさえわたる。決勝のマウンドを守る彼の姿に「早く点を取って投手を楽にしてあげたい」(宮武)と打撃陣も奮起した。
 試合が動いたのは3回だった。土壇場2死から柏葉(政経2)、原島(農2)の連打で一、三塁とチャンスをつくると、ここで4番・宮武に先制の一打が託される。「何とか自分が先制を決めたかった」(宮武)。絶対に打ってやる。初球からフルスイングしていった。そして、4球目。ライト前へ思いきり引っ張った。これが先制となる右前適時打となり大事な1点目をもぎ取った。「自分が決めることができてよかった」(宮武)。4番としての役目を全うしてみせた。

 だが、1点の援護をもらいながらも4回表、「力みすぎた」と岡(貴)が調子を落としはじめる。序盤安定していたコントロールが悪くなり、制球に苦しんだ。この回だけで3つの四球を与えてしまい、2死満塁と自らピンチを背負ってしまう。ここで8番・松本(慶応)に中前適時打を打たれて1点を返され、1-1と試合は振り出しに。雲行きの怪しい展開となった。

 しかしここでめげないのが若き紫紺軍団だ。取られたら取り返すまで。4回裏の攻撃で、早くも明治は反撃に出る。中原(北・文2)が安打を放ち出塁すると、相手のミスも絡みそのまま二塁へ。続く畑(理工2)、岡(貴)は見逃し三振に倒れるも、萩本(政経2)が四球を選びしっかりと後続へつなげた。2死一、二塁。追い込まれてから再び、明治に好機が訪れた。この場面で打席には野島(商2)。この勝ち越しのチャンスを野島は無駄にしたりはしなかった。ストレートのボール球をライト前へ運ぶとこれが右前適時二塁打に。当たりは決して良いとは言えなかった。それでも「気持ちで」(野島)。追加点が何としてでもほしい。そんな気持ちを自分のバットに全て乗せて、打球を飛ばした。これで走者が2人生還し、勝ち越しに成功。一度は相手に渡しかけた流れを見事に引き戻した。

5回まで慶応打線を2安打に抑えた岡(貴)
5回まで慶応打線を2安打に抑えた岡(貴)

 その後は岡(貴)も本来の投球を見せ、終わってみれば5回2安打1失点という内容。先発投手として、しっかり試合をつくり上げた。岡(貴)のあとマウンドを譲り受けた今岡(文1)、釣井(文2)も再三ピンチを招くものの、要所を締め失点ゼロ。8回途中からは抑えとして岡(大・政経2)が登板した。
 今日も岡(大)の速球がうなった。一球一球投げるたびにスタンドからどよめきが聞こえたほどだった。そして迎えた9回。あと3人で優勝――。もうすぐそこに見えた栄冠を思い描きながら、最終回のマウンドに上がった。
 しかし、慶応がそう簡単に勝たせてくれるはずもなかった。この回の先頭打者・春山(慶応)に中前二塁打を打たれると続く松本は遊ゴロに打ち取るものの、そこから二者連続四球やワイルドピッチで、1死満塁。この日最速152キロを出していながらも、石畑(商2)が構えたところになかなかボールを入れることができなかった。「絶対に優勝しような」。仲間たちと毎日かけあっていたその言葉が、徐々に遠のいていく。一打逆転のピンチ。ここで負けるわけにはいかない。大きく深呼吸をしてから、最後の打者、荒川(慶応)を打席に迎えた。
岡(大)がここで抑えとしての本領を発揮した。投じた3球目、荒川のはじいた打球は野島の前へ。これを野島が的確にさばき6-4-3のダブルプレーを完成させ試合終了。2時間45分に及ぶ激闘を制し、3季ぶり32回目の新人戦優勝を決めた。絶体絶命の危機をしのぎ勝利を手にした岡(大)は両手を挙げて大きくガッツポーズ。激戦を戦い抜いてきたメンバーたちは抱き合って優勝の喜びを爆発させた。人差し指を天に突き指し“ナンバー1”を体現する彼らの姿が、ひと回りもふた回りも大きく見えた。

 「本当に優勝したいという気持ちを最初から最後まで全員が持っていた」(石畑)。新人戦が始まる前からミーティングを重ね、選手一丸となって優勝の2文字を目指し戦ってきた。「全員で勝ち取った優勝だと思う」(宮武)。今年のチームのテーマである“統創心”は、次世代を築いていくであろう彼らにもしっかりと受け継がれていた。
 法政と並ぶ最多の32回目優勝。この勝利が秋に向けて明るい材料になったのはもちろんだが、最後まで諦めず、全員が全力で3試合を戦い抜けたことがいちばんの収穫だろう。素晴らしい試合を見せてくれた若き紫紺の戦士たちに、心から拍手を送りたい。