投手陣踏ん張りきれず……。自力単独優勝消える/東京六大学春季リーグ戦

1999.01.01
投手陣踏ん張りきれず……。自力単独優勝消える/東京六大学春季リーグ戦
 今日で決着をつけるはずだった。
昨日、あと一歩のところで勝利を逃し2-2で引き分け、再試合となった明治。自力優勝のために絶対に負けられない一戦となったが、投打にわたり完全に慶応に力負け。5季ぶり自力単独優勝の夢は叶わなかった。

 なかなかストライクが入らない。立ち上がりの制球難にあえぐエースに、容赦なく慶応が襲いかかった。1番・辰巳(慶応)にいきなり右前安打を打たれるとその次の金田(慶応)が送りバントを成功させ、いきなり1死二塁のピンチを背負う。ここで迎えるは3番・山崎(慶応)。彼を相手に野村(商4)が選んだのはストレートだった。しかし、わずかに高めに浮いたところを逆襲に燃える陸の王者が見逃してくれるはずもなく、山崎に左中間適時二塁打を打たれ、早くも1点を与えてしまう。

 なおも1死二塁。打席に迎えたのは六大学屈指のスラッガー伊藤(慶応)。絶対に打たれるものか――。大きく息を吸い込み、闘志を全面に出し力を込めて投げ込んだ2球目。ここでも野村は直球で勝負した。しかし、野村の思いをすべて乗せたそのボールは伊藤に打ち返される。打球はライト線を突き破り、これが追加点となる適時二塁打に。初回に2点を奪われてしまい、早くも不穏な空気が漂い始めた。試合開始わずか15分足らずの出来事だった。

 続く2回は3人で攻撃を終わらせ、立ち直ったかのように見えた。ところが3回にも悪夢は待っていた。

 調子を取り戻したかのように見えた野村だったが、先頭打者・辰巳に死球を与えてしまうと続く金田にバスターで左前適時二塁打を浴びてしまう。それと同時にスタートを切っていた辰巳が一塁から一気に生還し、3点目。続く山崎のフライを野村、川辺(商4)、竹田主将(文4)がボールを見失ったかまさかのお見合い。これが内野安打となり無死一、三塁とピンチをさらに広げた。ここから、エースの本領を発揮するはずだった。しかし、ここでむなしくも投手交代。初回の立ち上がりの悪さを払しょくできず、3回にも自らのミスから崩れ2失点。普段のクールな表情が一転し、悲痛な面持ちで野村はうなだれた。慶応側スタンドの大歓声を背中に受けながら、マウンドをあとにした。

 後を任されたのは田中(優・政経3)だった。続く伊藤を何とか抑えたい。これ以上の失点は許されない。しかし、その力みが凶と出たかまさかのワイルドピッチ。これで4点目を献上してしまい、さらに突き放されてしまう。そして、2球目。甘く入ったカーブをとらえられ、打球は右方向へぐんぐん伸び右翼手の頭上を越えた。追い打ちをかけるかのような適時三塁打を放たれ、ぼうぜんと立ち尽くした田中(優)。ただ打球の行方を追うことしかできなかった。

 その後もミスが絡んでこの回一挙に6失点。初回に訪れた悪い雰囲気をかき消すことはできなかった。さらに5回にも1点を失い、完膚なきまでに打ちのめされた明治。投手陣が崩壊してしまい、最後まで試合の流れをつかむことができなかった。

 一方、攻撃陣も苦しむ投手陣を援護しきれなかった。最大の好機が訪れたのは2回。竹田主将が右前安打で出塁すると、そのまま川辺の打席で盗塁を決め、チャンスメーク。バントを図った川辺の当たりがフライとなり、それを山崎が落球し無死一、二塁とした。続く阿部(寿・情コミ4)、野村が凡退し2死一、二塁で打席に向かうのは昨週の東大戦でダメ押しとなる適時打を放った野原(理工4)。その野原が上から叩いた当たりは強いゴロとなり、センター前へ抜けた。とにかく1点を返したい。打球が抜けたのを確認すると二塁走者・竹田主将はホームを目指し全力疾走した。相手からの好返球と、竹田主将のホームインはほぼ同時。一瞬のタイミングを争うクロスプレーとなったが判定はアウト。一時は歓喜に溢れたスタンドから、大きなため息が漏れた。
 

クロスプレーでアウトとなりがくぜんとする竹田主将
クロスプレーでアウトとなりがくぜんとする竹田主将

その後もチャンスを幾度か迎えるも、5回と7回に1点ずつ返すのがやっとだった。

 そのまま、7点ビハインドで迎えた最終回。点差はあった。しかし、攻撃のチャンスがある限り、あきらめるのはまだ早い。2死二塁から中村(法4)が連日スタメンを外れた悔しさを吐き出すかのようにバットを振り切ると、これが中前適時打に。死に物狂いで1点をもぎ取った。ここからなんとか打線をつなげたかったが結局その1点だけで、続く中嶋(法2)が三振に倒れゲームセット。6点差をひっくり返すことができず、3-9で敗戦を喫した。

 「ミスが出て自分たちの野球ができなかった」(竹田主将)。これまで堅い守備を敷き守り勝ってきた明治だが、今日の失策数は4。守りからリズムをつくることができなかったのも敗因の一つだろう。これで自力単独優勝の可能性は絶たれてしまったが、いつまでも下を向いてはいられない。「明日勝たないと意味がない。しっかり準備して絶対勝ちます」(竹田主将)。わずかに残った優勝への望みをつなげるため、明日は絶対に負けられない。

[若槻春香]

  

◆明大打撃成績◆
打順 守備 名前
(中)左 田中勇次 .211 一ゴ    三振    死球    中安    三飛
(二) 上本崇司 .152 遊ゴ    死球    一ギ    死球      
   大久保匠 .―                           
   中原大地 .250                         三振
(左) 島内宏明 .520 死球    左安    一ゴ            
   (中) 中村将貴 .214                   四球    中安
(右) 中嶋啓喜 .310 三振    三振    二ゴ    二ゴ    三振
(一)遊 竹田育央 .314    右安 中飛       四球 遊ゴ      
(捕) 川辺健司 .243    三安    三振    三直         
   髙橋隼之介 .000                      三振   
(遊) 阿部寿樹 .167    三振                     
   石畑桂佑 .000       三振                  
   竹内啓人 .200                三振    一ゴ   
(投) 野村祐輔 .235    中直                     
   田中優 .―                           
   関谷亮太 .000          二ゴ               
   森田貴之 .000                中飛         
   上田長嗣 .000                         中直
(三) 小林要介 .138                           
   野原泰平 1.000    中安                     
   川嶋克弥 .400             中安    三振    四球

◆明大投手成績◆
名前
野村祐輔 20/3 2.20
田中優 01/3 27.00
関谷亮太 22/3 1.86
森田貴之 0.00
大久保匠 0.00