(7)頂点の前に立ちはだかる赤き門を破れ!/東大戦展望

1999.01.01
 立教に勝ち点を落としたが早稲田に連勝し勝ち点を1とした明治。この勢いで東大戦でも連勝しより頂点に近づきたいところ。例年であれば東大戦に勝利することはそう難しいことではないだろう。しかし今年の東大は一味違うようだ。

 東大戦でカギとなるのはエース・鈴木(東大)の攻略だ。昨秋、早稲田1回戦で斎藤佑樹選手(現北海道日本ハムファイターズ)に投げ勝つなど彗星(すいせい)のごとく現れた新エース。鈴木は直球こそ最速135kmと速球で押していくタイプではない。しかしスライダーとチェンジアップのコントロールを武器に昨秋は6試合中4試合を3失点とまさに赤門の番人として相手打線を封じ込めた。
 鈴木の特徴はこれだけではない。「(進学してから)本格的な投込みを開始したのは6、7月ごろから」(鈴木)と語るように他大の投手と違い比較的に遅い時期から本格的な練習を行った。それにもかかわらず、昨秋は他大のエースとも遜色(そんしょく)のない活躍を見せたのだ。さらに彼を短期間で飛躍させたのはこの時だけではない。昨秋35回と1/3イニングを投げて四死球が20と四死球数を課題としていた。しかし今季は27イニングを投げて四死球は6。奪三振も昨シーズンは8個だったが今季はすでに13個。これらの数字は鈴木がいかに短期間で成長しているかを物語っている。また「神宮で投げたいから東大に来た」(鈴木)と語るように神宮への強い思いもまた彼を成長させているのかもしれない。
 技術的にも、精神的にも成長し続ける鈴木を攻略するのはたやすいことではない。現在首位打者の島内(法4)、チーム最多打点の阿部(寿・情コミ4)、川辺(商4)といった打者を中心に確実に得点を積み重ねることで鈴木を降板させること。それが流れを手繰り寄せる方法だろう。

 打撃陣も決して侮ってはならない。昨秋チーム打率が.169だったものの冬からはプロ野球で首位打者2回、通算安打2062本の記録を残した谷沢健一氏(現野球解説者)がコーチに就任。逆方向へのバッティングやセンター返しなど基本的なことだけではなく「個人個人に合わせた指導をしてくれる」(御手洗監督)という。その結果「チームはつながりを意識するようになり、攻撃が淡泊にならず粘り強くなった」(岩崎主将)と語るように2月の青学大とのオープン戦では12-3と大勝。さらに今シーズンも現在舘(東大)が.391と好成績を残している。少しでもスキを見せたら東大打線は容赦なく明治の投手陣にも襲いかかるだろう。昨秋、エース・斎藤佑樹選手を打ち崩した試合のように。

 技術面が向上しただけではない。昨秋早稲田から勝ち星を挙げ勝利の味を知った東大。「(昨秋までと)自信が違う。勝ちを知っているからちゃんとやれば勝てると知った」(内海・東大)とチームの雰囲気も最高潮に達しているという。また「野村(商4)にはずっとやられっぱなし。だから斎藤(佑樹)を打ったみたいに野村を打ちたい」(御手洗監督)とこれまでにない闘志も見せている。頂点を目指す明治にとって東大は何としてでも勝利したい相手。しかし今年の赤門を突破するのは例年より困難だ。